第五十三話「ワイバーンを圧倒しました」
お待たせしました。第五十三話です。
引き続きワイバーンとの戦闘です。
空から奇襲を仕掛けてくるワイバーンに対して策があると豪語するマルシア。一体どんな妙案を思いついたのだろうか。
期待と不安が入り混じる俺にマルシアはウインクで応えると、早速魔力を練り上げ始めた。だが、その光景に俺は度肝を抜かれた。
「な、何……これ……」
使用しようとしている技は先ほどと同じ『ウォーターベール』であるのは間違いないのだが、その規模は俺を助けてくれたものとは段違いだ。水の膜はみるみる内にカリアを中心とした大きなドームを作り上げ、俺たち後方支援組全員をその中へ閉じ込めてしまった。
「これなら、しばらくワイバーン共は入ってこれませんわ! これでルーナ様も治療に専念できますわね!」
「え、ええ……ありがとうマルシア。とても助かるわ」
それから俺とメリアはひたすら怪我人の治療にあたっていたが、その間マルシアは顔色1つ変えずウォーターベールを維持し続けていた。
だが、規模の大きい魔術を維持するには相当な魔力が必要になるが、彼女にそこまでの魔力があるとは思えない。それに、いくら魔力が多くともこれだけ短時間で魔力を消費し続ければ何かしら体調に異変が生じるはずだ。
となれば、考えられる可能性はただ1つ。マルシアの魔力消費効率が抜群に良いことだ。魔力消費効率について論文を書いているギュランに魔術を教わったとなれば、手先が器用な彼女ならば簡単にコツを掴めたことだろう。
これはギュランらの教えが良かったのか、或いはマルシアの潜在能力が凄まじかったのか……どちらにせよ、マルシアの成長ぶりに驚きを隠しきれない。
そんなことを考えている内に、ワイバーンにやられた怪我人たちの治療が全員終わった。その間もワイバーンが何度もウォーターベールを突破しようと攻撃を試みていたようだが、結局最後の最後までそれを破る者は現れなかった。
治療が終わってホッと一息つきたいところだが、まだ戦闘が終わったわけではない。まだ怪我人が増える可能性もある。その可能性を考えたメリアとマルシアがその場に残ると進言した為、前線へは俺とカリアで赴くことにした。
前線では王族騎士団もジェイド軍の騎士団が巧みに連携し、被害をほぼ0に抑えながら既にワイバーンを数体地に伏せていた。
このまま俺たちが加勢しなくても勝機は十分だが、これまで防戦一方でフラストレーションが溜まっていたカリアが腕をぐるぐる回しながら準備運動を始めてしまっている。……まあ、正直俺も治療ばかりで少々退屈していたところだ。ワームドレインで得た魔力が有り余っているのもあるので、ここらで少し発散しておきたい。
前線に着くや否や、こちらの存在に気付いた1体のワイバーンがこちらに向かって空から急降下してきた。鎧を着込んでいる騎士たちと比べて軽装備な俺たちなら倒しやすいと踏んだのだろうが、その考えが命取りになるとは知る由もないだろう。
俺とカリアは言葉を交わすことなく、示し合わせていたかのごとく同時に攻撃を仕掛けた。
まず俺がカオスジャベリンでワイバーンの翼を射抜いて動きを止める。そこにカリアが懐へ飛び込んで拳を一撃お見舞いする。殴られた衝撃で地面に轟音をたてながら叩きつけられたワイバーンは、ピクリとも動くことは無かった。
すると、その音を聞きつけたワイバーンたちが、標的を騎士団から俺たちへと一斉に変えた。俺たちを危険因子と判断して、最優先で狩りに来たのだろう。その数は6体といったところか。俺1人ならば苦戦間違い無しだが、カリアと組んでいればこの数も怖くない。
その後は、俺とカリアのワンマンショーだった。俺が魔術で足止めし、カリアが一撃入れて屠る。ただそれを繰り返すだけでワイバーンは1体、また1体と戦闘不能になっていく。先ほどまで死闘を繰り広げていたはずの騎士たちも、口をあんぐりと開けたまますっかり呆けてしまっていた。
やがて最後の1体を倒し終えると、王族騎士団を率いていた副団長のユウラとジェイドがこちらへ近づいてきた。
「いやあ、お見それ致しました。まさかワイバーン数体をたった2人で退けてしまうとは……!」
「ルーナの強さは知っていたが、カリアも想像以上だな……これじゃ俺らの立つ瀬がないぜ?」
「いえ、皆様が数を減らしてくれていたからこそ、私たち2人で対処できたのです。私たちでは到底、ここに倒れているワイバーン全員なんて相手できませんもの」
「そうか……? まあそういうことにしておくか……」
何か言いたげな様子のジェイドだったが、そこにユウラが割って入ってきた。
「しかし、このワイバーンは一体どこからやってきたのでしょう……?」
「……ワイバーンはここから遠く離れた深い森か高地しか住処を作らねえはずだ。となれば、やはり何者かが介入している可能性は高い。すぐに調べるぞ」
「そうですね。では後方支援組にも伝令を出して調査を進めましょう」
勝利後も冷静沈着な2人は、すぐさま率いている軍への指揮を飛ばし始めた。
そして、俺の仕事もここからが本番だ。ジェイドの仮説通り何者かがワイバーンに介入しているとなれば、魔族——ひいては闇魔術が絡んでいる可能性は非常に大きい。もしワイバーンに魔術を使っているとなれば、同じ魔術の使い手として痕跡程度は分かるだろう。
ならばすぐさまにでも調査を始めるべきだろう。俺は早速調査に向かうべくカリアに声をかけようとした——その刹那だった。
「ルーナ様危ない!」
その声と共に俺はカリアに大きく押し退けられていた。押された勢いで倒れ込む最中に俺の目に映り込んだのは——鋭利な得物に右肩を貫かれているカリアと、その得物を握る人型の魔物の姿だった。
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次回は9日を想定していますが、体調不良により執筆作業がままなっていないので、予定通り投稿できない可能性があります。ご容赦ください。




