表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
八刃列伝  作者: 鈴神楽
第二期
14/22

最強と呼ばれた男

焔の苦悩の終奥義開発秘話

 大草原、周りには、何も無い空間。

 そこに不思議な集団が居た。

 一人は、ガンマン。

 一人は、剣士。

 一人は、拳法使い。

 一人は、怪しげな女性。

 その四人と相対する何処にでも居そうな中年男性。

 ちなみにその中年男性の職業は、格闘技等に関する著書を持つ作家である。

 もしも、この対戦がなされると聞いた場合、この男性が勝つ方に賭ける人間は、居ないだろう。

 しかし、世の中は、不思議で満ち溢れているのであった。



 最初に動いたのは、剣士、一文字剣一郎だった。

 居合いの構えをとると、決して刀身が届かない状況に関わらず、居合いを放つ。

 男性が空中に飛び上がると男性の後ろにあった樹木が切断されて居た。

 そこにガンマン、ホープのマグナムがうなる。

 連続されて発射される弾丸は、男性がいかなる動きをしても逃れられない軌道を進んでいた。

『アレスグローブ』

 男性がそう言ったと思うと素手で、弾丸を受け流してしまう。

 受け流された弾丸は、ぶつかり合い、普通の弾丸では、考えられない大爆発を起こす。

 その煙を切り裂く光が走る。

 特別に作られた糸が全方向から男性を狙う。

 怪しげな女性、糸使いのユリーアの攻撃である。

 男性は、一番糸が集まっている所に腕を伸ばして、強引に掴むとそのまま引張り、反動をつけて僅かに出来た隙間から抜け出す。

 そんな空中で体勢も整えられない男性に糸を足場に近づいてくるのは、拳法使い、地龍である。

 研ぎ澄まされた拳の一撃が男性に決まろうとした。

『ドロップイカロス』

 男性がそういうと、急激に引力が強くなったように男性が地上に落下していく。

 地龍も地上に着地しようとした瞬間、男性は、地面を蹴りつける。

『タイタンサークル』

 地面が陥没し、着地のタイミングがズレ、ほんの僅かな隙が地龍に生まれた。

 その瞬間、男性の拳が地龍の体にめり込む、そのまま地面に叩き付けられた。

 この間、本当に刹那の時間で、ホープが弾丸を装填し、剣一郎が刀を鞘に収め終わったばかりであった。

 男性は、すぐさま剣一郎に向かう。

 剣一郎の抜刀が行われる。

 剣一郎の抜刀は、長い鍛錬と血統の中で生み出された強力な気を刀身の延長に利用している。

 その間合いは、少なくとも視線が届く範囲には、有効な程である。

 そんな気の刃をかわす男性、しかし剣一郎もかわされる事を前提に放った一撃。

 実の刃による二の太刀が焔に迫っていた。

 だが、その刀が振り切ることは、無かった。

 男性は、刀の根元を掴み、振り切るのを止めたのだ。

 刀は、刀身の中でも斬れる場所が決まっている。

 それを外された場合、その威力は、激減する。

 それでもそんな真似を常人がすれば、鋼を越す合金の刃に手が砕かれて居ただろうが、男性の手は、最初の技で強化されていた。

 刀が封じられた剣一郎の首筋に男性の蹴りが決まり、戦線離脱する。

 至近距離に迫った男性にホープは、連射をする。

 男性は、弾丸の見切りを発動し、全てをかわす。

 ホープも男性以外の相手をする場合なら、弾丸に籠めた気を利用して、軌道をずらしたり、途中で気を爆発させたりさせただろう。

 それが、拳銃など、通用しないと言われる人を超えた者達の戦いで勝ち続けるホープの力である。

 だが、男性には、そんな中途半端が通用しないのは、解っていたホープは、気の力を収束させ、男性に解き放つ。

『ラストショット』

 それは、要塞すら貫こうとする威力が篭っていた。

『カーバンクルパラソル』

 しかし、男性は、それを受け流してしまう。

 そのまま接近した男性の一撃でホープも戦闘不能になる。

 そして、男性が見るとユリーアは、両手をあげる。

「大人しく負けを認めますわ」

 その一言に男性が背を向けた瞬間、地面に仕込ませてあった糸が一斉に男性を襲う。

『アポロン』

 男性が両手を揃えた時、爆発的な熱が発生して糸を弾き飛ばす。

 振り返った男性にユリーアが肩をすくめる。

「今度こそ本当に降参です」

 頷く男性。

 彼の名は、白風焔ホムラ、最強の鬼神と呼ばれる、八刃の一家、白風の長である。



 オーフェンハンター、それは、焔が作り出した、八刃に敵対する異邪とのハーフの一団を狩り出す組織。

 そこには、かつてバトルと呼ばれていた焔自身も参加していた非合法の賭け試合の闘士達が多く参加している。

 先ほどのメンバーもその闘士達である。

 そんな中、複雑な事情で、オーフェンハンターに所属する、脳を強化改造された少年、シシが言う。

「ホープさん達は、間違いなく超一流。八刃の本家の人達ですら、勝てる人間は、殆ど居ない兵。その四人同時に相手をして、圧倒するなんて、正直しんじられません」

 その言葉に焔は、悲しそうに告げる。

「どれだけ強かろうが、それを発揮できなければ意味が無い。私は、一番、八刃としての運が無い人間なのだろう」

 いきなりの言葉にシシが驚く。

「運が無いというのは、どういう意味ですか?」

 焔が質問で返す。

「八刃にとって一番大切な事は、なんだと思う?」

 シシは、少し考えてから答える。

「異界から来た邪悪な者、異邪を排除する事ですか?」

 焔は、首を横に振る。

「違う。それは、手段でしかない。一番の目的は、大切な者を護る事だ。私は、妻が危険な時にそばに居られず死なせ、娘が男に襲われた時も助けられなく、その娘が何度も死に掛けている時に助けが間に合ったのは、数えられるだけだ」

 複雑な顔をするシシに焔は、続ける。

「そういう意味では、私は、実の娘に嫉妬している。大切な人間が危ない時に常に前に出て戦い続けて居る。それが出来る運命にな」

 シシは、沈黙の後に質問した。

「それでしたら、ヤヤさんの傍に居られたらどうなのですか?」

 苦笑する焔。

「娘がそれを望んでいない。あれは、もう私の手から巣立ってしまっている。全ては、大門良美という親友のおかげだ。私が出来ることなど、娘に危険を及ぼすだろうオーフェンを潰すために動くことくらいだ」

 シシが悲しそうな目をして言う。

「後悔をしているのですね?」

 強く頷く焔。

「傷ついた娘にどう接して良いか解らず、父親の知り合いに預け、危険だと解っていてもバトルに参加する事を許した。言い訳は、出来る。あの頃の娘は、ああでもしてなければ壊れていた。しかし、それでも、私は、父親として傍にいるべきであった」

「後悔は、無意味だと思います」

 シシの辛辣な一言に苦笑する焔。

「その通りだ。後悔などしても、娘の辛かった過去が消えるわけでもないからな。ただ一つ望むのは、娘が本当に危険な時に代わりに戦える運命が欲しい」

 するとシシがいう。

「運命をどうかする事は、出来ません。しかし、巡り合ったそれを逃さないようにする事は、出来るのでは、ないでしょうか?」

 焔が驚いた顔をする。

「そうだな。いい事を教えてくれた。確かにそうだ。数少ないチャンスを確実に掴み取るための手段が必要だな」

 シシが頷く。

「きっと、その時は、ヤヤさんが敵わない強敵、正面から戦うだけならともかく、逃走を図られる可能性も高いです。なぜならば、貴方は、最強の鬼神なのですから」

 焔が舌打ちする。

「邪魔な称号だったな。我ながら、無駄な事に拘っていた」

「強力な力を持つ者を逃がさないでおく事は、至難の業だと思われます。しかし、不可能では、無いはずです」

 シシの指摘に焔が頷く。

「そうだな。何か手がある筈だ」

 そして、シシが席を立とうとした時、焔は、一枚の小切手を差し出す。

「これは、今の助言に対する報酬だ」

 その金額を見てシシが手を横に振る。

「こんな大金を受け取れません」

 そんなシシに対して焔が言う。

「自分の寿命くらい計算が出来ているだろう」

 沈黙するシシ。

「私みたいに後悔をしない為に、使ってくれ」

 焔の言葉に頭を下げるシシ。

「ありがとうございます」

 そんなシシに焔が真剣な顔で言う。

「小較との結婚は、別だ。一人前と認めるまでは、許さんぞ」

 シシが顔を引きつらせて言う。

「努力させてもらいます」

 こうして、シシは、オーフェンハンターを辞めて、自分のやりたい事を開始する。



 焔の新たな技の開発は、困難を極めた。

「駄目だ! これでは、神と言われるレベルの異邪には、通用しない!」

 何重にも張り巡らされた結界と魔方陣。

 常人どころか、魔王と呼ばれる者たちでも動くことは、難しいだろう。

 しかし、焔が求めるのは、更なる確実性であった。

「物理法則すらまったく通用しない連中相手に確実な足止めをする方法は、ないのか!」

 何千何万の魔方陣の組み合わせを試す焔。



「神器に頼った所で、これが限界か!」

 焔は、様々な神器を入手しては、相手を逃がさないようにする結界発生装置に組み込んだが、その成果は、あまり出ていなかった。

「固定型なら、まだ可能性がある。しかし、それでは、いざと言う時に使えない。どうにか出来ないのか?」

 自ら生み出した結界発生装置を叩き壊す焔。



 その後も、何年も様々な実験を行ったが望んだ通りの結果は、得られなかった。

 煮詰まっている焔。

「上手くいっていないみたいね」

 魔方陣に関しては、この世界で最高と呼ばれる少女、間結闇が声をかけてきた。

「すいません。貴女にも色々協力を頂いていると言うのに……」

 悔しそうにする焔。

 闇は、簡単な魔方陣を描きながら言う。

「こんな物は、所詮は、補強でしかない。補強に補強を加えて、どうにか自分より強い者に通じるようにしている。ところで魔方陣や結界で一番大切な事って何だか解る?」

 焔が即答する。

「その場と相手に合った物を選ぶことです」

 頷く闇。

「そう。それで、貴方は、何を相手にしようとしているの?」

 焔が苦笑する。

「解っています。自分が相手をしているのは、自分より強いというだけで、掴み所もない上に、使う状況ですら解っていないって言うことをくらい」

 それに対して闇が首を横に振る。

「違うでしょ。解っている筈よ。相手が何かも、使う状況も」

 それを聞いて焔が戸惑う。

「それは、どういう意味ですか?」

 闇が答える。

「相手は、常に引けない状況にある。そうでない限り、八刃の長と戦おうなんて思うわけない」

 焔も気付いた。

「詰まり、相手も戦うことを望んでいると言う事ですね」

 闇が頷き、焔が言う。

「儀式魔法、相手が命懸けで戦っている覚悟を契約とし、生み出した決闘の場で最後の一人になるまで戦い続ける様にすれば良い」

 闇は、真剣な顔で言う。

「勝ち残らなければ、意味が無いわよ」

 焔が頷く。

「その為に力を磨き続けました」



 この闇とのやり取りの後、焔は、自らが生み出した白風流撃術の終奥義『ハルマゲドン』を完成させるのであった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ