第71話 準備
第71話 準備
王都に戻った僕達は、まずギルドを訪れ、ギルマスのトッドに、これまでの経緯を説明した。
その後、上層部に報告が必要だとのことで、能力鑑定が行われた。
「レン、これから準備が大変だろうが、大丈夫か?ディアやライトに連絡は入れておいたが、リーズ村は今ちょっと忙しいようでな、来られないそうだ。レンの晴れ姿を見られなくて、とても残念がっているだろうよ」
「そうですか…残念ですが、仕方がないですね」
「式典は十日後に決まったぞ、式典の準備は家のものに手伝いさせようか?」
「その必要はないです。トッド男爵」
「男爵!?」僕は驚いてしまった、トッドが男爵だったなんて。
「エライザ様、ここでその呼び方は…」
「失礼、ギルドマスター。レンの準備は私が手伝います」
「そうですか?エライザ様ご自身の準備も大変でしょうに…」
「心遣い有り難う御座います。でも、大丈夫ですわ」
「わかりました。ところでレン、Aランク冒険者になったら、君も爵位が貰えるぞ。Aランク冒険者というのは、それほど名誉な事なんだ」
「僕が爵位を?…とても考えられません」
「そうか?ライトやディアも同じ事を言っていたが、爵位があればいろんな意味で便利だぞ。特に君には必要だと思うんだが…」
「まあ、今は良い。頑張って準備してくれ。エライザ様、レンを宜しくお願いします」
「承知いたしましたわ」
それからのことは、とても忙しく、記憶の一部がとんでしまうほどだった。
普段着の上品なものを一通り揃え、エライザのご家族に挨拶をし、礼服を二着仕立て、礼儀作法を徹底的に教えられた。
それに加え、国王陛下をはじめとする国の重鎮についての知識を、詰め込まれた。
いよいよ式典の前日となった日、エライザの実家であるオブストリア公爵家に、夕食会で訪れていた。
「レン君、忙しいときにもかかわらず、食事会に参加してくれてありがとう」
「こちらこそ、お食事会に招いて頂き、有り難う御座います。式典の準備に関してもお力添えを賜り、大変ありがとうございます」
「レン君、そんなにあらたまる必要はないよ。楽にしてくれ給え。先日は、挨拶程度しかしできかったから、エライザの腹毒の件を、ちゃんとお礼しておきたかったんだ。エライザを救ってくれて、本当にありがとう」
「とんでも御座いません。エライザ様は大切な仲間ですし、いつも僕の方が助けられております」
「レン、私からも改めてお礼を言うわ。本当にありがとう」
「エライザ…」
「ところで、授与式の準備はもう万端か?」
「はい、エライザ様のおかげで」
「そうか、明日が楽しみだな。所で話は変わるが、レン君は爵位を受けるつもりがあるのかい?」
「ギルドマスターにも先日聞かれたのですが、自分にはふさわしいと思えないのです」
「そんなことは無い。ドラゴンバスターでAランク冒険者というのは、爵位を授与するに値する名誉なことだよ。爵位があれば、身分が保障され信用が出来るから、いろいろな面倒な手続きが不要になったり、良いことも沢山ある。その反面、派閥争いには巻き込まれるかもしれないが…。まあ最も、爵位が無い今でも、派閥争いに巻き込まれつつあるがな…」
「爵位を受けるかどうかは、レン君が決めることだし、私がとやかく言う筋合いは無い。しかし、エライザのことを本当に大切に思うなら、受けることを考えて欲しい」
「!!」
「お父様!」
オブストリア公爵当主の思わぬ発言もあったが、それ以外は終始和やかなまま、食事会は終了した。
僕がすでに派閥争いに巻き込まれつつある?
エライザとのことかな?
それとも、僕の知らない所で、そんな動きがあるのだろうか…。
いろいろややこしいが、慎重に行動をしなければいけないな。
それにしても、公爵のあの発言…エライザはどう思っているのだろうか…。
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