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207:土竜攻め(9日目・昼)

【ソンビダンジョン隣・付城】


「これはこれは、図書頭(ずしょのかみ)殿。」

 付城つけじろの北面、城壁と一体化した塔の上で、岸団長の岸播磨介(はりまのすけ)が出迎える。

「状況は……見たら分かります。それにしても首無し亡者がたくさん居ますね。」

「はい、万は越えると思われます。多少は知恵があるようで、挑発してもこちらに来ようとはしません。たまに押し出されて出てきますが。」

「早速ですが、今日中に決着を付けます。」

「ほう。まさかとは思うがダンジョンごと落とし穴に落とす。か。こちらの範囲外だし、穴掘り餓鬼も居ないから、相手ダンジョンの下を直接掘るわけには行かぬが。」


「その、まさか。を考えています。まず、パンジャンドラムが走り回る平坦面の下に、東側の片面のみ土を吸収して深い空洞を作ります。それから、地下に大量の水を流し込んで、相手ダンジョンの下の土を削り取ります。泥水を吸収して水だけを戻すことでダンジョンの下を掘り抜けば、勝手に重さで陥没しますが、西面は土が残っているので、東、つまりこちらの影響圏側に滑り落ちてきます。ダンジョン構造物は影響圏を外れると崩壊しますから、こちらの影響圏の下に入った部分は順次崩壊してゆくはずです。」

「はず?」

「100%ではありません。ですから東面からは全員退避してください。もしかしたら、ダンジョン本体と影響圏の場合、本体である小塚原刑場の方が強く、こちらの西側部分が崩壊する可能性もあります。しかし、西側はかなりの範囲がこちらの影響圏ですから、その場合、さらに深く地面を掘ることで、相手ダンジョン全体を傾け、転倒させ、ゾンビを落としてから処理します。」

「どれぐらいの深さが必要だろうか。」

「相手の厚さは、せいぜい数メ、一丈か二丈と思われますが、幅は30間(60m弱)かそこらありますから、16~17丈(50m)程度も堀れば滑り落ちてくるでしょう。」

図書頭(ずしょのかみ)殿、27間(50m)なんて、とんでもない深さですぞ。普通の井戸がせいぜい20間です。」

「ダンジョンを丸ごと掘り崩そう。というのですから、この程度の労力は必要です。一般的な冒険者を送り込んで攻略する方法では予想される犠牲が大きすぎます。」

「確かに、あれだけの数の首無し亡者が居ては全員無事で、とは行かないだろう。」

「危険を冒す決死隊が必要な場合もありますが、それで犠牲を出すのは図書館都市ダンジョンにふさわしく無いやり方です。」


 マリーは東壁の将兵を退避させ、一部にはラージャ(バジル)の居る戸田(へた)村までの後退と休憩を命じると、ダンジョンの機能でどんどん土砂を取り除き空洞を作ってゆく。ある程度空洞が出来ると、遠くコアから引いてきた水を流し込み、ゾンビダンジョンの地下を掘り抜いてゆく。地下が崩落するとかすかに地面が揺れる。

図書頭(ずしょのかみ)殿、水は引いてくるのか。」

「ダンジョン影響圏の端でも、既にある砂などをダンジョン構造物に転換することは出来ますし、図書館の建物を複製召喚することも出来ますが、水と電力、つまりダンジョンを動かす力はコアからの供給となります。空気中に水分があれば、ヴァサンティ(雨降し龍)に雨を降らせて貰うことも出来ますが。」

「なるほど。好き放題とは行かないものだな。」

「はい。東、左側が少しでも沈んだら知らせてください。そこで一挙に水を増やして崩壊させます。五位鷺、五位蔵人(ごいのくろうど)さんは合図したら航空偵察をお願いします。西側はダンジョン影響圏が狭く、東側はダンジョン同士の衝突で影響圏を外れる危険があるため、北側上空を旋回してください。」

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