HAMBURGER BLUES第7話 税務局と違法ピクルス摘発事件
HAMBURGER BLUES第7話 税務局と違法ピクルス摘発事件
カランカラン
beem「朝の空気はいいな」
Walker「店長それ朝じゃなくて夕方です」
beem「時間とは観測者の塩分濃度によって変化する」
Walker「急に狂わないでください」
bads「ねえ見てこの新しい銀河繊維ジャケットどう思う」
cool「いいですねぇ」
Walker「三分前にも聞きましたよね」
bads「その時は正面だったの 今は横」
Walker「観測条件が変わっただけで本質同じです」
beem「いや違う」
Walker「店長まで乗るな」
beem「肉も同じ牛から取れるが部位で哲学が違う」
Walker「また始まった」
cool「まぁまぁ」
ドドンドンドン
ドドンドンドン
ドドンドンドン
Walker「外うるさ」
bads「戦争」
cool「祭りですかねぇ」
beem「いや」
静かにコーヒーを置く
beem「税務局だ」
全員「は?」
カランカラン
ギィィィィ
銀色の制服
胸元に輝く七重の計算機紋章
三人の男と一人の女
全員眼鏡
全員無表情
全員タブレットを持っている
中央の男が言う
税務官「銀河税務局 食品監査第三課」
税務官「並びに発酵食品管理局」
税務官「違法ピクルス摘発班です」
店内沈黙
二秒後
全員同時に喋る
bads「誰が違法よコラァァァァァァ」
cool「まぁ落ち着きましょうよぉ」
Walker「摘発班って何ですか戦争でも始める気ですか」
beem「ピクルスに合法と違法があるなら宇宙に善悪も存在しない」
税務官「静粛に」
bads「うるせぇ」
税務官「本店は独自発酵ピクルスを使用しているとの情報があります」
Walker「ええ」
税務官「銀河発酵管理法第八百二条」
税務官「酸度指数」
税務官「糖度指数」
税務官「乳酸菌登録番号」
税務官「漬け込み期間」
税務官「全て申告していますか」
beem「してない」
Walker「即答するな」
税務官「違法ですね」
beem「違う」
店内の空気が変わる
beem「哲学を理解していない」
Walker「始まった」
beem「ピクルスとは何だ」
税務官「発酵野菜です」
beem「違う」
税務官「違いません」
beem「違う」
beem「ピクルスとは時間そのものだ」
Walker「店長もう少し法律寄りでお願いします」
beem「キュウリが酢に浸かる」
beem「塩が浸透する」
beem「乳酸菌が宇宙と対話する」
beem「それは生命と時間の融合だ」
beem「誰が税金を課せる」
沈黙
税務官「銀河政府です」
Walker「強い」
cool「負けましたねぇ」
bads「いや負けてねぇよ」
税務官「発酵期間を申告してください」
beem「二十三日」
税務官「規定は二十日以内です」
全員「は?」
Walker「三日で違法になるんですか」
税務官「はい」
bads「頭おかしいだろ」
cool「法律って怖いですねぇ」
税務官「三日超過した発酵物は」
税務官「高級食品税」
税務官「時間付加価値税」
税務官「乳酸発展税」
税務官「計三十二パーセント」
Walker「乳酸発展税って何」
税務官「文明維持費です」
Walker「絶対嘘だろ」
その瞬間
beemが静かに冷蔵庫を開ける
ガラス瓶
透明な液体
黄金色のピクルス
beem「見ろ」
店内静寂
beem「二十三日」
beem「これは二十日では到達できない」
beem「二十一日でも」
beem「二十二日でもない」
beem「二十三日だけが持つ宇宙がある」
税務官「法は絶対です」
beem「味はもっと絶対だ」
Walker「うわ出た」
bads「言ったれ店長」
cool「いいですねぇ」
税務官「我々は押収します」
bads「触んなァァァァァァァ!!」
ドン
机が揺れる
Walker「落ち着け」
bads「私あれ好きなのよ!!」
cool「僕も好きですねぇ」
beem「誰にも渡さん」
税務官「抵抗は違法です」
Walker「いやピクルスに対する熱量が国家転覆レベルなんですが」
税務官「最後に確認します」
税務官「提出か」
税務官「罰金か」
beem「第三の選択肢がある」
Walker「嫌な予感しかしない」
beem「食え」
全員「は?」
beem「食って判断しろ」
税務官「公務中です」
beem「法律は味覚を持たない」
beem「人間だけが持つ」
沈黙
cool「いいこと言いますねぇ」
Walker「悔しいけど」
bads「食えよ」
税務官たち
静かに席に座る
beem
厨房へ
ジュゥゥゥゥゥゥ
肉の音
香り
炎
酒
哲学
狂気
全てが混ざる
完成した
新作
名前
【合法性を超えた二十三日熟成ピクルス・コズミック・ダブル】
Walker「長ぇよ」
beem「必要な長さだ」
税務官たち
食べる
静寂
一口
二口
三口
突然
税務官長が泣き出す
税務官長「母を思い出しました」
Walker「急展開」
女性税務官「二十三日必要です」
別の税務官「二十日は浅い」
最後の税務官「法が間違っていました」
bads「ほら見ろ」
cool「平和ですねぇ」
税務官長
立ち上がる
帽子を取る
税務官長「本日より」
税務官長「銀河発酵管理法を改正提案します」
Walker「そんな権限あるんですか」
税務官長「ありません」
Walker「ないんかい」
beem「それでいい」
税務官長「なぜです」
beem「哲学も法律も」
beem「結局は誰かが最初に無茶を言うところから始まる」
沈黙
全員同時に笑う
ハハハハハハハハハ
ギャハハハハハ
最高だろォォォ!!
意味わかんねぇ!!
酒持ってこい!!
テキーラァァァ!!
cool「朝までですかねぇ」
Walker「絶対そうなる」
カランカラン
税務官たちが帰る
最後に振り返る
税務官長「二十三日」
beem「二十三日だ」
税務官長「また来ます」
beem「次は客として来い」
扉が閉まる
静寂
三秒後
bads「勝ったァァァァァ!!」
cool「乾杯ですねぇ」
Walker「結局法律変わってないですけど」
beem「問題ない」
Walker「なんで」
beem「もし摘発されても」
beem「またハンバーガーを食わせればいい」
Walker「国家運営を料理で解決しようとするな」
cool「でも出来そうですねぇ」
bads「出来る」
beem「出来る」
Walker「お前ら本当に」
全員同時に
「乾杯ィィィィィ!!」
そしてベラ地区の夜は
今日も騒がしく
美味しく
少しだけ法律を無視しながら続いていくのであった
──第7話 完──




