第5話 噂の果てに見えるもの
「紬、聞いたか?」
蒼が教室のドアを押し開けながら言う。
「何?」
「噂がまた一つ、新しく動き出してる」
紬はノートを開き、目を走らせる。
「悠里ちゃん、階段の事故、実は誰かが押したらしい……?」
「……誰がこんな嘘を」紬は眉をひそめる。
「噂は善意だけじゃなく、悪意でも動く」
蒼が肩をすくめる。
「怖いな……でも解剖するって言ったもんな」
紬は静かに頷く。
「行くわよ、蒼。今回の震源地を突き止める」
掲示板の履歴をたどると、匿名アカウント「黒影の使者」が最初に投稿していた。
「黒影の使者……誰だ?」
蒼は眉をひそめる。
紬と蒼は、学園内でアカウントの行動履歴を分析した。
「放課後、図書室で頻繁にアクセスしてる」紬が指差す。
「つまり、噂の発信者は学内にいる」
二人は図書室に足を踏み入れる。そこには、昨日まで静かに本を整理していた生徒がいた。
「やっぱり、君か」紬は低く声をかける。
「……ごめんなさい。ちょっと面白がってしまって」
生徒は俯き、手を握りしめる。
「でも、噂は現実を傷つける力を持つ。君の善意も、誰かの不安を増幅させた」
紬の声は静かで厳しい。
「私、怖くなかったのかな……」
「人は怖がる。でも、解剖すれば真実が見える」紬は優しく言った。
蒼は肩を叩く。
「これで一件落着……ってわけか」
悠里が小さく笑う。
「紬さん、蒼さん、ありがとう。怖かったけど、みんなが真実を知ることで少し安心できた」
「噂は止められない。でも、暴走を防ぐことはできる」
紬はノートを閉じ、蒼と目を合わせた。
「これからも、私たちの仕事は続く」
「噂解剖部、今日も任務完了だな」
蒼が笑う。
夕陽が教室の窓を染め、長い影が二人に落ちる。
噂の果てにあるのは、真実と、人々の心の揺らぎ。
紬と蒼は、その真実を静かに見つめた。
#学園掲示板
「黒影の使者って、まさか……」
「でも紬と蒼が調べてくれたから安心」
「噂って怖いけど、ちゃんと見守ってくれる人もいるんだな」




