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179:チーク材の温室栽培?

【第三層群屋上展望台】


 世界樹のローズマリーは2m近くにまで成長している。

「成長が早いな。どこまで大きくなるんだろうか。」

「世界樹ですから、何十メートルか、あるいはそれ以上でしょうか。」

「マリーさん、ローズマリーって、そんなに大きくなる植物だったか。」

 普通はマリーの身長(だいたい1.6m)程度にしかならない。

「世界樹は例外ですが、どうやら、このダンジョンの主系列モンスターが紫蘇(修羅)だからか、それ以外のシソ科植物も生長が促進される効果があるようです。」

「主系列モンスターが海賊だったら、海賊が大きくなったり?」

「たぶん、普通はそういうことは無いとは思いますが……ただ、蛇ダンジョンなら大蛇、犬ダンジョンなら巨大狼、みたいなのは有りそうですね。商人の皆さんや冒険者によると丹沢ヒルズには巨大ヒルの『丹沢ヒルズ族』が出るそうです。ヒルは物理的に大きさには制約がありますから、巨大ヒルの存在自体がダンジョンの影響でしょう。」

 ヒルは呼吸器官が無い皮膚呼吸のため、体の大きさに制約がある。

「丹沢ヒルズは材木ダンジョンでは無いのか。」

「主系列モンスターはヤマビルで、木材は副産物のようです。ダンジョン名は『丹沢ヒルズ』ですが、丹沢は異世界の地名、ヒルズは英語っぽく蛭を複数形にした造語でしょう。つまり、丹沢の要素と蛭の要素を持つと思われます。」

「なぜにまた英語……。」

「ダンジョンそのものが根本のところでは英語で動いているのでしょう。このダンジョンも最初はシステムが英語でした。もっとも、このダンジョンは名前が『図書館都市』で、要素は図書館と都市。本来は紫蘇(修羅)の要素は無かったと思われます。」

 最初はダンジョンにもマスターにも名前は無かったはずだが、そのことは忘れ去られている。なお、マスターには今も名前は無い。


「マリーさん、このダンジョンでシソ科植物が大きく育つのなら、その世界樹を挿し木で殖やして、材木を作ることは可能だろうか。」

「さぁ、世界樹本体ではなく『枝』がそこまで生長するかは、何とも言えません。シソ科樹木のチークなら元から高木ですから、成長促進の効果さえあれば木材生産は可能でしょうが、問題もあります。」

「シソ科かどうか怪しい。とか。」

「たしかに前世紀にはクマツヅラ科と思われていましたが、それは分類の基準が遺伝子では無く見た目だった時代の話です。この時、従来のユリ科が『分類のゴミ箱』と判明して解体された。というのは有名ですが。」

「え~と、確かアロエが『真の百合ユリではないとファミリーを追放されたけど……』とか。あったような。」

「アロエは、なかなか所属ファミリーが確定しない例ですが。『どこで区切るか』という人為的なものもありますからね。」

「あと、確かチークは熱帯植物だったか。」

「それもあります。が、ダンジョン構造物で温室を作れば解決は可能でしょう。このダンジョンの需要を満たすほどの木材を生産するとなると、相当な規模になるでしょうが。あるいはダンジョンの機能で冬越しが可能になるかもしれません。」

「となると問題は……。」

「チークは成長は比較的早いのですが、高品質の木材になるには50~100年必要です。これが仮に熱帯早生樹(そうせいじゅ)並の5~10年で済んだとしても、一般に成長の早い樹木は材がスカスカで腐りやすくなりますから、まともに木材として使用可能な品質になるかは分かりません。もし大々的に栽培して数年で腐るような木材だった場合は、全くの無駄になってしまいます。」

「大博打という訳か。でも、中山グランプリのダイコンサクほど分が悪い賭けでもあるまい。」

「マスター、どうせ競馬でしょう。……確かに既に杉の植林を進めていますが、杉は伐採まで最低30年、通常50~60年必要です。チークの促成栽培は博打ですが、賭ける価値はありそうですね。」

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