第55話 別れ
それぞれの道を進んでいく
第55話 別れ
「みんなに話がある」とサーシャ。
「突然どうしたんだい?珍しいね」とメンデス。
「ん、重要な話。…ボク修行にでる」
「えっどういう事?」
「みんなには申し訳ない、ごめん」
「どうして?」
「レベル13になり、魔法使いが習得できる魔法を全部収得した。でも、無詠唱魔法は使えない。あいつは、リンにあんな事をしたあいつは、無詠唱魔法を使った。魔族に対抗するには無詠唱魔法が必要。だから修行に出る」
「当てはあるのですか」とレイリア。
「ん、とりあえず里の長老に聞いてみる。それから考える」
僕だけではない、みんなそれぞれ魔族に対抗する術を探っている。
魔族との危険な戦いに、僕と共に臨んでくれるという決意を改めて感じた。
心が熱くなった。
こんなに大切な仲間は他にはいない。
仲間を大切にしなければ…。
でも、僕にはさらなるレベルアップが必要だ。
「みんな、お願いがあるんだ。サーシャの修行の旅に同行して欲しい。どんな危険が待ち構えているか分からない。みんなでサーシャを支えてあげて欲しいんだ」
「レンはどうするんだ?」とメンデス。
「僕はあれ以降時間停止が出来ていない。戦闘技術も未熟だ。今のままでは魔族に対抗できないと思う。ここに残って迷宮攻略を進め、レベリングを継続する」
「それなら、私も残ります。それが国王陛下のご命令ですし、何より私の希望です。足手まといにはなりません。エンチャンテッド・ブレードは必ず必要です。それに剣技を磨く指南役も必要です」とエライザ。
「…………わかったよ。魔族に対抗するために、ここで敢えて二手に分かれよう。ギルマスには連絡を入れておくよ」
「六年後の魔族との戦いの舞台は、ユリアス大陸の西、ユーノス島だよ。移動にも時間がかかる。遅くとも五年後には王都に集合することにしよう。それまではお互いに出来ることを全力で」
「了解」
サーシャからの突然の希望で、僕たちライジングサンは二手に分かれ、それぞれに準備を進めていくことになった。
馬車で去って行くメンバーを見送った僕とエライザは、宿泊施設に戻ってきた。
三人用の大きな部屋から、一人用の小さな部屋に変更して貰った。
部屋には僕以外に誰もいない、賑やかなみんなの声がしないのはとても寂しい。
…気がつくと、僕はエライザの部屋をノックしていた。
「エライザいる?レンだけど、ちょっと良いかな」
「レン?いるわよ、何か用?」エライザがドアを開けた。
「夕食でも一緒にどうかと思ってね。まだ早過ぎるかな?」
「いや、丁度良かったわ。お腹が減ってたの」
「じゃあ、食堂におりようか」
「いや、ここで食べましょう。どうぞ中に入って」
「そう?じゃあ、お邪魔するね。そうだな、今日は収納ボックスの料理でいいかな。いろいろ品揃えがあるよ」
「いいわね。レンのお母さんの料理もある?」
「勿論あるよ。変な取り合わせだけど、これでいいかな?」
収納ボックスから取り出したのは、ファイティング・ブルのシチュー(いわゆる前世でのビーフシチューに相当する)とシーフード・ピザ、それに野菜サラダだ。
「ホカホカで美味しそうね」
「うん、何か飲む?」
「そうね、ロゼはある?」
「勿論。とっておきだよ」
「じゃあ、明日からの二人の安全を祈願して、乾杯!」
「乾杯!」
今更ではあるが、目の前に座るエライザを改めて見ると、その美しさに圧倒されてしまった。
光に輝くセミロングの金髪、深く澄んだ青いつぶらな瞳、少し赤く染めた頬、思わずそれらを見入ってしまった。
「レン、どうしたのよ?そんな顔して…?」
「ごめん、何でも無いんだ。それより明日からの作戦なんだけどね…」
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投稿前から書きためておいたものが、もうすぐ底をつきそうです。もう少しすると、投稿頻度が落ちると思いますが、頑張りますので、よろしくお願いします。