196:蹂躙せよ(2日目夕方)
※死体描写注意
【無名橋南岸関所】
マリーは10個の騎士団中9個を動員したが、まず南東方面の5騎士団がラージャを追って到着。
「今から、豊島代官と平塚の住民の撤退を援護します。」
ラージャはそう言うと、騎士団とウサギ達を引き連れ戦場へ向かう。既に代官達は無名橋の南側にある関所近くまで後退しているが、住民には足腰が弱かったり、大荷物を載せた大八車を引いている者もおり、代官達は追ってくるゾンビを斬りつけ、槍で突き、なんとか食い止めている状態。
「豊島代官どの、速やかに関所まで引き揚げます。関所の外は非常に危険になりますから、絶対出たらいけません。」
「援軍かたじけない。」
「荷物は捨ててください。ゾンビに追いつかれます。」
騎士団とウサギ達がゾンビに斬りつける。ゾンビは手足を切られても動きは止めないが、切られた手足はそのまま地面に転がった状態。槍で突いても血は出ないし、物理的に押しとどめることは出来てもゾンビ自体は動きも止めない。しかし、手段は何であれ胴体を切断されると消失する。
「イヤじゃぁ。置いていくくらいなら妖怪に喰われた方がマシじゃぁ。」
「ならそうしてください。という訳にもいきませんね。中間・下男の皆さん、老人や怪我人などを背負って速やかに関所に運んでください。騎士団とウサギは突撃し、一時的にでもゾンビを止めます。」
常識なら、図書館都市ダンジョン影響圏内で人が死ねばダンジョンエネルギーが獲得できるが、この状況、敵の強化に繋がる危険性が高い。
【第三層群・管制室】
「やはり、脊髄がゾンビの本質か。」
「そのようですね。まだ分からないことが多いですが。亡者なら亡者らしく、念仏唱えたらさっさと極楽往生でもしてくれれば良いのですが。」
「我々ではダメだろう。だが、高僧となると、このダンジョンには……。おそらく、この世界にゾンビの親戚縁者も居ない。で、ゾンビに噛まれたらゾンビになるんだったか。」
「ゾンビウイルスなど創作のものですから固有法則以外では再現困難でしょうし、相手ダンジョンの影響圏外なら、その危険性は低いと思われます。ただ、感染しないにせよ、ゾンビだろうと芋虫だろうと噛まれるのは御免被りたいですが。首が無くてまだマシですね。」
「芋虫?」
「芋虫は植物と修羅の区別が付きませんから、エサと間違えて噛みつきます。化学物質で判断していますから。シソ科は比較的害虫は少ないですが、バラ科だと寝ている間に芋虫に噛みつかれてひどいことになったりします。ま、普段イケメン面しているバラ達が顔中芋虫に噛まれるというのも見物でしょうが。」
「ダンジョンの機能によっては見境無く人にも噛みつく芋虫モンスター。なんてものもあり得るのか。」
「丹沢ヒルズには、そういうものも居るとのことです。」
大抵の修羅・人間・畜生にとって悪夢ながら、貴重な木材を産するダンジョン。図書館都市ダンジョンが木材を量産できれば冒険者も行かなくなり、やがてはエネルギーが枯渇し崩壊するだろうが、それは遠い未来だろう。
【無名橋南岸関所】
ラージャが馬上(動物の馬では無く馬脚だが)から薙刀で追いすがるゾンビを斬り捨て、豊島代官達が関所に入る。ラージャとハルナがそれぞれ武器を持って戦った方が強いはず。という問題に触れてはならない。
【第三層群・管制室】
「豊島代官退避確認。」
ミントが報告する。
「ジャガーノート作戦発動。」
関所横に待機していた3台の巨大パンジャンドラムがゆっくりと動き出す。
「動きが遅いな。さすがに大きすぎたか。」
「いえ、ゾンビより速ければ問題ありません。ダンジョン影響圏は関所から3~4km範囲だけで、平塚付近は含まれませんから、影響圏から出ないようにお願いします。」
ゾンビはゆっくりと人が居る方に歩くだけで、無人の整地ローラーに気付く様子も無い。ゾンビは概ね95%程度が首無し。頭のあるゾンビも少数混じっているが、特にこれらが指揮官という様子も無く、目はあるのに見ようともしていない模様。




