第四十一話「戦闘再開」
俺が放った光の帯の群れが海賊の機甲鎧を捕らえ、機体が光に包まれた瞬間、戦場の時が止まった。
それまで護衛達の機甲鎧と海賊達の機甲鎧が同時に戦いを止めて、図ったような動きで光の発生源、海賊の御手型機甲鎧の方を見る。
『お、終わったの……?』
通信回線から緋乃の呟きが聞こえてきた。
あの海賊の御手型機甲鎧は、まず間違いなく海賊達をまとめている頭だ。今の攻撃で御手型機甲鎧を倒すことができれば、まとめ役を失った海賊達はすぐに瓦解してこの戦いは俺達の勝ちで終わるだろう。
緋乃の呟きからはそうなって欲しいと願う響きがあった。だが……、
「残念。終わってないよ」
アオが緋乃の呟きに答えて光が収まると、そこには両腕を交差させて操縦席がある胴体を防御している海賊の御手型機甲鎧の姿があった。
海賊の御手型機甲鎧は、全身の装甲が破損したり一部溶けたりしていたが、装甲の内部にある機動系や推進系といった機器は無事なようでまだ戦えるように見えた。
『そ、そんな……』
「……ふん」
光の中から被害を受けたものの今だ五体満足の海賊の機甲鎧が現れたのを見て、通信回線の緋乃の声が絶句しアオが不満げに鼻を鳴らした。
どうやら攻撃が当たる直前にZINの障壁を発生させて被害を最小限に抑えてようだな。あの奇襲でも倒せなかったら次はどう戦えば……。
『いや~、今のは流石にビックリしたよ。アンタ、中々やるねぇ』
…………………………………ハイ?
これからどう戦おうかと考えていたその時、通信回線から軽い感じの若い男の声が聞こえてきた。この声って、攻撃が海賊の御手型機甲鎧に当たる時に聞こえた声だよな?
……お前は誰だ? もしかしてその御手型機甲鎧の操縦者なのか?
『ん? そうだけど? というかそれ以外考えられないだろ? この状況だと』
俺の質問にまたも軽い口調で答える若い男の声。本当にこの声の主があの御手型機甲鎧を操っているのか?
『話を戻すけどさっきの攻撃は驚いた。多分アンタの神霊の入れ知恵なんだろうけどそれでもだ。最初はアンタのこと、神霊と波長があっただけの幸運だけの男だと思っていたんだが……今までの戦いぶりを見るには違うようだな。正直見直し……』
「いい加減にしなさい。それ以上カズトを、私の契約者を悪く言うと許さないわよ」
若い男の声を遮り、アオが不機嫌極まりないといった視線を画面に映る海賊の御手型機甲鎧に向ける。
アオの奴、本気で怒ってるな。通信回線から話しかけてくる声の主、御手型機甲鎧の操縦者にも彼女の怒りが伝わったらしく、画面の中の御手型機甲鎧が肩をすくめた。
『あー、ハイハイ。分かったよ。馬鹿にして悪かったよ。正直お前達を甘く見すぎていたわ。……だから』
ガッ! ヴゥン!
通信回線の若い男の声がそこまで言うと、海賊の御手型機甲鎧が再び両腕を交差させ、次に両手が緑色に光出した。
緑色に光出した海賊の御手型機甲鎧の両手には、それぞれ三本の刃が指と指の間に挟まれているのが見える。あれは、あの海賊の神器なのか?
『今からは本気でやらせてもらうぜ』
通信回線から気負った感じのない軽い口調で戦い再開を告げられた。
次回は7月9日に更新する予定です。




