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129:あのダンジョンの危険性

【砂漠】


「あのダンジョンが特殊なのは、誰か領主が住み着いているとかではなく、ダンジョンそのものが領地経営に乗り出しているという点だ。」

 細川ほそかわ民部少輔みんぶのしょうゆうが説明する。

「単に里見さとみ家のためにも、どこの国も管轄していない、水の豊富なダンジョンを制圧したかっただけなんだが。それにしても、なんでダンジョンが田んぼ作って入植者など集めているんだ。人を喰うためにしては手間を掛けすぎじゃないか。」

 里見さとみ右馬頭うまのかみが聞く。

「もちろん、ダンジョンは人を喰う。怪物を倒すといろいろな物が手に入ったり、宝箱があったりするのは冒険者を呼び込むためで、運が悪い冒険者はダンジョンに喰われる。」

「それは知っている。ダンジョンは人を喰わないと存続出来ないと言うことも。」

「だから、安全で冒険者が誰も死なないダンジョンは、やがて衰退し崩壊する。一方、あまりにも危険すぎるダンジョンは冒険者が行かなくなるから、やはり衰退し崩壊する。『石の神殿アスカ』みたいに人為的に生贄を与えれば別だが。」

民部少輔みんぶのしょうゆう殿、アスカは近隣とは相当仲が悪いと聞いています。」

「当然だ。アスカに住んでいる修羅どもは生贄狩りをしているからな。修羅なんてのは、人間や獣人を動物としか思っていない。それに対し『商都梅田』では、商人達がダンジョン内に町を作っている。なにも生贄を捧げなくても、住民が多数居れば、いずれ寿命で死ぬ。というわけだ。」

「それを商人の代表、えっと患部会だったか環部会だったかではなく、ダンジョン自身が手掛けているのがあのダンジョンと言う訳か。」

「しかも、他に例を見ない規模で。だ。なんせ『百万町歩開墾計画ひゃくまんちょうふかいこんけいかく』だ。百万単位で人を集めたら、毎年万単位で死者が出る。万の冒険者が命を落とすダンジョンなど『ダンジョン災害』でも起きない限り無いだろう。ダンジョンごときがよくぞそこまで考えた物よ。」

「それで、武蔵とか総とかは、目先の欲に目がくらんで、あっさりダンジョンに騙されたと。」

「いや、連中は、間違い無く分かってやっている。増えすぎた人間をダンジョンに喰わせて、逆にダンジョンから食料を買おうという魂胆だろう。ダンジョンは外に攻めてくることは無いから連中にとって直接の脅威にはならない。確かに影響圏は徐々に広がるが、既存の村がダンジョンに呑み込まれることは無い。だから、苦しむのは、我が粟など、ダンジョンの恩恵を受ける周辺諸国に圧迫されるさらに外側の国だけだ。」

「厄介な相手ですな。」

相撲すもうは本来被害者側だけど、既に一枚噛んでいる。かひしなこしは山を越えるので、まぁ安全だ。結局、被害を受けるのは、国内が混乱しているひたかと、我があわだ。ひたか小田おだの小僧がダンジョンに臣従を申し出ているし、ダンジョンの力で統一してしまうかもしれないが。」

「あの家紋が尻の小田か。でも、民部少輔みんぶのしょうゆう殿、ダンジョンは小田おだに援軍は送れないかと。」

「結局、戦争を決めるのは経済だからな。小田おだがダンジョンと結んで国力を増せば、直接的な援軍よりはるかに脅威になる。」

ひたかは混乱の結果だから自業自得の気もするな。」

「幸い、会話は出来る相手だから、コアまで押し入ってコアを人質に取って降伏させれば制圧できる。所詮はダンジョンだ。侍みたいに名誉を重んじて腹を切ったりはしない。」

「ダンジョンコアはどこが腹なのやら。それで、ダンジョンを飼い慣らすと。」

「制圧して飼い慣らすまでは行かなくても、人の役に立てれば良い。例えば、海上うなかみ典膳かしわでのすけ殿の飯沼いいぬまには大規模な水属性のダンジョンがあり、魚を産する。このダンジョンは生贄が欲しいときには勝手にダンジョン内で嵐を起こし犠牲者が出る。それでも1,000人程も犠牲者が出てダンジョン災害と呼ばれるほどの惨事は数百年で2度しか起きていないし、多量の魚が得られるから、飯沼いいぬまの冒険者達はダンジョン内に船を出し魚を狩る。」

「……民部少輔みんぶのしょうゆう殿、それ、あのダンジョンの方が、よっぽど扱いやすい気がするが。でも考えたら負けだ。」

武蔵むさしあたりはそう考えているが、逆に言えば、あまりにも武蔵に都合が良すぎるから、あわには危険すぎる。だから、右馬頭うまのかみ殿の計画に乗った方が細川ほそかわ家の為になる。という訳だ。」


「コアがあるのは、あの塔の天辺か。転送陣が使えないと骨だぞ。」

 里見さとみ右馬頭うまのかみは塔の上の方を指さす。

「塔型ダンジョンは大抵一番上にコアがあるからな。それで、鳥獣人の冒険者を窓から飛び込ませてコアを制圧する。というやり方もあるんだが。」

「鳥獣人は居ないが。」

「いや、その程度の対策、いくらダンジョンの知能とはいえ当然しているだろうし、あのダンジョンは背が高すぎて鳥すら届かず無駄だから、わざわざ雇っていない。」

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