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HAMBURGER BLUES  作者: ハンバーガーブルース


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HAMBURGER BLUES第1話存在論とダブルチーズバーガー

HAMBURGER BLUES第1話存在論とダブルチーズバーガー



カラン


カランカラン


夕方のベラ地区は、

ネオンの色が少しだけ柔らかくなる時間だった。


WAGYU BURGERには、

今日も誰もいない。


正確には、


客だけがいない。


店員は全員いる。


騒音もある。


平和だけが存在していなかった。


「……塩を〇・二グラム減らした方が、

肉の旨味は第三段階へ到達するんだよ」


店長beemは、

誰にも聞かれていない話をしていた。


「店長、

第三段階って何ですか」


Walkerが即座に反応する。


「宇宙」


「説明を放棄するな」


「肉は説明じゃないんだ」


「始まった……」


coolはソファで半分寝ていた。


「ねぇねぇねぇ」


badsが突然立ち上がる。


「前髪どう?」


「切った?」


「気付かなかった?」


「誰も何も言わないの?」


「冷たい」


「人類って本当に冷たい」


「まだ一分しか経ってないだろ」


Walkerが吐き捨てる。


「いや、

でも今日は左右非対称を意識したんだけど」


「宇宙も左右非対称だからね」


beemが肉をこねながら答える。


「店長、

何でも宇宙に繋げるのやめてください」


「全部繋がってるんだよ」


「始まった」


coolが再び眠る。


その瞬間だった。


カラン


カランカラン


全員が入口を見る。


そこに立っていたのは、


銀色のローブを身に纏った二人のエルフだった。


金の装飾。


高価そうな指輪。


無駄に長い睫毛。


無駄に上品な歩き方。


見るからに金持ちだった。


「ほぉ」


片方のエルフが鼻で笑う。


「ここが噂の庶民向けハンバーガー店か」


「想像より文明的ですわね」


もう片方が言う。


「失礼ね」


badsが即答する。


「まだ何も言ってませんわよ?」


「顔が言ってる」


Walkerも加わる。


「階級意識が滲み出てます」


「えぇ?」


「恐ろしいですわ」


「我々はただ、

黒城中央区から視察に来ただけですのに」


「視察って何」


beemが肉を持ったまま聞く。


「食文化の確認ですわ」


「下層区域にも、

最低限の味覚文化が存在するのか」


店内が静まり返る。


一秒。


二秒。


三秒。


「帰れぇぇぇぇぇぇぇ!!」


coolが突然起き上がり絶叫した。


「ひぃっ!!」


エルフ達が飛び上がる。


「落ち着いてください」


Walker。


「お客様です」


「客だろうが関係ねぇ!!」


「今日は機嫌が悪いんです」


bads。


「昨日、

哲学書を三冊読まされたので」


「哲学は暴力なんだよぉ……」


cool。


再び眠る。


「とりあえず」


beemが微笑んだ。


「何食べる?」


「……」


二人のエルフは顔を見合わせる。


「では」


「最も高価なものを」


「金額に意味はないよ」


beem。


「意味があるのは肉だけ」


「店長、

また始まった」


Walker。


「肉はね」


beemは静かに語り始める。


「草を食べる」


「草は太陽を食べる」


「太陽は宇宙を燃やしている」


「つまり」


「ハンバーガーとは、

宇宙を一口サイズに圧縮した芸術なんだ」


「はぁ?」


Walker。


「いや、

理屈として成立してるのが腹立つ」


bads。


「前髪の話に戻っていい?」


cool。


「……すぅ……」


エルフ達。


「…………」


「面白い店ですわね」


「正気ではありませんわ」


十分後。


テーブルの上には、


WAGYU DOUBLE COSMOS BURGER


が置かれていた。


香りだけで、

空気が変わる。


エルフ達は静かに一口食べる。


沈黙。


二口目。


三口目。


さらに沈黙。


やがて、


片方が涙を流した。


「……これは」


もう一人が呟く。


「存在とは、

固定された概念ではなく」


「絶えず更新される味覚体験だったのですね」


Walkerが吹き出す。


「おい」


「哲学始めんな」


beemは笑う。


「分かった?」


「えぇ」


エルフは頷いた。


「富では買えないものがありますのね」


「あるよ」


beem。


「研究」


「時間」


「愛情」


「そして、

少しだけ頭のおかしさ」


全員が頷く。


coolだけ寝ている。


カラン


カランカラン


帰り際、


エルフ達は深々と頭を下げた。


「また来ますわ」


「次は、

存在論ではなく」


「トリプルチーズバーガーについて学びに」


「歓迎するよ」


beemが笑う。


扉が閉まる。


静寂。


三秒後。


「ねぇ」


bads。


「結局、

今日の髪型どうだった?」


「まだその話!?」


Walker。


「左右非対称って、

存在論的にはあり?」


beem。


「肉の左右差は重要だよ」


「うるせぇぇぇぇ!!」


店の外まで、


笑い声だけが流れていった。






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