102:第六・第七の紫蘇召喚
【コアルーム】
ダンジョンは人材不足で多忙なので、会議終了後、紫蘇(修羅)達は速やかに退出し、ダンジョンマスターとマリーが残る。
「マリーさん、サルビアとコリウスで良かったな。」
「はい、正確にはサルビア・スプレンデンスとコリウス・スクテラリオイデスです。」
マリーは図鑑のコピーを提示。
ダンジョンマスターはコアに手を乗せ、モンスターを召喚する。コアが光ると2人のモンスターが召喚された。
召喚されたのは、深い赤色の上着とスカートを着た女と、赤と黄色が混じったような派手なスーツを着た男。もちろん、厳密には性別は無い。シソ科にはシマムラサキの仲間など雌雄がある種類もあるが少ない。
「何か派手なのが召喚されましたね……。」
「男の方がコリウスで女の方がサルビアだが、名前は……。サルビアは別名ヒゴロモソウ(緋衣草)、あるいはスカーレットセージなので、『スカーレット』で良いだろう。本に出てくるキツネの名前みたいだが。コリウスがキンランジソ(金襴紫蘇)、英語だとペインテッドネトル、色つきイラクサか。見た目派手派手だし『キンラン』かな。」
ダンジョンコアが、
「マスターがモンスターをネームドに設定しました。モンスター『サルビア』の個体名を『スカーレット』、『コリウス』の個体名を『キンラン』に設定します。」
と告げる。
「スカーレットと申します。営業ならお任せ下さい。モットーは『目標必達』。最低努力投入量を越える大量行動を基本に、天才に頼らずとも成果を挙げられる仕組み作りを進めさせていただきます。」
深い緑の金属光沢(構造色)の長めの黒髪、目は鮮やかな赤だが、吸血鬼では無い。
「同じく営業のキンランや。財でもサービスでも、売るためのセールスとマーケティングなら任せてくれや。」
光の当たり方で赤や黄色など色の変わる金属光沢(構造色)の短髪、目は薄い紫。
「マスター、このダンジョンは会社ではないのに、なんで営業なんか召喚したのです?」
「そこはコアに聞いて欲しい。ま、とりあえずヨシ!」
「ヨシじゃありません。わたしは彼らの配置転換を要求します。今後、入植者に社会組織を作らせるって大問題があるので、それこそ窓口業務の公務員か何かに。」
「入植者はダンジョンという商品を提供する顧客と捉えることができますし、入植者をダンジョンの従業員と捉えれば、マネジメントの問題ですね。いずれにせよ営業の出番でしょう。」
スカーレットが言う。
「スカーレットさんだったな。そういう視点なら次は営業が必要か。それにしても、なぜ2人とも営業なんだろう。」
「あ、学歴、というか、あくまでも設定上の『学部』は、どうなっています?」
マリーは召喚された2人に聞く。
「MBAやさかい経営学修士やけど、学部って言ったら商学部ってことになっとるな。学校通ったことはあらへんけど。」
「私は経済学部です。」
キンランとスカーレットが答える。
「やっぱり。」
「マリーさん、どういうことです。」
「このダンジョンコアはどうやらモンスターを職業ではなく学歴、それも単純に学部で見ているようです。それなら、コアから見たら商学部と経済学部は別の扱いです。ですが、現実には商学部も経済学部も多くは営業になりますから、召喚されるダンジョンモンスターは高確率で営業になります。逆に、ミントが欲しがっていた機械の専門家ですが、コアから見たらミントと同じ工学部卒になるので『既に居るから召喚する必要は無い』となったのでしょう。」
「また妙なコアだな。普通はダンジョンモンスターに学歴も何も無いだろうに。ゴブリンやスライムは何学部だ?」
「そもそも、この世界に、そういう疑似西欧系のダンジョンモンスターって居るのでしょうか。スライムは過去に取り寄せたことはありましたがモンスターではありませんでした。それはさておき、マスターがわたしを召喚したときに異常が起きたのでは無いでしょうか。」
イメージ的にスカーレットは横浜、キンランは大阪という偏見ですが、作者が方言を使えないので言葉遣いはデタラメになります。




