第四十五話「姫武者」
カルラのキャラクターが中々安定せず、今回は遅くなった上に文字数も少ないです。
「あの……」
え? ……あっ。
しまった。アオと緑光兵様の会話を聞いて考え事をしていたらカルラ様のことをすっかり忘れていた。
無視する形になってすみませんカルラ様。……その、やっぱり退屈でしたか?
「いえ。緑光兵様と青火姫様の会話は非常に興味深くて退屈はしませんでした。それに私、こういうのは馴れていますから」
こういうのは馴れている?
「ええ。お恥ずかしい話なのですけど私、中々こういった会話の仲間に入った経験がないのです。他愛ない会話を楽しんでいる人達を見かけてその中に入れてもらおうと思っても、私が近づいた途端に何故か全員途中だった仕事を思い出して去っていきます。私から話しかけた時も何故か急な仕事を思い出して去っていきます。私の周りにいる方々は仕事熱心な方ばかりなのですが、そのお陰で私は会話をする機会に恵まれず……こういうのを『ぼっち』と言うのですか?」
小首を傾げながら聞いてくるカルラ様。
……ええっと。確かにそれはぼっちだと思うけど、その話の人達は仕事を思い出したというより、話し辛かっただけなんじゃないかな? ほら、カルラ様って神霊と契約した侍、天文帝国の重要人物だし、あと凄い美人だから普通の人だったら気後れするだろうし。というよりカルラ様ってどこまで本気で言っているの?
「………」
ふと緑光兵様を見ると、緑光兵様は苦笑を浮かべて首を横に振っていた。
全て本気で言っているということですか。そして余計なことは言わないようにということですか。分かりました。
『……………』
「なるほどね。要するに天然なのね、この子」
緋乃を初めとするこの場にいる全員が生暖かい目でカルラ様を見て、アオが俺にだけ聞こえる声で呟く。アオ、だから言うなっての。
……あの、カルラ様? もし俺でよかったら話し相手になりましょうか?
「おおっ、それはいいな。姫サマも一人ぐらい同い年の話し相手がいたほうがいいだろ?」
「はい。カズト様が話し相手になってくれると嬉しいです。有名なお菓子職人が作った新作のお菓子を初めて食べる瞬間のように胸が高まります」
緑光兵様の言葉にカルラ様は俺から視線をそらさずに答える。
でも何でここで有名菓子職人の新作……? アオ、これって喜んでくれているってことでいいのか?
「いいんじゃない?」
「それでカズト様? これから私のことはどうぞ気軽にカルラ、と呼び捨てにしてください」
え……!? いや、流石に呼び捨てはまずいでしょ? それよりカルラ様の方こそ俺のことを呼び捨てにしてくれませんか。
「…………………………分かりました。ではお互い『さん』付けでお願いします。これ以上の譲歩は認めません。今でさえ手をつけてないお団子とお茶を譲った気分なのですから」
俺の言葉にカルラ様はたっぷり十秒黙ってから言うが……無表情だけどどこか不機嫌そうに見えるのは気のせいか?
というか今度は団子? よく分からないけどやっぱり怒ってる?
わ、分かりました。これからよろしくお願いします。カルラさ……ん。
「はい。こちらこそよろしくお願いします、カズトさん。……いいですね、この感じ。まるで好きなお菓子を完食してからお茶を飲んだような心地よい達成感です」
……はぁ、そうですか。
これが噂の「姫武者」、東雲・姫翠・カルラ・第五天様。なんというかイメージと全く違うな……。
次回は7月23日に更新する予定です。




