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やきもち?

 「誠、早く部活行こうぜ。」

和馬は放課後、すぐに荷物を持って隣のクラスの佐々木の所へ行った。和馬と角谷が1組、佐々木が2組、朴は6組だ。和馬と角谷が教室を出て、音楽室へ向かう時に2組を覗いたら、佐々木が荷物をまとめる手を止めて友達と話していたので、和馬は佐々木を急がせようと教室の中に入って、佐々木の所へやってきたのだ。角谷は先に音楽室へ向かった。

「おお和馬、迎えに来てくれたのか?」

佐々木は話をやめて荷物をパパっとまとめ、

「さ、行こうぜ。じゃあな、山本。」

と言って和馬の肩に腕を回し、山本に手を振った。その時和馬は、山本がはっとしたように顔を上げ、目を見開いたのを見た。そして彼はこちらを見る。その視線にたじろぐ。だが、佐々木に引っ張られるようにして廊下へ出た。振り返ると、山本はまだこちらをじっと見ていた。

「お前さ、さっきの奴と最近仲いいの?」

和馬が言うと、

「ああ、山本?そうだな。あいつも中学ではサッカー部でさ、サッカーの話とか良くするかな。何なに?やきもち焼いてんのか?」

と言ってニヤニヤしながら佐々木が肘でつつく。

「バカ言ってんじゃねえよ。その逆だろ。さっきのあいつの目・・・」

と、和馬は言いかけて口をつぐんだ。ちょっと涙目で、もの言いたげな、いや、悲しそうな?なんと言えばいいのだろう。

 しばらく、2人は黙って歩いた。佐々木はいつも陽気で、和馬といる時はいつもしゃべっている奴だった。黙って歩くなんて、珍しい。ちらと佐々木の方を見やる。佐々木は少しうつむいて何かを考えているようだった。

「誠、悩みでもあるのか?」

「え?いや、別に。」

それから、またにぎやかにしゃべり始めた佐々木だった。


 音楽室に入ると、角谷が何やら工作をしている。

「正樹、何してんの?」

良く見ると、ドラムセットにタンバリンが括り付けてある。今はグロッケンを何とか括り付けようとしている。角谷は他にティンパニやウィンドチャイムもやらなければならない。パーカッションを一人でやるのだ。実際3人分の楽譜を受け取っていて、何とか一人でやろうと工夫を凝らしているのだった。

「すげーな。」

和馬と佐々木は唖然として眺めた。実際角谷はマリンバ奏者でもあり、ドラムはもちろん叩ける。けれど彼のすごさはそれら全てをいっぺんにやれる事だろう。誰にも真似できない芸当だ。多勢の団体では発揮されることのない能力とも言うべきか。

 朴もすでに来ていて、フルートの練習をしていた。遠野先輩、林田先輩も入ってきて、それぞれ自主練から始まる。

 和馬は、始めたばかりのトロンボーンでメリー・ウィドウの練習を進めた。沢口先生が入ってきて、和馬の所へ来た。

「和馬、だいぶ音が取れるようになったな。」

そう言われて、和馬は笑みを堪えて口を引き結び、頷いた。


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