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第三十八話「戦闘開始」

『嘘でしょ!? どうして海賊なんかが御手型機甲鎧なんて持っているの!?」


 海賊の小型航宙艦から御手型機甲鎧が出てくると、航宙艦との通信回線から緋乃の狼狽えた声が聞こえてきた。よほど驚いているのか緋乃の口調は、今まで聞いてきた堅苦しいものではなく年相応の口調となっていた。


 緋乃。あの御手型機甲鎧の情報、何か分かりませんか?


『あっ、はい! その、先程から調べているのですがあの機甲鎧の情報は出てきません。……でもどうして?』


 緋乃の言葉はまさに俺が感じている疑問そのものだ。


 花山先生の授業で聞いた話によると、御手型機甲鎧は乗り手が上位の侍と限定されているため無手型機甲鎧よりもはるかに数が少ない。そして神器を手にした時の御手型機甲鎧の戦闘力は「大装機甲鎧」を除けば天文帝国でも最強であるため、御手型機甲鎧は製造した技術者達の名前から完成後の配属先まで細かく記録されている。


 それなのにあの海賊の御手型機甲鎧は天文帝国のどの記録にも残っていないのだ。


 本当にあいつらは海賊なのか? 天文帝国でも知らない御手型機甲鎧を所有するだなんて、とてもただの海賊団には思えないぞ。


「カズト! 前!」


 ゴォウ!


 アオの声に反応して前を見ると、海賊の御手型機甲鎧が両肩に装備してある可変型噴射器から火を噴かせ高速でこちらに飛んできていた。前方に向けられている両腕はすでに内蔵してある機関砲を展開しており、機関砲の銃口が光ったと思った瞬間、俺はほとんど反射的に機体を左に飛ばした。


 ガガガガッ!


 海賊の御手型機甲鎧の両腕から無数の砲弾が発射され、発射された砲弾はほんの一秒前まで俺がいた空間を通過していく。


 くっ! いきなりかよ!?


『青火姫様! 日善様! 早く! 早く二人を守って!』


 緋乃の悲鳴のような通信が聞こえたらしく護衛の侍達がこちらに向かおうとするが、無手型機甲鎧に乗る海賊達が行く手を遮る。あと気がつけば五隻の小型航宙艦は、俺と護衛の侍達の中間くらいの場所で動きを止めている。


 この配置……あの御手型機甲鎧、俺達と一対一の勝負をするつもりなのか?


「……本当に腹が立つ真似をしてくれるわね。いいわよ。そっちがその気ならやってあげるわよ。カズト、いきましょう!」


 アオが海賊の御手型機甲鎧を憎々しげに見ながら叫ぶ。


 ああ、分かっている。どのみちそうするしかないならやるだけさ。

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