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第十三話「無手型機甲鎧と御手型機甲鎧」

 昼休みが終わると俺達の教室は専用の送迎車に三十分ほど乗って神鳴寺機甲鎧戦術教導院へとやって来た。


「おおー! ここが戦術教導院か」


 神鳴寺機甲鎧戦術教導院の校舎を見て修理が興奮した声をあげる。


 校舎は俺達の学園とよく似ているな。あっ、校庭で機甲鎧が歩いている。


「本当だ。新入生の歩行訓練か? あれ?」


「はいはい。皆さん注目してください」


 俺達が校庭の機甲鎧を見ていると花山先生が手を叩いて注目を集める。


「いいですか。今日皆さんは、学園の格納庫で機甲鎧の整備をしている先輩達の作業を見学をしてもらいます。授業が進めばいずれ皆さんにも先輩達と一緒に機甲鎧の整備をしてもらいますから、しっかりと見学してくださいね」


「はい!」


 花山先生の言葉に修理が今まで聞いたことがないくらい元気がいい声で返事をして、それに花山先生だけでなく教室の皆が苦笑すると、俺達は学園にある格納庫へと向かった。


 格納庫に入るとそこには三体の機甲鎧の姿があり、機甲鎧の周りでは俺達の先輩である神鳴寺機甲鎧整備教導院の生徒達が本職の整備士の指示を受けながら作業をしていた。


「おおっ、機甲鎧をこんなに間近で見たのって俺初めて……って! お、おい、カズト。あれ見てみろよ」


 修理が三体の機甲鎧のうち、一番奥にある機甲鎧を指差す。


 あの機甲鎧がどうかしたのか?


「何寝ぼけたこと言ってんだよ。あの機甲鎧の腕見ろよ、腕」


 腕って……あっ、あの機甲鎧の腕……「手」がある?


 よく見てみれば格納庫にある三体の機甲鎧のうち二体は腕と武装が一体化している外見なのに、修理が指差した一体だけは腕に人間と同じ「手」があった。


「分かったろ? あの機甲鎧、『御手型機甲鎧』だぜ、絶対」


 機甲鎧は大きく分けて「無手型機甲鎧」と「御手型機甲鎧」の二つに分けられる。


 無手型機甲鎧は腕が武装と一体化した、文字通り手が無い機甲鎧だ。


 何故機甲鎧の腕と武装を一体化させたのかというと、それは機甲鎧の手、人間の手と同じ外見をしたマニピュレーターが非常に繊細で脆く、戦闘には不向きだからだ。もし機甲鎧の手に剣や銃等の武器を持たせて使わせたら、武器を振るった反動だけで機甲鎧の手は使い物にならなくなるだろう。


 そのため天文帝国は両腕に汎用性のある複数の武装を一体化させた無手型機甲鎧を開発し、天文帝国にある機甲鎧のほとんどはこの無手型機甲鎧だったりする。


 そして御手型機甲鎧は腕が武装と一体化していない、文字通り手がある機甲鎧だ。


 両腕が武装と一体化していない分、一見無手型機甲鎧よりも戦闘力が低そうに見えるが、実際には御手型機甲鎧の方が無手型機甲鎧よりも遥かに戦闘力が上だったりする。


 その理由は御手型機甲鎧には「神器」と呼ばれるZINによってできた武装を操る機能があるからだ。神器は重さが無いために機甲鎧の手でも充分に扱える上に、威力も従来の兵器の比ではなく、天文帝国でも最強の兵器とされている。


 だが神器を造り出すには大量のZINが必要で、その為御手型機甲鎧に乗ることができるのは一握りの精鋭、上位の侍のみとされていた。


「御手型か……。ここにある三体の中でカズトが乗るとしたらこの機甲鎧が一番だね」


 今まで姿を見せなかったアオが突然現れたかと思えば、御手型機甲鎧の方を見ながら変なことを言い出した。


 おい、アオ。いい加減しろよ。俺は侍にはならないって何度も言っているだろ?


「うん。知っている。……でもカズト。今だけは乗った方がいいよ」


 ……アオ?


 アオの様子がいつもと違うことに気づいた俺が、それはどういう意味だと彼女に聞こうとした時……、


 ヴィーッ! ヴィーッ! ヴィーッ!


 格納庫の中に警報が鳴り響いた。


「警報? 一体何だ?」


 格納庫内に鳴り響く警報に修理が辺りを見回しながら言うと、アオは修理の疑問に答えるかのように呟いた。


「決まってるじゃない。悪霊獣だよ」

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