第二十四話「視線」
神鳴寺機甲鎧戦術教導院で悪霊獣を退治してから数時間後。俺は車の中にいた。
それもただの車ではなく貴族や政界の要人を護送する特別護送車で、内部は車の中というよりも豪邸の客室といった内装をしており、俺はそこにあるやたらと柔らかいソファーに座っていた。
あの後、五人の侍達に神鳴寺機甲鎧戦術教導院にある応接間に案内された俺は、一時間くらい待たされてから学園やこの星の様々な施設の責任者に挨拶された。そして二、三時間にもわたる長々とした検査を受けさせられ、今は俺の安全を確保するためと当面の宿泊施設とやらに行く最中である。
そこまではいい。確かに神霊を宿した俺を無防備な学園の学生寮に置いておけないお偉いさん方の考えは理解できるのだが、これは少しやりすぎだろうと俺は思う。
窓から外を見ると、空陸両用装甲車が俺が乗っている特別護送車の前方と後方に一台ずつ、左右に三台ずつぴったりと張り付いていて、上空には飛翔戦用機甲鎧が十体飛んでいた。
……なんというかこれって、学生じゃなくてまるで重要人物の護衛だよね? 道の通行人からメチャクチャ好奇の視線で見られているんだが。
「まるで、じゃなくてカズトはもう天文帝国の重要人物なんだって」
宙に浮かんだアオが備え付けられた果物を食べながら言う。というかお前、モノを食べれたんだな。
「うん? 実体化したら食べれるよ? 食べても変換できるZINの量は微々たるもので、あくまで嗜好品扱いだけどね」
それでも食べれるなら言ってくれたらいいのに。例え嗜好品扱いにすぎなくても、食べたいものがあるって言ってくれたら買ってきたぞ?
「……うん♪ カズトってやっぱり優しいね。そういうところが好きだよ♪」
がばっ!
うわっ!? アオ、何でいきなり抱きついてくるんだ。離れろって。
「照れない照れない♪ こんなに可愛いくて高貴な神霊に抱きつかれるなんて栄誉、普通だったらまずあり得ないんだから♪」
自分で自分のことを可愛いとか高貴とか言うか? というか後ろの視線が気になるから本当に離れて。
「………」
俺の後ろには悪霊獣との戦いで俺が助けた、あの機甲鎧に乗っていた侍の女性が立っていた。
侍の女性も俺の護衛として同じ特別護送車に乗っていたのだが、彼女は校庭でのアオと今のアオの違いに目を白黒させていた。でもその気持ちは分かる。あの校庭のアオは俺も本当にアオかと思ったものな。
それにしてもこの侍の女性は一体何なんだろうな? 時おりアオじゃなくて俺の背中に強い視線を向けてきていて凄く気になるんだけど。
「………」
ほら、今も俺を見ているし。何だか落ち着かない。
はぁ、宿泊施設でも何でもいいから早くつかないかな……。




