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174:冒険者が足りない

【西門外・上小町(かみこちょう)


「それで、図書頭(ずしょのかみ)どの、食料はどれくらい不足しそうか。」

「移民の流入が予想よりかなり多いのが気になりますが、秋に5万町歩ほど麦を植えれば収穫は50万人分。最悪の場合秋まで持てば米を食用に廻しても良いので100万人までは耐えられます。つまり、春の終わり、麦の収穫まで保てばあとは何とでもなるでしょう。問題は春までですね。」

「春の収穫前が一番問題か。」

「はい。このままでは素寒貧すかんぴん大寒帝国だいかんていこくになって春窮チュングンに苦しみかねません。」

 異世界日本の隣国、大韓帝国と発音が同じ。この国は伊藤博文が遊郭のドブに浮かんだため、いろいろあったけど存続している。しかし、両班ヤンバンという支配階級が人口の8割程度にまで増加し、当然官職などはそこまで多くは無く官職以外の「両班に相応しい仕事」も足りないことから就職難やニート(このうち5級公務員試験、つまり上級の試験に合格したが採用されなかったニートをソンビと呼ぶ。ゾンビでは無い)の増加が問題となっている。

「異世界の言葉はよく分からぬが……。」

「麦の種まきが終わる頃には人口10万人。冬の間に、混乱するひたかから10万人、その他地域から10万人と仮定すると、必要な食料は30万人の2/3年分、つまり20万人の1年分で穀物換算で30万石です。対して在庫はあわとの戦争などで買い付けた約10万石、この秋の収穫が米1万石に芋3万石相当、玉蜀黍トウモロコシや大豆などが1万石程度。それこそ秋大根や白菜などで補うとしても現状では単純計算で10万石近く不足します。」

「10万石か。府中ふちゅうは、いくつか効率の悪いダンジョンを狩り尽くす方針だ。ただ、冒険者がかなり減っているから、ダンジョンに潜る者が足りない。」

「今年2度も大きないくさがありましたからね。あの人数相手では、ダンジョンの機能で一掃するしかありませんでした。あの方法では、敵兵と傭兵や冒険者を分けるのは難しいですからね。」

 さすがにマリーも仏道を妨げる悪の魔王とは呼ばれたくないのか、手っ取り早く大量のダンジョンエネルギーを獲得するため非戦闘員もろとも虐殺した。なんてことは言わない。

「このダンジョンは水属性だが、筑波つくばには火、あわには土。水での攻撃がどうなのか、考えるだけで恐ろしいな。」

「ダンジョンは外に攻めていくことは出来ませんし、水も守りに使う予定ですね。今、『見沼』という池に水を溜めていますが、ダンジョンの機能で池の水を操作出来れば、泳げない餓鬼を一掃出来るのでは無いかと考えています。」

 もちろんダンジョンは水属性では無い。

「冒険者も流されそうだな。さすがに、もう誰かがこのダンジョンに攻め込もうなどと考えても同行する冒険者は居ないだろうが。」

「筑波内薬佑(ないやくのじょう)の時に、既にある程度有能な冒険者は危険を見抜いて参加しなかったと聞いています。」

「とはいえ、冒険者が減る原因は戦争ばかりでは無い。そもそも冒険者の多くは、他に仕事が無い次男三男だが、今はこのダンジョンで田畑が貰えるので、好きで続けている者以外だと冒険者を辞める者が出てきている。」

「確かにそうなりますね。わたしも予想より妙に移民の流入が早いとは思っていたのですが、確かに冒険者なら身軽に住所を移すことが出来ます。」

「畑のある農民なら、簡単に寺請証文や送一札が出ることは無いが、冒険者は無宿むしゅくでは無いとは言え制度上引っ越しは容易だ。」

「冒険者が減っている。となると、問題は食糧だけで済まない可能性がありますね。」

「うむ。ダンジョンに依存する産物は多い。それらの供給が滞るとなると大問題だな。」

「このダンジョンで召喚出来る物で代替できないか検討が必要ですね。」

「すまぬ。逆に迷惑をかけてしまいそうだ。」

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