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274:片道7日

【第三層群・管制室】


側近書記セクレタリー殿、転送陣はエレベーターですが、籠がシャフトを磁気的に昇降することで、巻上機とロープを廃し高速化したものです。要はダンジョンの機能によるリニアモーター式エレベーターです。」

 ミントが再確認する。

「結局、浮いていることが諸悪の根源ですね。地上では、わざわざ浮く必要はありませんから。」

「それもあるが、むしろ空気抵抗の悪影響が大きい。」

「いっそ、転送陣並みの高速。と言う概念を捨てた方が良いですね。飛行機で無い以上、どうしても無理が出ますから。」


「それで、越前屋殿がなぜ知っていたかは謎だが、新幹線。」

「別に機密でも何でも無いですからね。」

「問題は山ほどあるが、1つは前世紀の遺物と言うことだ。もちろん、最新鋭のアメリカ製通勤電車など、図書館どころか博物館にも無いだろうが。」

「引退して不要にならないと再利用しませんからね。」

「モーターなどは電気トラックの物に交換するにしても、車体自体が古い技術なので重い。しかも流体力学が未発達の時代の物なので、電気を喰う上にうるさい。」

「電気トラックの物で動くのです?」

「200kWモーターを1両に4台分積めば大丈夫だった。とはいえ、図書館で入手出来る『新幹線』は昭島と吹田の2両、先頭車だけで中間車は無いという制約がある。もちろん『量産品』なので同型を複数召喚することは可能だが、編成を延ばすことは出来ない。」

「なるほど。」


「一方。電気自動車は航続距離の問題がある。」

「確か普通は200km程度ですね。そして充電に一晩かかる。」

「電気自動車は移動図書館でも公用車でも、昼だけ動いて夜は図書館に置いておくから、充電に1晩かけても問題無いが、こういう用途には向かない。別に積む電池を増やせば良いが、それだと重くなるので炭化水素燃料との競争に勝てない。なお、途中で補充するとなったら、電気だと電気取扱者、炭化水素燃料だと危険物取扱者の資格が必要になって来る。」

「無資格でも、この世界まで埼玉県警は来ないでしょうが、同等の教育は必要になりますね。」

「電池自体は800Vや1,000Vなので、設計上急速充電は可能だ。夜は寝ても、2時間走って1時間充電。というサイクルを1日に3回繰り返せば、2~3日余りで影響圏の端まで着く計算だ。」

「2日なら、歩くよりずっと早いですし、合格ラインとは思います。」

「もっとも、図書館の備品に急速充電装置は無いので、最初は7日かかることになる。」

「仕方ありませんね。」


「さらに自動車の場合、影響圏の端では地形の関係で手動運転が必要になる。人工衛星が無いため、地形の関係などでダンジョン本体が見えない場所では制御不可能だ。」

「沿道の転送陣にアンテナを付けて中継するとかは。」

「可能だとは思うが、アンテナの干渉などが起きうる。」

「さすがに1台ごとに運転手を乗せるのは非現実的ですし、中継アンテナで何とかしましょう。」



 ちなみに「新幹線」がある異世界は、マリー達が良く知っている異世界と異なる歴史を辿っています。


1:満州事変・日中戦争に伴い弾丸列車が計画され、用地買収が進んでいた。

  これに対し、大韓帝国が存続している異世界では、大陸への輸送も少なく、弾丸列車は計画すらされていません。


2:太平洋戦争勃発に伴いアメ車の輸入が途絶し、道路予算も削られたためモータリゼーションが遅れた。

  戦争が無ければアメ車の輸入は続き、1960年代には自動車運搬船が開発され、アメリカからの完成車の輸入が容易になっています。さらに、関東大震災後に国家予算の4年分(50億円)を投じて多数の100m道路を建設したため、自動車の普及も早くなっています。


3:第二次大戦後、優秀な航空技術者が鉄道へ転職した

  そもそも第二次世界大戦が無かったため、軍用機・旅客機とも開発が続きました。


 その後、旅客機の発達、情報化の進行により、「新幹線」が建設された異世界でも廃止された世界もあります。一方、対面需要の激増により通勤電車並の本数が運転されている異世界もあります。

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