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第六話「親友と再会しました」

お待たせしました。第六話です。

学園編に突入!ルーナの運命や如何に…!

 馬車に揺られること2時間。見渡す限り広がる畑を眺めるのにも飽きてきてしまった。出立から数十分はカリアが話し相手になってくれていたが、小気味よく揺れる馬車の心地よさに負けてしまい、今はすっかり夢の中だ。

 ――思えばこの9年、こうやって物思いに耽ることは無かった。この機会に改めて、『月プリ』の内容をおさらいしておこう。まず、ルーナとメアリーが出会うのは入学式の時。希少な聖属性持ちのメアリーは入学初日から注目の的となり、それを妬んだルーナが庶民生まれを引き合いにメアリーを捲し立てる。そこに颯爽と現れメアリーを庇うのが、攻略対象の1人『ギース・クロムウェル』だ。そのイベントで、ルーナは「悪役令嬢」というポジションを固定化されることとなる。

 できることならば干渉することなく、モブになりきるのが望ましい。メアリーが誰と結ばれようとも、そこに首を突っ込まなければ死ぬことは無い。その後は――



「…………ま!……様!ルーナ様あ!!」


「……ほえっ?」


「やっと起きましたねルーナ様あ!もう着きましたよお!」


 慌てて窓から外を見ると、目の前には立派な建物がそびえ立っていた。どうやら考え事をしている間にすっかり寝落ちしてしまったようだ。すっかり気の抜けた返事をしてしまったのが恥ずかしいが、まだ眠気を覚える頭をなんとか総動員させて、記憶を辿っていく。この建物は確か……あれか。


「あら、もう学生寮に着いたのね。起こしてくれてありがとう」


「礼には及びませんよお!ほら、早く荷物を下ろしてお部屋に行きましょう!……それにしても、ルーナ様は驚くと可愛らしい声が出ますねえ」


「……今度それを言ったらただじゃ済まさないわよ」


 カリアに牽制を入れながら馬車を降り、手続きを済ませて部屋へと向かう。寮の部屋はかつての自分の部屋と比べるとかなり簡素だが、生活するには不自由はしない広さと物が揃っている。荷物の整理をして、部屋の設備を一通り確認し終えた頃にはもう日が傾きつつあった。

 一仕事終えてぼんやりと夕陽を眺めていると、ドアをノックする音が聞こえた。このノック音はもう何年も聞いている。ドアの向こうに誰がいるかなど、確認せずとも簡単に分かる。


「カリア?何か用かしら?」


 名前を呼ぶと、「失礼します」と言いながらカリアが入ってくる。生徒と使用人の住む寮は繋がってはいるものの別棟なため、少し距離がある。体力に自信があるはずのカリアも少し息が上がっていた。


「ルーナ様!夕刻7時頃に寮のメインホールにて親睦を深める為のパーティが行われるので制服着用で集合するようにと、寮長さんから言伝を預かっておりますう!」


 ……はて、入学式の前にそんなイベントがあっただろうか。思い返してみても、メアリーが入寮した後はすぐ入学式のシーンだ。パーティはもう少し後にならないと発生しないイベントのはず。

 ――いや、ここはゲームが元となる世界ではあるがゲームではない。俺が今生きている現実なのだ。ゲームでは語られない部分でも、イベントやハプニングは十分起こり得る。ゲームではメアリーに会うのは入学式だが、その前に顔を合わせている可能性は大いにある。考えればすぐに分かることなのに、なんで気づかなかったんだろう。

 パーティにはきっとメアリーやギースも参加することだろう。できれば鉢合わせは避けたいものだが、こういう社交場に顔を出さないのはこの世界では言語道断だ。重い腰を上げ、カリアに支度を手伝うよう頼む。

 こういったパーティにはこれまでも何度か参加したことがある。提供される食事は美味しいが、数時間立ちっぱなしで辛いわ、その上で上品な振舞いしなければならないわで毎度大変だった。まあそこで恥をかかない為にも父と母に色々教え込んでもらっていた訳だが。だが一度だけ、ギルバートの誕生パーティの際に俺が作った料理を参加者に振る舞ったこともあった。あの初めて対峙する料理を見た時の期待と困惑の表情を眺めるのはなんとも言えない高揚感で満ち溢れた。

 

 パーティ会場に着くと、既に参加者が大勢集まっていた。辺りを見回すが、まだ到着していないのか攻略対象たちの姿はまだ見えない。安堵に胸を撫で下ろしたところで、不意に背後から声をかけられる。


「あの、もしかしてルーナ様でしょうか?」


 声のする方を振り向くと頭頂部から生えるアホ毛がトレードマークのピンク髪の少女が見えた。その姿を見て俺は思わず頬が緩んだ。


「マルシアじゃない!元気にしてたかしら?」


「はい、お陰様で私は元気です。ルーナ様も変わらず見目麗しゅうございます」


 彼女はマルシア・セーン。セーン侯爵家の三女だ。8歳の頃に参加したパーティで1人寂しくしていそうなところを見かけ、俺から声をかけたことですっかり仲良くなった。それ以来お互いの家に遊びに行ったり、文通でのやり取りを行なったりしていた。忙しない幼少期を送っていた俺にとって、マルシアと過ごすのは唯一の癒しだったと言っても過言ではなかった。文通で彼女もここに通うことは知っていたが、やはり直接会うと安心感が違う。そんな安心感からか、俺はしばらくマルシアと話し込んだ。

 今日はもうこのままマルシアと一緒に過ごそう。料理を食べにでも回って穏便に済ませよう。何事も無ければそれに越したことは無いのだ。早速実行に移すべくマルシアを誘おうと口を開きかけたその瞬間――


「貴方!調子に乗るのも大概になさい!」


 会場に響き渡る怒号に思わず体が硬直する。恐る恐る声の発生源を見てみると、数人が白髪の女の子を取り囲んでいた。あの特徴的な白髪はこの世界でも稀な存在。顔を見なくても誰だかすぐに分かった。


(……ああ、これは穏便には済まなさそうだ)

最後までお読みいただきありがとうございます!

第七話は13日投稿予定です。

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