136:帝国図書館の存在意義とは
【帝国図書館】
ダンジョンマスターとマリーは、今回召喚した帝国図書館を視察。
「これが帝国図書館か。といっても何も無いな。」
「本はこれから召喚しなければなりません。なお、異世界の帝国図書館の蔵書自体は数千万点ですが、このダンジョンではコストは高くなりますが『一部の世界にしか存在しない本』も召喚出来るため、召喚可能な書籍は億単位となります。」
「全部読むとなると?」
「仮に1億冊でも、毎日10冊読んで3万年近く。いくら名前付きモンスターに寿命が無いと言っても、『図書館地獄』になってしまいます。もっとも、収蔵スペースが足りなくなりますが。」
「精神がすり切れるな。で、この帝国図書館をどう扱おうか。」
「帝国図書館は本を『保存する』ための図書館で、大学図書館のように知識を『活用する』ための図書館や、公共図書館のような住民向け社会インフラ、あるいはこのダンジョンでは召喚出来ませんが書店とは異なります。」
「よく分からないな。」
「わたしも専門外ですからね。本来は司書を召喚すべきなのですが……。この図書館都市ダンジョン、修羅も獣人も居ない世界から来ているのに、本来の主系列モンスターが牛頭馬頭だったり、いろいろと謎が多いです。今更どうにもできませんが。」
「異世界では、修羅道が植物で畜生道が動物で餓鬼道が鉱物だったな。」
「本質は同じでしょう。植物界は光や水と言った共通の資源を奪い合う戦いの世界、動物界は本能で生きる弱肉強食の世界、鉱物界は食べることも飲むことも出来ず飢えと渇きに苦しむ。となるでしょう。もちろん、石そのものは無生物なので輪廻転生の対象外ですが。」
「このダンジョン、召喚出来る紫蘇(修羅)の経歴、というか学歴に制約があって司書課程が無い。だったな。」
「はい。あと、マスターの眷属を召喚したとしても、やはり司書は居なさそうです。さらに、このダンジョンでは『異世界転生』が使い物にならない。という話は以前しましたね。」
「修羅は誕生時に脳が無く、畜生は脳容量が足りない。だったか。」
「そうです。そのため記憶が失われ、知識を引き継がない普通の輪廻転生と同じになってしまいます。」
「確かに、それは無意味か。」
「ですから、このダンジョンで司書を入手する唯一の方法は、生贄を使う『死体憑依召喚』ですが、やり方が分かりません。」
「明らかに邪悪な方法だろうな。」
「ともかく、帝国図書館の扱いは焦って決めずに、慎重に検討した方が良いでしょう。図書館都市ダンジョンが本来『複数の異世界から億を超える書籍や無数の雑誌・新聞等を召喚するダンジョンであり、この世界の神話・伝承・冒険記から創作物語や詩歌まで様々な情報を集積・書籍化する図書館であり、学者達をはじめとする多数の住民が生活する都市である。』となる以上、帝国図書館の機能が鍵になるわけですから。」




