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043:分冊百科・ギロチンを作ろう

【コアルーム】


「マスター、ラージャ、代官システムから独立している図書館都市ダンジョンは死刑を他に依存することは出来ないため、今後犯罪者が出たとき、自前で死刑を執行しなければなりません。」

 マリーが言うように、刑罰を外部に外注することは政治的な従属に繋がる。

「このダンジョンの刑罰は、殺人は死刑、傷害は体罰、窃盗は罰金。というのが基本。国事行為が出来ず法を作ることは不可能なので、代替の法制度『もどき』を策定中。死刑はこの地域では斬首(下手人と言う)が基本ですが、首斬りには高い技量が必用であり、騎士団長には手が余る。これが現状。」

「ラージャさん、斬首は難しいのか。」

「上手く斬るには熟練が必要。練習しなければ上手くならないが、練習は罪人が居ないので出来ません。」

「斬首以外の他の方法は?」

「絞首もロープの長さや強度を間違えると、ロープの先で海賊ダンスを踊ることになる。磔と火罪は重罪用で配慮の必要は無いし、この図書館都市ダンジョンでは放火は出来ない、つまり不能犯。」

 別に間違えているのではなく、「絞首刑はそういう残酷な刑罰」と思われ海賊用なだけ。なお、江戸幕府の武士と庶民用の刑罰に絞首は無い。

「この地域では行われていない方法だと、薬物注射は、当然薬物が入手出来ない。」

 雑誌にそんなもの付録しているはずも無い。

「電気椅子、エジソンが言うところの『ウェスティングハウス』は、このダンジョンでは容易だが、これも調整を誤ると多大な苦しみを与える上に黒焦げの死体が残り正視できない。」

「あ~、後始末は大丈夫。以前マリーさんが電気柵で海賊焼き払った時も、ダンジョンの機能で吸収したから。」

「あの~、わたしは合図しただけで、材料召喚したのマスターでスイッチ入れたのミントですが。」

「さらに、電気は住民に馴染みがなさ過ぎて、電気椅子は受け入れられない可能性が高い。」

「照明にも料理にも散々電気を使っているけど、認識は魔法か……。」


「そこで『ギロチン』です。」

「ああ、フランス革命で活躍した。綴りが違う方のマリーの首を落とした。」

「マスター、ローズマリーの語源はラテン語のRosmarinus(海のしずく)で、RoseバラMaryメアリーではありませんし、Marieとも無関係ですよ。それに、いくら名前付き(ネームド)モンスターは復活可能とは言えギロチンなんて痛そうだし嫌です。」

「何も実際にマリーさんの首で試す必要は無いだろう。」

「分冊百科『ゲーテ全集』の付録を集めるとオモチャのギロチンが作れます。それを元に実物大にすれば。」

 とラージャ。

「なんでゲーテでギロチン?」

「マスター、おそらく、ゲーテが子供にギロチンのオモチャを買ってやろうとしたけど、田舎町で売っていなかったので、都会に住む母親に買ってくれるよう手紙を書いた。という話が元でしょう。これ、発行元の新聞社はゲーテの子孫に訴えられますよ。」

 一節にはゲーテの子供は300人以上居るとか。

「同じ新聞社の『フランスの歴史』にもギロチンが付いてきますが、1/12スケールのドールハウス規格で、可動と言っても実際に何かを斬る能力はありません。あくまでも、TGVとかエッフェル塔とかラスコー洞窟壁画とかと並べるとフランス史がよく分かる。というものですから。」

「ギロチンが好きな新聞だな。それこそレジオンドヌール勲章でも貰っていそうだ。」

「マスター、授与数は相当多いので、シュヴァリエ程度なら、そこらの家にも転がっていそうです。」

 戦争の度に大量にばらまかれたので、フランス土産どころか日本でも容易に購入可能だった。もちろん買った物を着用するのはダメ。



【コアルーム】


館長キャプテン殿、これがギロチンです。」

 ミントがテーブルの上のギロチンを示した。

「キュウリが良いそうですが、まだ収穫出来ないので、小松菜で……。」

 ミントが小松菜をセットしてギロチンを作動させると、ザクっという音がして小松菜が切断された。

「包丁の方が早いな。」

「それ以前に、わたし達、修羅ですから別に野菜を食べる必要ないですよね。」

 修羅は料理をせず、住民は殺人事件を起こさないため、おもちゃのギロチンはコアルームの棚に放置されることに。とはいえ、住民が普通の人間である以上、統計的にいずれ出番はあるであろう。

実際、ギロチンは人道的意図で製作された。死刑に熟練を要しないからと使いすぎたら……だが。

(明日は休載です)

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