146:ネームドモブモンスター召喚候補(工学系)
【第三層群・会議室】
「ミントさん、工学系はどうしようか。」
「工学部はざっくり分けて、情報・電気・機械・建設・材料の5分野。召喚リストから見て、電気・機械・建築・土木・応用物理・応用化学・生物応用化学と追加で造船・航空で9人か。館長殿が居るから建築を除いても最低限8人となる。」
ミントは8名を提示。なお、自称スーパー薄荷のミント自身は情報工学科なので情報系は二重召喚出来ない。
「つまり、主要5分野に工学博士を召喚すると良い訳ですが、情報は召喚出来ませんね。後で何か考えましょう。世界によってはグランゼコールがあったりしますが、その辺は同等と考えます。」
「マリーさん、まず電気か。痺れるような有毒植物があれば。」
「有毒と言っても腹を壊すとかが多いですからね。あるいは絶縁油……。油と言えば荏胡麻ですが、塗料には使いますが絶縁はどうでしょうか。南の方に荏原郡ってありますから、名前は荏原で良いでしょう。そもそも荏胡麻の産地って意味の地名ですし。」
「名前は側近書記殿に任せます。」
命名は丸投げするミント。
「次に機械。機械に関係するシソなんてあるのか。土木なら『木』を選べば良いだろうけど。」
「土『木』と言いますし、シソ科で最も著名な樹木であるチーク。あるいは、砂を止めるということで海浜植物のハマゴウ。ここはハマゴウを土木にしてチークを機械にしますか。」
「マリーさん、それで行こう。で、名前だよな。ハマゴウは日本でも産するし、砂浜に生えているから浜田あたりか。」
「砂漠の大部分を占める岩が転がっている荒れ地も『浜田』と言いますし、それで良いでしょう。砂丘があるような砂砂漠は『エルグ』と言いますが。漢字だと、どう表記するのでしょうか。」
「一方、チークは東南アジアだよな。タイ語か何か使うか。」
「チークは東南アジア原産で、インドからフィリピンに3種が分布します。チークはタイ語でサックですね。タイ人の名前は通常やたら長いサンスクリット語ですが、普段は短いニックネームで呼びますから、『サック』で良いでしょう。」
「タイ語は分からないが。英語は使えるんだろうな。」
ミントは日本語と英語しか使えない。
「このダンジョンの基本言語は日本語ですから、召喚する以上日本語は使えると思います。」
「で、マリーさん、ミントさん、次は応用物理と応用化学だな。」
「これも扱いが難しい分野ですね。物理や化学を産業に応用するからそういう名前なのですが、今のこのダンジョンの工業力では、応用物理は保留、応用化学は農芸化学と『化学』で纏めた方が良いと思います。」
「召喚枠に限りがあるので異論は無いが。」
「ミントの了解も得られたので、化学で。ラベンダーの一種、ラヴァンドラ・ラティフォリア、広葉ラベンダーは油に多様な用途があります。別名ポルトガル・ラベンダーなので、ポルトガル名のレオノール。河童に居そうな名前ですが。なお、フレンチ・ラベンダーはアンが嫌っているので対象外にします。」
「確か、破廉恥の語源がフレンチだったな。」
「確かに、幕末明治の造語ですから、言葉遊びとしてわざとフレンチに似せた可能性は高いですが……。」
「次に生物応用化学、生命工学。燃料から医薬品まで使われる技術です。」
「マリーさん、生命工学は微生物が中心だったな。微生物と言えば酒か。」
「リキュールだとヒソップ、ビールだとホップ普及以前にはマジョラムも使われていました。漬物だと梅干は塩漬けですが、柴漬は発酵を伴います。一応、赤紫蘇は荏胡麻と同種ではありますが。」
「赤紫蘇……赤なのか紫なのか。そういえば千葉に蘇我ってあったな。古代には入鹿とか蝦夷とか居たが、さすがに時代が違うし問題無い。」
「次に、造船は半水性植物のミズトラノオで良いでしょう。」
「水虎の尾……トラオ……虎夫になるか。何か、勝率7割でも全球団に勝ち越しても勝てない球団のファンになりそうな名前だが。しかも名字ではないな。ミズトラ……ミズト……水戸? 」
「茨城か。納豆だなぁ。」
と、ミント。
「次に、航空……飛ぶようなシソ科……あるのか。」
「メキシコのサルビア・ディビノラムという植物は幻覚を見るそうです。ただ、そういう植物は住民への危険があります。当面の目的はドローンですし、『ドローン』という単語はミツバチ由来で、レモンバームは古代ギリシアでは蜜源植物だったのでミツバチを意味する『メリッサ』とも呼ばれますから、普通にレモンバームで良いでしょう。」
「名前はそのままメリッサで良いかな。文化圏的におかしくは無いと思う。」
「マスターが文化圏とか、まともなこと言いますか。」
「館長殿、これで工学系は博士が機械・電気・土木、修士が生物応用化学と造船・航空の6人。あと化学。です。」




