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175:牽引車と播種機のお披露目

【西門外・見沼対岸・農村地帯】


 眷属で農業担当の吉田と機械担当の小林が、動力播種機(はしゅき)、つまりトラクターで引っ張る種まき機械の説明を行っている。

「この動力播種機(はしゅき)を使うことで、熟練しなくても均一に種を播くことができます。秋の終わりの麦を播く時期までに、正式に発足した各村に順次配備していきますので、操作方法を覚えて下さい。」

 図書館の小型公用車を改造し、ゴムタイヤでは無く土管を輪切りにしたような車輪を備えた不格好な車両の後ろに、変な機械が引きずられている。車体にはダンジョン構造物で作られた枠が乗っているため、万が一転倒しても大惨事にはならない。

「残念ながら、1台では足りませんので、手動播種機(はしゅき)及び手蒔きも併用することになります。ですが今後、必要な数の農業機械を村、または各農家がダンジョンから借りる、あるいは買い取ることが出来る制度を予定しています。」



【コアルーム】


「マリーさん、いよいよ農業用牽引車(トラクター)ですか。」

「今年の目標は、入植者の職人さんの協力も得て最初の100台か200台を完成した村に1台づつ。ですね。動力が電気中心、という違いはあっても、状況は大量生産に難がある大正や昭和初期と大差ありませんから、あまり大規模な量産はできません。」

「どこかに機械工場ダンジョンでもあればな。」

「既に始めているように、分冊百科の卓上NC旋盤と3Dプリンターで工作機械を順番に作っていくしか無いでしょうね。形状・組成が単純で多少の寸法誤差を許容する部品はダンジョン構造物を使用することも出来ますが、そういう物は限られていますから。」

「ダンジョン構造物は丈夫ではあるんだが。」

「寸法誤差が大きく、加工も出来ませんし、単純に硬い物しか作れません。また、鉄パイプなら鉄屑でもあれば作成出来ますが、例えば木材は細胞の集まりですから、ダンジョンの機能で変形させたりは出来ません。」

「召喚した家具材をくっつけて大きな木材には出来ないか。」

「無理ですね。ダンジョン構造物では無く、加工して接着剤で固定した集成材なら作成可能ですが、当然ながら本格的な製材工場が必要になります。」


「それで、今回の牽引車(トラクター)は役に立つだろうか。」

「現状、どうしても改造品の制約として、本物の農業機械に比べると性能は劣りますが、それでも手作業よりは省力化できるでしょう。今後、冬の間に小型トラックを召喚し整備、春にはコンバイン、そして田植え機を投入、将来的には、ダンジョンを基準に通信により位置合わせを行って自動運転を行います。ただ、田畑の状況は地域と時代で全く異なりますから、異世界の書籍を参考に何か作ったところで、それが役立つとは限りません。むしろ、特許制度だけきちんと作って発明者に収入が入るようにしておけば、農家が現場に合わせて開発して広めます。」

「つまり現場に丸投げと……。」

「労農ロシアは五カ年計画とか七カ年計画とか計画を立ててもあの状態ですからね。1人の天才経済学者より何万人もの資本家や自営業者の方が経済を発展させます。それに、このダンジョンには博士号を持った経済学者はいませんし、ダンジョンモンスターの仕様上現状では召喚も難しいでしょう。」

「あと、トラックの免許はどうする。教習所も無く教官も居ないが。」

「トラックに限らずトラクターでも何でも、道路を走るなら運転免許が必要ですが、このダンジョンでは免許を取得できません。ですから、道路では無く通路として扱い、法的な問題は回避しようと思います。安全性はダンジョン独自に講習と試験を行い確保します。」

「何か、詭弁にも見えるが。」

「ダンジョン影響圏の3箇所の入り口には関所があって、外部と繋がっていませんから、法律上は道路ではありません。警察がダメって言うなら従いますが、異世界から埼玉県警が来ることは無いでしょう。仮に警察官が輪廻転生したところで、それは『元』警察官の赤ん坊であって警察官ではありませんから。」

 ものすごく詭弁。

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