105:モンスターが召喚出来なくなった
【コアルーム】
「ミントさんとサピエン先生に怒られそうだな。マリーさん、余裕ダンジョンエネルギーから見て9人目は召喚可能だろうか。」
「典型的なダメダメパターンですね。マスターは競馬で勝てないからって散財してオケラ街道を歩くタイプですよ。この世界に競馬場が無くて、正確には存在を知られていなくて良かったです。」
競馬場ダンジョンはあるが、ただのカボチャ畑として扱われており、いずれ崩壊する運命。
「中山競馬場ダンジョンでレースが行われていたとしても、さすがにダンジョンほったらかして競馬場には行かないぞ。たぶん。」
「線路引いて直通列車走らせろ。くらい言うかと思いましたが。でも、あのダンジョンは(距離が)300km以上あるので、鉄道では日帰り出来ませんね。」
韓国併合も満州事変も第二次世界大戦も無かったため、弾丸列車・新幹線は無い。
「300kmって名古屋や仙台か。車だと微妙に遠いし、飛行機も空港アクセスでかえって遅くなるし、面倒な距離だな。」
「それこそ、真空チューブ自動車でも実用化されれば別ですが、気密問題が手に負えませんからね。それで、9人目ですか。」
「マリーさん、召喚リストの『紫蘇(修羅・特殊)』が灰色になっているぞ。」
「現在召喚条件を満たさない。という状態ですね。リストから消えてはいませんから、各学部1人づつしか召喚出来ず、これで終わりという訳では無いようです。リストの下の方は召喚可能ですから、ダンジョンモンスターの上限ってことも無いようです。この規模のダンジョンが8人で上限なんてあり得ないでしょうが。」
「解放条件があるのかな。」
「あくまでわたしの推測ですが、最初の8人と9人目以降で異なる条件があるのでしょうね。制約無く召喚可能なのか、あるいは1学科1名になるのかも分かりませんし、召喚コストが増えるか減るかも分かりませんが。」
「どういう条件だろうか。『ダンジョン内の同時滞在冒険者数』1万人なんて人間牧場以外ではあり得ない非現実的な数字だし、サピエン先生が言っていたみたいにそれこそ本の数関係か。」
「マスター、本の虫とか言わないでくださいよ。わたしは大抵の虫には耐性ありますし、生理的にダメなのベニフキノメイガくらいですが、図書館の本には虫は良くないですから。」
ローズマリーには、ほとんど害虫が付かないため、マリーも虫への耐性が高い。つまり、イケメンの薔薇属は毛虫でギャーギャー大騒ぎするということ。
「召喚可能な、まともなモンスターは紫蘇(修羅)だけだから、再解放まで8人とミントの分身でなんとかするしか無いか。」
「この世界の医者や技術者や教師の教育を急がないといけませんね。募集はしているのですが、まだ1人も雇っていませんが。」
「武士団とか、それこそ坊さんとかは、別にこの世界水準で何も問題無いけど、医者や技術者は再教育が必要だし大変だぞ。教師は当面は寺子屋の師範で良いとしても。」
「そもそも、ダンジョンモンスターだって名前付きでなければ知性が無く定型的な行動しか出来ませんから、当然医者などは出来ませんし、将来全ての医者を名前付きモンスターで揃えるのも不可能です。元よりダンジョン外の人材を活用する必要はありましたから、それが前倒しされただけです。」
「ただ、時間がかかるよな。医学部で4年、医専で4~5年か。」
「修羅なら、もっと知識の短期詰め込みは効きますから、ダンジョンモンスターではない修羅が来たなら優先して育成するのも手です。でも、実技の方は練習しないと駄目ですね。それに、この世界の技術水準では、可哀想ですが練習には動物が必要です。」
図書館だけで無く21世紀の医学部校舎を機材ごと召喚し、さらに消耗機材を補充出来るなら別だが、現状では手に余る。
「今居る動物はニワトリだけか。」
「あれは宗教的には畜生ですが生物学的には恐竜ですから、鳥系獣人程度しか練習になりません……人間はともかく、修羅や獣人の場合、召喚した医学書、役に立つのでしょうか。」
「召喚出来る医学書や論文は人間用だけだよな。この図書館都市ダンジョンの場合。」
「そういう異世界群としか繋がっていませんからね。となると、最初に召喚可能だった図書館職員が牛頭馬頭というのも奇妙ですが。」
「確かカローラブライアンだったかスレッジハンマーだったか、いずれにせよ馬だった。召喚リストにオグリタダマサが無かったのは覚えている。シンガリアドルフも無かったような……。」
本来、チュートリアルでは異世界転生司書、後の増員は異世界から複製召喚。だったことは、もはや誰も知らない。




