第二十一話「決着」
新たに作った左手の神器の弓に、右手に持つ神器の槍を矢の代わりにつがえると悪霊獣に向けて狙いをつける。
それでどの悪霊獣から狙おうか? 矢の代わりに放つ神器の槍はアオのZINがある限りいくらでも作れるけど、槍を作るのには少し時間がかかる。ここは慎重にいかないと……。
「ねぇ、カズトカズト」
? どうしたんだ、アオ?
「その神器の槍なんだけど私が言う所に射ってくれない? 上手くしたらあの悪霊獣達、全部やっつけれると思うから」
たった一射で五体の悪霊獣を? そんなことが出来るのか?
俺が聞くとアオは自信ありげな笑顔を浮かべて頷き耳元に顔を寄せた。
「出来るよ。だからカズト、その槍を悪霊獣達……なくて、…………に向けて射ってね」
……………え?
アオ? それで本当に悪霊獣五体を倒せるのか?
「大丈夫大丈夫♪ 私を、貴方の勝利の女神を信じなさいって」
戦いの真っ最中だというのに全く緊張感を感じさせずに笑顔を浮かべるアオ。だが彼女は神霊で、さっきも危なかったところを助けてくれたのだから信じてみてもいいだろう。
俺はそう決めると機甲鎧の外部音声の音量を最大にして、前方で悪霊獣と戦っている五体の機甲鎧達に告げた。
お前達! 死にたくなったらすぐにそこから離れろ!
「何だと貴様! いきなり何を…………っ!」
「ひ、光の弓矢? もしかして神器なのか?」
「……くっ! 全員散れ! 巻き込まれるぞ!」
五体の機甲鎧達は俺が持つ神器の弓と槍を見て一瞬驚いたように機体を硬直させるが、すぐにその場を離れて悪霊獣の姿が視界に現れた。
アオ、射つぞ!
「うん! 射っちゃって!」
バシュ!
アオの言葉を合図に俺は神器の槍を悪霊獣がいる方向の……………………上空へと放った。
『『ええええええええええっ!?』』
槍を空へと向けて放った瞬間、この戦いを見ていた全ての人間が大きく驚きの声をあげた。……うん。それはそうだろうな。
「ふふん♪ 慌てない慌てない♪ ……よし、ばーん♪」
ぱちん。
だがアオは周囲の驚きの声に動じることなく、槍がある高さまで到達したところで指を鳴らした。その瞬間……、
バァン!
空高くに放たれた神器の槍が空中で破裂し、無数の光の雨となって悪霊獣達に降り注いだ。
ガガガガガガガガガガガガガガガッ!!
『……………!!』
降り注いだ光の雨は五体の悪霊獣の全身を貫き、悪霊獣は瞬く間に青い炎に包まれて、やがて跡形も残さずにこの世から消滅した。
……終わった、のか?
「うん♪ もう悪霊獣の気配はないし、私達の勝ちだよカズト♪」
そうか……勝ったのか。
微笑みながら言うアオの言葉に俺は機甲鎧の操縦席の中で大きく息をついた。……疲れた。勢いで戦いに出たのはいいけど本当に疲れた。




