解説:人間牧場について
ただの設定解説です。本筋にはあまり関係ありません。
ダンジョンエネルギーの獲得は、本体の高さ、あるいは深さによる自然収入もあるが、基本的には人(人間でも畜生でも修羅でも)を倒すか、その感情をエネルギーとする。このため、ダンジョンは意図的か本能かはともかく、冒険者を呼び込み、彼らに宝物を与えたりモンスターをけしかけたりする。また、たまには冒険者がダンジョン内で死ぬ必要があるが、通常規模のダンジョンなら死者の数は少なくて良いため、ダンジョン自体の危険度は低く抑えつつ影響圏近隣の村に生贄を要求するという方法もある。
知的生命体以外の動植物はダンジョンエネルギーには寄与しない。
人間牧場はダンジョン内に住民を住まわせ、衣食住を提供することでエネルギーを獲得する。「倒す」方は勝手に寿命が尽きるのを待てば良い。善悪に関わらず、いわゆる「偉大な」人物の方が死亡時の獲得エネルギーは多いため、ダンジョンが城塞や寺社として使用され武将や高僧が寿命で亡くなる。という状態が人間牧場にとって都合が良い。
住まわせるのではなく、閉じ込め、拷問して痛めつけても良いが、囚人を長期間良好な状態に保ちつつ感情エネルギーを収集するには、多数の獄吏モンスターが必要であり維持コストが必要となること、モンスター達を管理する名前付きモンスター・名前有り一般モンスターは数が限られるため、難易度は高くなる。このため、監獄を主要なエネルギー源とするダンジョンは珍しい。
閉じ込めないタイプの人間牧場も、統治機構をダンジョン側が用意すると人材が足りなくなる。また、ダンジョンモンスターはエネルギーを消費するだけだが、雇った士卒は、存在し、泣いたり笑ったり食事したりするだけでダンジョンエネルギーを供給するため、住民に大幅に管理を委ねていることが多い。商都梅田では商人達が管理しダンジョン側は場所貸しに徹しており、石の神殿アスカでは神託という形で関与する程度となっている。官位を自称し運営のトップに立つ那須大膳大夫や紫蘇図書頭(マリー)は例外的だが、それでも配下の大多数は俸禄で雇われた住民である。
人間牧場の住民の種類は、この世界は人間が多いため人間主体のことが多いが、家畜の牧場のように特定の種類の畜生のみだったり、那須塩原のようにモンスターも住民も茄子(修羅)のこともある。
しかし、一般にダンジョンは居住には向かない環境という問題がある。また、衣食住の中でも食料は大量に必要となるが、ダンジョンの機能で用意できるのは主系列モンスターや眷属の餌であり、それを転用できるダンジョンであっても普通に食料を生成し供給していては大赤字となる。
このため、人間牧場は必要ダンジョンエネルギーが少ないが人間社会では高価値の産物を輸出し食料を買うか、何らかの方法で低コストに食料を生産する必要がある。
例えば那須塩原には茄子(修羅)が居住するが、修羅用の肥料は入手出来るものの水の調達には苦労している。
図書館都市ダンジョンは元が図書館だけに居住環境としては問題無い。食料生産に関しては、水と電力が潤沢に供給されること、主系列モンスターが修羅であり各種肥料を入手出来ることにより、日光さえあれば比較的低コストでの食料生産が可能となっている。照明は電気式であり植物工場ではコストが割高なため、農地は地上に広がっている。
人間牧場の致命的な欠陥は、主な住民が人間の場合、際限なく住民が増え持続的では無い。という点にある。
人間は修羅・畜生・餓鬼より入手が容易で繁殖力も桁違いに高いため、移民と繁殖により短期間に人口を増やし急速にダンジョンを発展させることができる。
しかし、人間を良好な環境で管理すると際限なく増殖し、たちまちのうちに食料供給が追いつかなくなる。増殖を抑えるために意図的に飢餓や貧困を蔓延させると獲得エネルギーが激減するのみならず一揆のリスクが跳ね上がる。通常、人間牧場は300年以内に崩壊する運命にある。
現在、関八州の人口は500万程度、うち人間は約300万。マルサスによると人口は25年で倍増するため100年後には人間は4,800万となり関八州の人口は5,000万人に達する。実際には人口が過密になるにつれ増加速度は落ちるが、ダンジョンの獲得エネルギーが減少し崩壊の原因となる。
この地方でも、かつて食糧を周辺の耕地や他のダンジョンに依存していた人間牧場があり、300年近くにわたり関八州に強い文化的影響を与えていたが、食糧供給ダンジョンの衰退により100万人にまで殖えた人間を食べさせられなくなり生活水準が低下、獲得エネルギーが減って破綻しダンジョンが崩壊、地表型ダンジョンだったため生き残った住民が溢れ出して近隣に飢餓と疫病をまき散らした事例がある。
図書館都市ダンジョンは影響圏の面積が広大で潜在的な食料生産力も高いだけに、人口爆発で破綻した場合は桁違いの惨事は避けられない。
1:人間牧場成立期
何らかの事情で人間の居住に適したダンジョンが成立。生産力に余裕があり、組織も簡略で税も安いため、急速に人口が増加する。
図書館都市ダンジョンは四公六民と成立期の人間牧場としては公称税率が高いが、実効税率は一般的な人間牧場と大差無い。
2:人間牧場発展期
人口増に伴い文化も発展、ダンジョン側が管理するにせよ住民が管理するにせよ、統治機構も高度化・複雑化する。
一方、管理が行き届かなくなるため、怪しげな新興宗教が発生したり、一部住民が騒乱を起こしたりもする。これらへの対応として官僚機構が肥大化する。
3:人間牧場低迷期
人口増に生産力が追いつかず住民の困窮化が進み、ダンジョンの獲得エネルギーが不足気味となる。
政府は改革を試みるも、この段階では既に手遅れ。
4:人間牧場の崩壊
長くとも300年以内にダンジョン内の社会を維持出来ずダンジョンごと崩壊。地下型ダンジョンの場合は住民を巻き込むこともあるが、地表型の場合は大量の難民を放出し地域に混乱をもたらす。




