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172:東への街道

【第三層群10階応接室】


 スカーレット(サルビア)は退出し、東方担当のアン(ラベンダー)と土木専門の浜田(ハマゴウ)博士が入室。

「東方面、織田城手前の太田橋まで街道が完成しました。なお、ダンジョン影響圏の拡大は距離的にもほぼ限界と思われます。」

「ダンジョン影響圏の外ですが、コンクリートはまだ用意出来ないため、今後、小田城下の手前まで『マカダム舗装』で道を作ります。このため、既に佐藤班を派遣しています。なお、マカダム舗装とは砕石を敷き詰め転圧するもので、特殊な資材を必要としないという利点があります。ただし、馬車には向いていますが、耐久性の限界や滑りやすさにより多数の自動車には向きません。」

 浜田(ハマゴウ)博士が説明する。

「そもそも、そんなにたくさんの車は存在しないから問題無いだろう。徒歩で8日半というのはかなり遠いが。」

「マスター、350kmありますからね。本来は飛行機の距離です。残念ながら、飛行機は図書館の備品にありませんし製造も困難と思われます。」

 城東区と深川区の海側にある東京市飛行場か、自家用機(金持ち)が使う蒲田区の羽田飛行場や多摩県あたりの陸軍の軍用飛行場でもダンジョン化していれば別だが、そんな都合の良い話は無い。

側近書記セクレタリー殿、飛行機は現状では到底作る訳には行かない。そもそもの問題として家財道具のある移民には飛行機は難しいとは思うが。大量輸送ならアメリカ製の大型トレーラーがあれば良いが、これも入手出来ない。ただ、飛行機と異なりいずれ製造は可能になると思われる。」

 浜田(ハマゴウ)博士は大型トレーラーを推奨。最大の連結トレーラーは全長30mを越え総重量も100tを軽く越えるが、もちろんこんなもの日本では限られた道路でしか走行できない。

「いわゆる『ビッグリグ』ですか。さすがに大きすぎて日本で移動図書館に使っている例はありませんし、ベトン級戦艦みたいに『作る』のも難しそうですね。」

「船なら砂を固めたダンジョン構造物を流用できたが、トラックだと例えば、召喚出来ない大型のタイヤをダンジョン構造物で作ったら、柔軟性が足りず乗り心地は最悪で荷物も傷むだろう。しかも間違えてダンジョン影響圏から出たら崩壊する。とはいえ、鉄道や飛行機よりは製造は容易だろう。」

浜田(ハマゴウ)博士、逆に、電車ならレールも車輪も鉄だから硬くても問題無いし、鉄骨造りの建物を召喚して解体し転用出来ないだろうか。」

「構造用鋼材と鉄道のレールや車輪は鉄の組成が異なるが、それをダンジョン構造物化で無理矢理押し切ったところで、ダンジョン構造物は複雑な形状の物は作ることが出来ないため、モーターなどの問題が出てくる。また、バスやトラックを改造して電車にするのは困難だ。小田右京亮(うきょうのすけ)殿は、鉄道が出来たら城の真ん中に線路を通すとは言っていたが、鉄道は今は『不可能』と割り切った方が良い。」

「織田家は新しい物が好きですからね。それにしても、城の真ん中に電車ですか。」

 マリーが織田ではなく小田だと気付く日は来るだろうか。

「それで、舗装の材料は調達できるのか?」

「小田城の東でダンジョンでは無い高品質の砕石を調達可能だから、将来コンクリートを作るときも役立つでしょう。」


アン(ラベンダー)さん、織田城から徒歩だと8日半だが、ひたかの国からの移民をバスやトラックで運ぶことは可能だろうか。」

「今ある数では到底追いつかないと思います。もし移動図書館を多数召喚しても運転手が足りず、自動運転をこのダンジョンの仕様に改造する必要があるので、すぐには使えません。」

「非効率を承知で転送陣を敷くか、何か他の方法を考えるか。」

 転送陣の正体はエレベーターであり、輸送能力は500人/時程度に過ぎず家財道具込みだとさらに効率は落ちるが、それでも昼夜フル稼働させれば10万人の移民でも30日かそこらで輸送可能。ただ、将来鉄道でも登場したらたちまちゴミに成り下がるが。

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