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110:観音寺と蛇の池

【北東門外あたり】


「龍が棲む池というのは、つまりダンジョンで、龍はダンジョンの力を使って雨を降らせる。ということね。」

 マリーがヴァサンティの話を纏める。侍女2人は一泊して帰還するので同行せず休息。尼さんとお付きの婆さん、それに(ヴァサンティ)がダンジョンに残り、観音寺を作る場所を探す。

「そ~いうことかな~。」

 ダンジョンマスター用に取り寄せできるチューハイを空けて上機嫌のヴァサンティ。

「そして、このあたりがヴァサンティさんのお勧めの場所ということですね。」

 台地の上だがわずかに低くなった場所。

「私の住処としてコアから水を引いてきて泉を作って、貢ぎ物は酒を毎日2回。あと数日に一度、卵か、生きた鼠かヒヨコを捧げるが良い。あと、運動用に広い池が欲しいが、こちらはすぐにとは言わぬ。」

「鼠は、まだ居ないかもしれませんね。このダンジョン、出来てそんなに経っていませんから。」

 実は、ダンジョンモンスターとしてネズミは召喚可能だが、マリーは召喚リストをきちんと見ていない。ネズミどころか召喚リスト末尾のシバンムシ・チャタテムシ・紙魚だって使いようによってはダンジョンの戦力になり得るが、マリーはそういう手法は採っていない。

「なら、ダンジョンの力を分けてくれれば、人の姿になることも出来る。それなら人間の食事で大丈夫だ。ただ、人の姿は龍の姿よりお腹が空くので、神饌しんせんは朝夕必要になる。あと、もし冬も雨が必要なら、当然ながら人型になる必要がある。龍は冬は冬眠するからな。」

 思わず、冬眠なんてそれ蛇だろ。と言いたくなるのを我慢するマリー。

「へび……いえ、龍を怖がる人も居ますから、儀式などでは人の姿の方が良いでしょうね。試してみてくれませんか。」

「それでは、服が無いので、一尺四方程の布を戴けぬか。」

「タオル、あ、手拭いを貸しましょうか。でも一尺、ずいぶんと小さいですね。バスタオル……あの、大きいのは要らないのですか。」

 マリーは第425層群の備品として召喚出来るタオルを手に取る。宣伝も兼ねて地元産のタオルが使われているのでダンジョンでも召喚可能でマリーは愛用している。

「人の姿になっても重さを増やすことは龍の手にも余る。」

 質量保存の法則があるため、狐狸も蛇も化けても普通は体重は変わらない。もちろん、見かけの大きさを変える者は居る。

 ヴァサンティはタオルの下に潜り込むと身長40cmほどの少女に化け、器用にタオルを体に巻く。ただし、そもそも元が爬虫類なので裸でも別にR18にはならないが。

「あらかわいい。お人形さんみたいね。」

 と、尼さん。市松人形は高価な物で、武家の娘が嫁入り道具にしたり、裁縫の練習に使ったりする。

「自分で言うのもあれだが、かわいいであろ。鏡が欲しいの。ほれ、やしろにはよく鏡を置いてあるであろ。」

「姫様、懐かしいですね。姫様がまだ子供の頃、端切れで人形の服を作られていたことを思い出します。」

「あの人形は娘の嫁入り道具にしましたが、今度は蛇さんの服を作ってあげましょうね。」

「だから龍だってばぁ。あの、服は戴きます。」


「では、ここに観音寺をお願いします。図書頭(ずしょのかみ)さま、あまり長くない付き合いかとは思いますが、よろしくお願いします。」

「はい、蛇の池(じゃのいけ)を用意して、観音寺……サイズ感的には第一層群がちょうど良いのですが……。」

「それはどれくらいの大きさなのですか。」

「150坪くらいですね。本堂になる60坪ほどの閲覧室と、庫裏くりにも使える場所もあるのですが。他の近隣図書館はコミュニティセンター併設などでどうにも大きすぎます。それこそ上尾あげおあたりから適当な分館を引っ張ってくるか、逆に、いっそプラザノースでも召喚して使わない部屋は倉庫にするって手もあるか。」

「準備も必要でしょうし、すぐに、とは言いません。」

「大丈夫です。召喚自体はすぐ出来ますから。寺号額はとりあえず手書きで済ませるとしても。」


 こうして、図書館都市ダンジョンで最初の寺、観音寺が開山かいさんされた。その後、岸村では勢至菩薩せいしぼさつを本尊とする月山寺が開山かいさんする。

女の子に化ける「ちょろい」ドラゴン。お約束なのですが、残念ながらダンジョンマスターは引きこもり、マリーは実は性別が無い。結局このダンジョンではただのアメフラシ。なんて言うと蛇扱い以上に怒られそうです。

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