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203:国府台にて(5日目)

【総の国・国府台】


「閣下、武蔵(むさし)平塚(ひらつか)が、正体不明の敵により陥落しました。」

「そして、そいつらは、図書館都市ダンジョンと交戦中だな。」

 国主、上総介かずさのすけは冷静に答える。なお、この世界ではふさは政治的には1つの国で上総と下総に別れていない。

「ご存じでしたか。」

「いや、平塚というのは知らなかった。ここ2日程、図書館都市が急成長しているから、大規模な戦があったのは間違い無い。」

「また高くなったのですか。こちらに倒れてきたりはしないでしょうね。」

「それは大丈夫だ。あのダンジョンまで80里、100万尺ある。光は直進せず曲がるため、遠くにある図書館都市は下の方が見えないが、距離が分かっていれば高さを調べるのは容易だ。柱に竹尺(ものさし)を釘付けして、女に遠眼鏡とおめがねで確認させれば分かる。それによると、せいぜい10万尺を越えた程度だ。」

 80里も離れているため、望遠鏡無しではよく見えない。そして、望遠鏡で男は女、女は景色しか見てはならない。というのは常識。なお、塔の下の方が見えないのは、光では無く大地が曲がっているためだが、この地域では世界は須弥山を中心とする平板だと思われている。

「10万尺でも洒落になりません。それで、報告の続きですが、武蔵に向かっていた商人どもが平塚に着いたところ、町は無人で、首無し亡者がうろついていたとのことです。」

「住民のなれの果てだろうな。哀れな事よ。」

「そのため、ふさに引き返そうとしたのですが、途中で首無し亡者の群に襲われたとのことです。慌てて逃げ帰ったのですが、水が尽きたため、途中で脱落した者も多いとのことです。」

「国府台と平塚の間には水が無いからな。過去、井戸が掘れないか試みたことはあったが、水は一滴も出なかったとのことだ。」

「世の中、不公平ですね。図書館都市には巨大な池を作るくらい水があるのに、我が総では飯沼いいぬまは塩水だし平戸川は手懐けられないし。」

「どうせ太日川(国府台前の涸れ川)の向こうは使い物にならない砂漠なんだし、図書頭(ずしょのかみ)殿に引き取って貰った方が良いかもしれぬな。小田の若造は城の目の前まで街道を引いて貰ってずいぶんと恩恵を得ているようではないか。おかげで国府台(こうのだい)から北の結城ゆうきに向かう道は廃道同然だ。」

「閣下、あの砂漠は、元からふさの物ではありません。それに結城への道が廃れたのは、弱体の小田のせいではなく、筑波が破滅して道を放置したのが一番の原因です。」

「あのヒキガエルめ、悉く我が国に祟る。四十九日はとっくに過ぎたから、今頃は畜生道に墜ちて本物のヒキガエルになっているだろうが。それで報告の続きは、商人を追っかけて砂漠から首無し亡者が攻めてきた。だろ。」

「ご明察の通りです。」


「直ちにそいつらを砂漠に叩き落としてやる。ただし、砂漠を越えて入間川(平塚前の涸れ川)まで遠征なんて、あわみたいなバカはしないぞ。平塚の面倒は武蔵が見るべきだ。」

「あるいは、、図書館都市に呑み込まれるか。ですか。」

「いや、それは無い。人が住んでいた町は、よっぽど衰退して滅びかけの村ならともかく、無人化しても何年もダンジョンの影響圏に入ることは無い。平塚はそれなりに栄えた町だった。」

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