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第三十二話「贅沢な悩み」

 出発時間を迎えた俺達は、専用に用意された航宙艦に乗って学園都市惑星ミチマサから帝星へと旅立った。


 政栄様はまだミチマサでやることがあるらしく、航宙艦に乗ったのは俺とアオに護衛の緋乃、そして航宙艦の操縦士を初めとする少数の乗組員だけだった。航宙艦は三日かけて帝星に到着するようで、それまで俺達が過ごす客室に案内されるとそこはやはりというか、人一人が生活するには十分すぎる生活空間が広がっていた。


 人が五人同時に横になれそうなほど大きな寝台。複数のそれぞれ種類の異なる浴槽を完備した浴室。高級そうなソファーとその横に備え付けられている様々な食べ物や飲み物。


 俺とアオが一週間程過ごした高級宿泊施設を思い出す。航宙艦の内部にある空間であるため広さは宿泊施設に負けるが、備え付けられた家具などは同じくらいの質だと思う。


 ……なんていうか、改めて上位の侍と一般人というのは、生活環境が全く違うのだと思い知らされる。


 俺が最初に学園都市惑星ミチマサに行くときに乗った航宙艦とは天と地の差があるぞ。


「そうなの? カズトが前に乗った船ってどんなのだった?」


 今、この部屋には俺とアオしかいなくて、早速ソファーに寝転がってリラックスしているアオが聞いてきた。


 どんなのって……。広い客室に二、三十くらいの乗客が座る座席があって、あとは共有のシャワーだけの浴室と服を洗濯する部屋があるくらいかな?


「うわ~」


 俺の説明を聞いてアオは露骨にイヤそうな顔をする。だがまあ、その気持ちはなんとなく分かる。


「何だが聞いただけで狭苦しい感じ。そんな所に長い間いたら私、病気になっちゃいそう。というかそれって眠る時とかどうするの? 一つの客室に回りが知らない人ばかりだと落ち着かなくない?」


 うん。その疑問はもっともだ。


 だから座席の回りには不可視の半球体の障壁を発生させる機能があって、眠る時はその障壁を発生させてから座席を倒して寝るんだ。それに座席には色々な娯楽機能があるから、回りを気にすることはあまりないよ。


「ふ~ん。でもやっぱり私はそういうのイヤかな? だからこの航宙艦で旅ができてよかったかも。カズトもそう思うでしょ?」


 まあ、それは確かにな。でもやっぱり落ち着かないというか……。この一週間の豪華な生活で少しは慣れたらつもりなんだけど、長年染み付いた庶民感覚が戸惑いを起こすんだ。


「そうは言うけどカズトは私を宿した、神霊憑きの侍になるんだよ? これからはこの生活が普通になるんだから早く慣れた方がいいよ?」


 ……普通。


 この豪華な生活が「普通」だって?


 少しの間体験するならともかく、これがずっと続くと思うと少し気が重くなる俺は贅沢なのだろうか?

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