第70話 第四層攻略
第70話 第四層攻略
「!!」
アーク・デーモンが動き出す気配を感じた瞬間に、僕と分身体は、咄嗟に時空間操作スキルを使い、時間停止を上書きした。
それで、時間は相変わらず停止したままだが、体は動くようになった。
すかさず僕と分身体はアーク・デーモンへの攻撃を開始した。
先ほどまでのアーク・デーモンとは全く違い、このアーク・デーモンは難敵であった。
アーク・デーモンは僕と分身体の手刀攻撃や手裏剣攻撃を受け流しながら、錫杖のような武器で攻撃をしかけてくる。
一進一退の攻防がしばらく続いたが、僕はエライザとの模擬戦で思いついたフェイントを試してみた。
鏡に向かって相対するように、僕本体と分身体が悪魔の左右で対称な攻撃を繰り返した。
少し慣れてきた所で、分身体の動きを最後の部分だけ変化させ、アーク・デーモンに切り込んだ。
アーク・デーモンは、突然の変化に、分身体からの攻撃を受けながすことが出来なかった。
腹部に手刀がめり込み、大きなダメージを受けることになった。
ダメージを受けたアーク・デーモンは、苦痛の表情を浮かべながら、膝をついた。
そして、動きが鈍くなった所で、僕本体は頭部への死点攻撃を、分身体は心臓への手刀攻撃を繰り出した。
この攻撃で、ようやくアーク・デーモンは倒れ、消滅した。
それと共に時が流れ出した…。
「レン、やったのね?」
「ああ、何とかね…」
「凄い強敵だった。あいつはボスというより、特殊固体だったに違いない」
「どうして?」
「ボスは、あくまでその種族の強化バージョンみたいなものだと思うんだ。特別にレベルの高い固体みたいな感じかな。でもあいつは根本的に違った。僕より先に時間を停止させたんだよ!」
「ええっ、それでレンは大丈夫だったの?」
「時間が停止した瞬間、思考は出来たけど、体が動かなくなった。咄嗟に、僕が時間停止を上書きしたら、動けるようになったんだ」
「魔族や強敵が相手だと、いつでも時間停止ができるように、常時分身の術を使わないといけないかもしれない…」
「そうね…。でもレンが無事で良かったわ。助けてくれてありがとう」
アーク・デーモンが消失した後には、下へ続く階段が現れていた。
「今日はもう戻ろう。第四層は踏破できたからね」
「ええ、そうしましょう」
僕達は宿泊施設に戻り、ギルドカウンターで、特殊固体だと思われるアーク・デーモンの出現と討伐、第四層の踏破を報告した。
ギルドカウンターの受付嬢の話によると、通常は、第四層にボスは存在せず、最後の部屋までたどり着くと、ボスとの対戦はなく、そのまま第五層に下りられるらしい。
証明するものは何も無いけれど、話の内容から、僕達の第四層の踏破を認めてくれるようだ。
それと同時に、Aランク冒険者の資格が得られるはずだとのことで、王都のギルドと連絡を取ってくれた。
連絡は、魔法の水晶を通じてのやりとりで行われ、速やかに終了した。
その結果、僕達のAランク冒険者昇格の内定が決まり、その授与式を近日中に行うとのことで、王都への帰途が命じられた。
「日程は決まっていませんが、近いうちに授与式が行われます。式では、ギルド設置者である国王陛下から、Aランク冒険者証が授与されます。最短なら10日後にでも執り行われる可能性があるようです。準備期間が必要でしょうし、明日にはここを出発し、王都へ向かって下さい」
「わかりました」
部屋に戻った僕は、エライザに相談を持ちかけ…いや泣きついた。
「僕はこの国の礼儀作法を知らないし、礼服さえ持っていないよ。両親に連絡しても、王都に来るまでに一週間以上かかるし、時間がない。どうしよう…、国王陛下に無礼でもはたらいたら、殺されちゃうかもしれないよ…」
「レン、あなたがこの国の慣習を知らないことは、私だけじゃなく、国王陛下もご存じよ。無礼をはたらいたくらいで、処刑なんてするはずないわよ」
「それより早く王都へ戻って、服装などの準備をしないといけないわ。私に任せて。私がすべて見繕ってあげる。貴族向けのお店で、礼服を仕立てましょう。礼儀作法も私が教えるわ。とにかく頑張ってね」
「エライザ、ありがとう。何から何まで…。本当にエライザがいてくれて助かったよ」
読んで頂き有り難う御座います。宜しければ、高評価、ブックマーク登録をお願いいたします。




