HAMBURGER BLUES第6話前編銀河ツーリングと走るWAGYBURGER ドンドドンドンドンッ風と酒とVツイン
HAMBURGER BLUES第6話 前編銀河ツーリングと走るWAGYU BURGER― ドンドドンドンドンッ 風と酒とVツイン ―
ベラ地区の朝は遅い
夜が完全に死ぬまで
誰も朝だとは認めない
ネオンが薄れ始め
空中鉄道の振動音が遠くを流れ
WAGYU BURGERの裏口が静かに開く
beem
今日は店を飛び出そう
Walker
珍しいな
肉の研究室から出てくるとは
beem
肉にも旅があるからね
Walker
また始まった
bads
ねぇ見て
今日の髪どう
昨日まで銀だったけど今日は少しベージュ寄りにしたの
このジャケットと完全に合わせてるの
感想
今すぐ
五秒以内
cool
……朝から平和ですねぇ……
Walker
圧が暴力なんだよ
beem
似合ってるよ
bads
当然でしょ
私は今日のベラで一番美しい存在なんだから
Walker
毎日言ってる
bads
毎日更新してるから
店の奥
四台の機械が静かに眠っている
近未来のスクーター型フレーム
だが
心臓部には七百年前のVツインエンジン
電子制御文明以前の狂気
ベラ地区最後の遺産
ドンドドンドンドンッ
ドドンドンドンッ
を鳴らすためだけに
現代まで受け継がれてきた怪物たち
beemの愛車
艶消しブラック
余計な装飾は一切ない
露出した巨大なVツインだけが美しく主張している
黒いレザーシート
傷ひとつ無い磨き上げられた排気管
beem
古いエンジンほど時間が宿るんだよ
熟成肉と同じさ
Walker
全部肉に繋げるのやめろ
Walkerの愛車
ダーティブルー
新品では絶対に出せない色
傷も汚れもそのまま残してある
必要以上に磨かない
必要以上に飾らない
Walker
壊れないのが一番美しい
思想より実用
でも思想を捨てた実用はただの工具だ
beem
良いこと言うねぇ
bads
地味
coolの愛車
カーキグリーン
軍用品みたいな無骨さ
車体には誰も聞かない傷跡
beemだけが静かに理解している
七百年前のVツインは
他の誰より低く唸る
cool
……長い付き合いですぅ……
……こいつだけは裏切らないですぅ……
Walker
朝から重い
そして
bads
ベージュモデル
唯一
茶色のダイヤキルトレザーシート
ファッションに合わせ毎月張り替えている
ヘアリア最新流行色
移動手段ではなく
歩くアクセサリーの延長
bads
服と合わないバイクとか意味ある?
Walker
ある
bads
ない
Walker
ある
bads
絶対ない
beem
両方正しいね
Walker
店長はすぐ逃げる
全員がヘルメットを被る
朝焼けがネオンを薄め始める
beem
じゃあ行こうか
星降り草原マーケットへ
野外出店だ
ドンドドンドンドンッ
ドドンドンドンッ
ドンドドンドンドンッ
ドドンドンドンッ
ドンドドンドンドンッ
ドドンドンドンッ
ドンドドンドンドンッ
ドドンドンドンッ
四台が同時に目覚める
ベラ地区の住民たちは振り返らない
この音は日常だから
Walker
行くぞお前ら
置いてくぞ
bads
待ちなさいよ
写真撮るから
私の角度決まってない
cool
……平和ですねぇ……
beem
旅の始まりには少し時間が必要なんだよ
肉を焼く前も同じだ
Walker
また肉
本当に脳が牛で出来てるんじゃないのか
ドンドドンドンドンッ
ドドンドンドンッ
四台はベラ中央環状道路へ飛び出す
濡れた路面
紫のネオン
高層建築の谷間
浮遊広告
空中鉄道
遠くに見えるヘアリア方面の白い塔
bads
最高ぉぉぉぉぉぉぉ
風で髪が踊るぅぅぅぅ
Walker
三分で五回目だぞ
bads
今日の私は特別だから
cool
……風って優しいですねぇ……
beem
風にも味があるんだよ
Walker
もう黙れ肉宗教家
途中
酒屋へ寄る
当然のようにテキーラを買う
Walker
運転するんだぞ
beem
少しだけ
cool
少しなら大丈夫ですぅ……
bads
景色が綺麗になるの
Walker
終わってる
全員終わってる
乾杯
ガラス瓶が鳴る
beem
旅っていいね
Walker
急にどうした
beem
肉も人も
待ってるだけじゃ駄目なんだ
こちらから会いに行かなきゃいけない
Walker
……たまに格好いいこと言うな
bads
私も格好いい?
Walker
聞くと思った
bads
早く
五秒以内
cool
……似合ってますぅ……
bads
やっぱりクールだけよ
Walker
単純すぎる
ドンドドンドンドンッ
ドドンドンドンッ
四台は再び走り出す
風
酒
エンジン
七百年前の鼓動
ベラ地区の空気
全部を身体で受け止めながら
そして誰も知らない
この先の星降り草原で
とんでもない事件が待っていることを
だが今だけは
ただ走る
ただ笑う
ただ
今日という日を味わう
ドンドドンドンドンッ
ドドンドンドンッ
――続く




