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180:温室の正気では無い使い方

【層群外・サンガーデン】


「これが『温室』といって、内部の温度を調整して、この地方では冬に寒すぎて育たない植物を栽培出来る施設です。これと同様な機能を持つ施設を、希望する村に設置します。」

 マリーは初期入植者の岡田太郎左衛門に温室を紹介する。

図書頭(ずしょのかみ)様、夏に育てる作物を冬に育てることも出来ると。」

「もちろん出来ます。」

「逆に、温めずに冷やして、夏が暑すぎる作物を夏に育てることも出来るだろうか。」

「理論上は可能ですが、温室は熱をため込む性質があるので、あまり現実的では無いと思います。」

 石英ガラスは近赤外線は透過するが、中~遠赤外線は通さない。

「……つまり、もっぱら冬には収穫出来ないはずの野菜を冬に育てる。という使い方になるか。」

「異世界でも基本はそういう使い方ですね。ただ、この地域で他にどういう活用方法があるか。は、わたしが考えても、どうしても無意識の自主規制により発想に限界があり、結局机上の空論になってしまい、あまり意味はありませんし、現場にお任せします。」



【北東門外・観音寺】


「と、いうわけだ。図書頭(ずしょのかみ)様は温室の活用方法を求めておられる。夏野菜を冬に育てる。なんて、ありきたりの答えでは図書頭(ずしょのかみ)様も満足なさらない。」

 岡田太郎左衛門は、主だった農民の指導者達を観音堂に集めて酒を飲みながら相談する。ブレインストーミングという単語は当然存在しないが、やっていることは同じようなこと。

「作物って概念を捨てたらどうだ。温めたら鶏が早く育ったりしないか。」

「温めるなら、いっそ、冬に米を植えるというのはどうだろうか。今すぐ籾を播けば春前に、麦の収穫より早く稲刈りが可能だ。」

「え~っと、そういうのを二毛作ではなく……なんだったか。」

「不毛頭!」

「ハゲって言うな。」

「もっと早く収穫出来る方法があるぞ。稲を根元で刈らず高い位置で刈るとひこばえが生える。と聞いたことがある。まだ収穫前の稲を1尺ほどの高い位置で稲刈りを行い、ひこばえを生えさせて育てれば、田植えも省略して真冬に米が収穫出来るはずだ。」

「真冬に新米かよ。それで、温室って今ある田んぼの上に載せられるのか。」

 なお、アオダイショウのヴァサンティはすっかり上機嫌で蛇の正体を現し、酒に首を突っ込んでいる。


「まだ刈っていない稲は、可能なら温室に転用する。無尽蔵に温室とは行かないだろうから、用意出来た温室には田植えをする。その方向で行こう。」

 異世界でも米の温室栽培は品種改良を急ぐ、あるいは正月に新米を食べる、といった特殊な場合にしか使われない。ダンジョンでは燃料代は必要ないが、温室を作ったり暖めるには当然大量にダンジョンエネルギーが必要になる。

「ひとつ、確認しておく。米を年に2回3回と収穫したら、年貢はどうなるんだ。」

「収穫量にかかわらず、年貢は反収1石の定免法じょうめんほうで四公六民だから、二期作でも三期作でも同じで無ければおかしい。それに、元々裏作の麦には年貢はかからないんだし、米が二回目でも麦と同じだ。」

図書頭(ずしょのかみ)様も、やれ飢饉になるだダイコンを食べさせるだと言っているから、二期作の足を引っ張るようなことはなさるまい。」

「なぁに、年貢二回とか言い出したら一揆を起こせば済む。ああ、ヴァサンティどの、もう一杯。それ一揆! 一揆! 一揆!」

 うわばみ等の酒に強い生物以外に一気飲みを勧めるのは、急性アル中の危険があるためダメです。

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