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178:サトウキビの温室栽培

【層群外・サンガーデン】


 図書館都市ダンジョンには、ダンジョン本体の塔には組み込まれていないが、北海道から召喚された図書館併設の温室というか、温室併設の図書館と言うか、そういう施設が存在する。異世界にある本体は北海道では栽培出来ない植物を栽培しているが、複製召還時に生物は召喚されないため、こちらでは内部は土が剥き出しになっている。

 現在、学習教材などに付属してきた熱帯植物を栽培しているが、バナナやサトウキビなど通常種子で殖やさないもの、あるいは種子が長期間保存できない物は入手出来ていない。要は需要の期待できる熱帯作物は無いということ。

「同志図書頭(ずしょのかみ)様、あわから、確かトウキビ(唐黍)だったか……。」

「越前屋さん、唐黍(トウキビ)玉蜀黍(トウモロコシ)ですが。」

「いえ、左トウキビ……、砂糖黍(サトウキビ)を入手しました。」

 燃料商の越前屋は、指ほどの太さの竹みたいな植物を取り出す。異世界で一般的なサトウキビと種が異なりだいぶ細いが、あわにあるサトウキビはこの竹糖ちくとう

「これを、温室で殖やして砂糖を量産。と行きたいところですが、温室のある図書館などそうそう無いですからね。この世界の材料で作ることもできませんし、砂糖はごく少量を栽培します。」

 この世界にもある暖室(おかむろ)は薄い紙製なので、雨風に弱く風が吹く日は室内に運ぶ必要があり、苗の保護程度にしか使用できない。

「あの、『だんじょん構造物』とやらで作ることは出来ないのですか。」

「ダンジョン構造物は成分と構造が単純な物しか作ることは出来ませんし、大きさにも誤差が出ます。この温室みたいに、骨組みとガラスをきちんと大きさを合わせて組み合わせるのは……。そうか。」

「え?」

「ダンジョン構造物は強度が高いのですから、骨組みなんか無くて良いのです。早速砂糖の量産にかかります。」

「砂糖を……量産ですか。」

「ええ。サトウキビは夏の終わりか秋の初めに植え付け、1年あまり栽培し冬に収穫します。越前屋さん、至急、手に入る限りのサトウキビをかき集めて下さい。来年の冬には砂糖を生産できるでしょう。」

 実はあわでは春に植え付けて冬の初めに収穫する。

「砂糖はいくらでも売れますから。さらに砂糖は薬なのか穀物なのか菓子なのか、扱う商人が不明瞭な所がありますから、わたくしが首を突っ込む余地が多いにあります。入間いるまのお代官様がいくらかは持っていくでしょうが、それ以外は独占契約を結びたいくらいです。」

「需要が十分あるなら、サイパンみたいに砂糖だらけに……。さすがに食料を疎かにする訳にも行きませんね。」

 台湾に比べ規模は小さいとはいえ、製糖業はサイパン・テニアンの基幹産業。対して隣のグアムは人件費も高く旧宗主国のアメリカは本国で大量の砂糖を生産可能なため、農業はそこまで盛んでは無い。



【コアルーム】


「ダンジョン構造物は強度が高いですから、天井を一枚物の板ガラスにすれば、温室を作ることができる。という訳です。実際には空気の出し入れも必要ですが、屋根の半分を移動させて残りの半分の上に重ねることで開閉機構とすることができます。もちろん、屋根全体を巨大な2枚のガラス板にするのではなく、多くの部分に分割し、個々の可動屋根は容易に動かせるようにします。」

「ガラスコップなどを集めてガラスを作る訳か。」

「いえ、材料は砂漠の砂で十分です。ダンジョン構造物は単純な組成の物しか作ることが出来ませんが、ガラスは単純な二酸化珪素ですから。砂をそのまま固めれば柱になりますし、二酸化珪素だけ取り出せばガラスになります。」

 一般的な板ガラスはナトリウムやカルシウムを含む。マリーが作ろうとしているのは石英ガラスだが、ダンジョン構造物なので問題無い。

「それで温室でサトウキビを栽培すると。」

「はい。砂糖はあわで少量栽培されているだけの貴重品ですから。早速試験栽培を始めると共に、希望する村に温室を作るよう手配します。」

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