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156:狸の泥船(仕様策定)

【第三層群10階応接室】


「このダンジョンは図書館とその備品しか召喚出来ません。移動図書館には船も使われていますが、数が揃えられず、このダンジョンでは燃料が入手出来ないなど制約があります。このため、ダンジョン構造物で『狸の泥船』を作ることにしました。」

 マリーがいきさつを説明するが、この場に居るダンジョンマスターも造船技師も知っていること。

「動力は資材と燃料入手の制約により電池式の電気推進となる。あと、船の仕様で重要なのは大きさと速さだ。」

 造船技師の水戸(ミズトラノオ)は画面に何枚かのイラストを表示させる。

「やはり帆船は無理なのか。」

 ダンジョンマスターが質問する。

「帆走は熟練を要し、また橋をくぐることが出来ない。帆柱を倒すことも可能だろうが、操作が間に合わずぶつかる危険がある。橋も船もダンジョン構造物ならばそれ自体は衝突程度では破損しないが、帆柱を倒す機構はダンジョン構造物で作ることが出来ないので、その部分が破壊され、乗組員が死傷する危険がある。」

 ダンジョン構造物は単純な組成・形状の物しか作ることが出来ないという制約がある。船なら船体そのものはダンジョン構造物で作成可能だが、エンジンなどは出来ない。


「それで、船の『大きさ』はどの程度になるんだ。」

「船は大きいほど多くの荷物を運ぶことが出来るが、大きすぎても運ぶ荷物が無いため無駄になる。異世界の江戸時代では千石船、150~200t程積むことが出来る船が多用されていましたが、その程度か、やや大きいくらいが良いだろう。」

「それくらいが妥当かな。」

「でも、荷物はどうやって船に運び込むのです? 江戸時代みたいに米俵を担いで運ぶのは大変だと思いますが。」

 マリーが質問する。

「移動図書館が召喚可能だから、トラック型移動図書館の図書館部分を取り払いトラックとして使用し、そのまま船に載せたら良いだろう。効率ならコンテナ船が良いが、それぞれの港にクレーンを用意しなければならないし、荷物をコンテナに積み込む必要もあるため、現時点では難しいと思われる。」

 水戸(ミズトラノオ)は画面に画像を表示。全長40m・幅10m程度の船体、小型フェリーの客室部分が無いような姿の船が表示される。

「現状では、小型RO-RO船(ローローせん)が最適だ。重心が高くなること、船の前後にあるランプドアの開閉機構がダンジョン構造物では無いため弱点となることが欠点だが、荷役(にやく)は容易になる。」

「映画にあるみたいに、直接砂浜に乗り上げる船なら、港が無くても運用出来るのでは?」

「そのような船は形状の問題により効率が悪くなる。また、見沼の岸で砂浜は多くは無いため、あまり活躍の場は無い。」


「最期に速さだったな。」

「船に必要な電動機の出力は速度の三乗に比例する。このため船は遅い方が効率が良いが、あまり遅いと昼の間に隣町まで到着できない。夜間航行は最初はやめた方が良いだろう。」

「宿場町は10里間隔、つまり40km間隔ですが、地図を見る限り、水上の距離では最大で60km程度になりそうですね。積み込みと積み下ろしの時間も考慮すれば、最低でも時速10km程度は必要でしょうか。必要な場合もう1つ先の港へ行くことも考えるなら、時速15kmくらいでしょうか。」

「8ノットなら十分余裕があるな。11ノット、時速20kmと言われたら電池がゾウ並の重さになってしまう。設計上は対応可能ではあるが、現状では大出力の電動機が手に入らない問題が出る。」

「時速15kmだと、どうなります。」

「バスや中型トラック用の出力150kW電動機を2基使えば時速15km程度となる。連続10時間航行可能とすれば電池容量は3MWhでバス10台分、電池の重さは2.5tとなる。」

 当然ながら、自動車は常に走り続けている訳では無いため、船よりは電池は少なくて済む。

「それでも2.5tか。」

 これでも異世界の半導体蓄電池は相当性能が良く、非常用にも使われる大型電池は容量10kWhで重さ10kg足らず。これを近距離用の乗用車で2~3個、路線バスなら30個ほど積む。

「なら、その仕様で1番船を建造して下さい。不具合があれば設計変更をかけます。」

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