表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
140/550

140:入植者到来中

【図書館都市ダンジョン影響圏西端・琵琶橋】


「父上、武蔵むさしから人が居なくなるのではないか。」

 続々とやってくる移民を見ながら、仙波(せんば)左馬允(さまのじょう)次郎が言う。

「なに、相撲すもうはもちろん、ふさの者もここを通るから、皆が武蔵むさしから来たわけでは無い。それに、そもそも移民には寺と村役人の証文が必要だから、移住されたら困る者は止めることが出来る。もっとも、ダンジョン側が武蔵の者と気づかず、ただの逃散ちょうさんと誤認してしまったら別だが。」

 父親の仙波掃部助(かもんのすけ)が答える。

「それで、父上、今日はどのような御用向きで。」

「なに、そなたも知行持ちの身。一族の金子掌侍(ないしのじょう)殿から一家を立ててはどうかという話があった。むろん、国主様も了承済みゆえ、あとは図書頭(ずしょのかみ)様の承諾を得れば良い。」

 次郎の意向など誰も聞かない。あのババァ、と言いそうになったが立場上我慢する次郎。

「つまり、妻を紹介していただけるということですか。」

「おおそうよ。楽しみに待っておれ。ついでに、仙波の南に居る大井おおい氏が分家を出したいというので、それも頼んでくる。」

「あの大井の獅子か。大猪おおいのしし……それだと猪俣いのまた党になってしまう。」

「はは。」

 水の貴重な砂漠で、水が得られる大井戸があるため大井氏であり、競馬場とは無関係。仙波氏と同じ村山党の一員であり、もちろん猪俣党ではない。



(たじひ)村】


 ダンジョン北西10里(約40km)、(たじひ)村。丹党たんとうの村々から応援で派遣された農民達、というか厄介払いされた次男三男達が次々到着。ラージャ(バジル)はせっせと田畑を増やしていた。



私市きさいち村】


 ダンジョン北東10里(約40km)、私市きさいち村には、大昔に図書館都市ダンジョンのずっと北の方に拠点を置いていた武士団が住んでいる。開発担当のファリゴール(タイム)が不在なので、暇な私市きさいち党の惣領、私市きさいち山手やまてはせっせと手紙を書いていた。もちろん「山手」なんて官職は存在せず、根拠のない官職風の名乗り。

大里おおさと幡羅はらにちゃんと家がある親戚達は呼ばなくて良いか。え~と、あの一族は海賊に身をやつしているから呼べば飛んでくるだろう。アレは修羅だし図書頭(ずしょのかみ)様も断らないだろうな。あの横山党も呼べば来るか。」



野与のよ村】


 ダンジョン東10里(約40km)、野与のよ村。3人の冒険者が涸れ谷の対岸にある遺跡を見ていた。

「あれが『岩山の廃墟』か。ようやっと冒険者らしい仕事だな。」

 右馬太夫が隣に居る兵衞次郎に声を掛ける。

「違いねぇ。落ち武者狩りどころかダンジョンが倒した敵兵の荷物を集めるなんて、あんまり気分の良い仕事でもねぇからな。」

「しかしな、相変わらず敵には容赦しないお方だ。首を取らないということは、和睦とかそういうことは一切考慮しないということだろ。」

「ああ、左衛門太郎、根切りしか考えない。『鳴かぬなら今夜は天麩羅ほととぎす』図書頭(ずしょのかみ)様は、そいうお方よ。」

 ユリ科のホトトギスは、若芽を天麩羅やおひたしにして食べることが出来る。鳥の方は不味いとのこと。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ