第78話 拉致
第78話 拉致
転移が終了し、視界がはっきりすると共に、何人もの冒険者風の男達に取り囲まれていることに気づいた。
「へっ、情報通りだぜ」男が言うなり、魔方陣が発動し、僕達は束縛の魔法にとらわれた。
「何だ!おまえ達は?」とヴェリスが叫んだ。
「そんなこと明かすわけないじゃないか。心配するな。おとなしくしていれば危害は加えないさ。おい、このレンって野郎を眠らせろ!」男が叫んだ途端、眠りの魔法にとらわれ、眠りに落ちていった。
「レン!大丈夫?しっかりして!」眠りに落ちる寸前に、エライザの声が遠くに聞こえた。
その声でかろうじて意識をつなげ止め、僕は分身体と入れ替わることに成功した。
「一番厄介な野郎は眠って貰った。でもこいつらはみんな魔法が使えるという情報だったな、猿ぐつわをかませておけ!」
「へい!」
「いいか、もう一度言う。おとなしくついてくれば危害は与えないし、後で解放してやる。用があるのはこいつだけだからな」
「よし!こいつをとっとと運ぶんだ」
「へい!」
「痛い目にあいたくなかったら、おまえ達はおとなしく付いてこい。さあ行くぞ」
*
レンはあのとき、私の声に反応した。
眠っているのは分身体ね。
上手く相手をだませたみたいね。
実は、不穏な動きを察知していたレンは、第5層の攻略開始時より、分身体を二体出現させて、一体は気づかれぬ様に、パーティーの後ろからついて行かせていたのである。
分身体が一体やられた後も、姿を見せず隠れたままにしておいたのが、功を奏したようだ。
レンの本体は他の場所にいるから、安全ね。
私達は、おとなしくしていれば大丈夫。
後はいつ、どのようにレンが決着させるかよね。
そう考えた私は、こっそりとレンからの接触を待つのであった。
迷宮から連れ出された私たちは、宿泊施設とは反対方向に連れて行かれた。
迷宮から少し離れた場所に、目立たないように馬車が二台用意されていた。
レンは前の馬車に乗せられ、私たち三人は後ろの馬車に乗せられた。
そして、夕闇の中を二馬車編成で、静かに、マーリン方面へ出発した。
誰かが気づいてくれないかと期待したが、夜も更けてきており、気付いてくれる人はいなかった。
*
分身体と入れ替わった僕は、第五層の魔方陣の前にいた。
周りに注意しつつ十分に時間をとった後、魔方陣に入り第一層に転移した。
転移した先は、もうすでに誰もいなくなっており、静寂だけが支配していた。
僕は、注意しながら迷宮を脱出し、ギルドカウンターでトッドに言伝を頼んでから、サーシャからの手紙を受け取り、そのままマーリンへと向かった。
暗闇の中を全速力で走っている。
しばらく走り続けていると、索敵スキルで、二台の馬車に追いつきつつあることが分かった。
300m程まで近づいたときに街道を外れ、つかず離れず森の中を疾走することにした。
通常、アークニート迷宮からマーリンまでは、馬車で一日かかる。
休みなしでは、馬を潰してしまうだろう。
そうなると、どこかで休憩をとることになる、そのときがチャンスだな。
エライザ、ヴェリス、フェリーナ、待っていてくれよ。
必ず助けるからな。
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