第四話 舞とご飯
第四話です!よろしくお願いします!
走る、走る、走る。
朝から走ってばっかりだ。
幸い、体力的には人より優れている自信があったのでそれほど辛くないと思ったが…。
さすがにきつい。
走る速度を落として、歩き始めると後ろから怒号が飛んできた。
「歩かない!思っているよりもハードな舞なのですよ!」風夏はどうやら、舞の特訓の事となると人が変わるらしい。
たまにいるよなぁ…なんかの拍子に性格が変わる人…。
「千歳、舞のことを聞いたようだね」
白狐が優雅な歩き方でこちらに向かってきた。
「おはようございます」
「おはよう。なぁ、風夏少しキツすぎるんじゃないか」千歳は白狐のありがたい一言に何度も頷く。
「白狐様…舞はとても大変なものなのですよ」
「それは承知している。この間までは僕が踊っていたからね」
「そうなのですか!?」
千歳は驚きでつい大きな声を出してしまった。
「鍾愛の娘がいない期間は誰かが代わりに踊らなければならないし、踊った時に鍾愛の娘と同じ効力が得られるのは僕くらいしかいないから」
それでも、と白狐は続けた。
「千歳はここに来るまでのあの光の音に耐えたんだ。体力と耐性はあるだろう」
「耐性…?」
光の音に耐えるとはどういうことなのだろう…。
「この話はまた今度にしようか。情報量が多くて混乱してるだろ?」
まさにその通りだった。
知らない単語ばかり並べられて頭がショートしかけている。
千歳としては助かる配慮にお願いします、と返した。
「確かに…。それなら、今日はここまでにしますか」
「ありがとうございます!」
地獄が終わった安堵で千歳は地面に座り込んだ。
思ったより、消耗している。
「千歳、大丈夫?」
「足がちょっと…」
「抱えていい?」
「え、はい…?」
あまり力がなさそうな見た目に反して軽々と千歳を持ち上げた。お姫様抱っこはやはり定番なのか、そのまま屋敷の方へと向かう。
「昼ご飯を用意させてるからたくさん食べな」
「ありがとうございます」
こちらの世界の、しかも神様の家の料理とはどんなのだろうか。結構期待できそうだと、千歳は内心ワクワクしていた。
食事をとる部屋にお姫様抱っこをしたまま連れて行かれると、目の前に広がるご馳走に普段あまりたくさん食べれないお腹がなった。
「たくさんあるからこの中からでも好きな料理を見つけるといい。教えてくれたらそれを優先的に出そう」
「ありがとうございます!」
ここに来る前は栄養が取れれば十分なような生活をしていた。
こんなに味にこだわったもの食べたことがない。
早速席について食べようと思ったが、さすがに家主よりも先に食べることは憚られる。
食べないのだろうかと見ていたが、白狐の前に料理が運ばれることはなかった。
「白狐様は食べないのですか?」
「僕は人間に必要な行為をしなくてもいいんだ」
その行為とは、食事や排泄のことなのだろう。
「そうなんですか」
「気にしないで食べていいよ」
「それなら、いただきます」
まず、一番に牛肉の炒め物に目がいった。
牛肉なんて、滅多に食べたことがないのに…こんなに分厚いなんて…。
感動しながら、よだれが口の中から溢れそうだった。
さすがに勢いづいては食べれないな、とゆっくりと噛み締めながら食べる。
肉の旨みと油が舌の上で踊っているようだった。
飲み込んでも、後味が美味しくて他の料理に手がつけられない。
「そんなに美味しそうに食べてくれるなんて、うちの料理人も嬉しいだろうね」
「ものすごく美味しいです…!」
「良かった、良かった」
その後に食べた、汁物やただの白米も今までに食べたこともないような美味しいものに感じた。
こんな料理を食べられるのなら、あの辛い舞も我慢できるだろうと思ったのだった。
つづく




