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道参人夜話  作者: 曽我部浩人
第四章 ~ びしゃがつく
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序章 びしゃがつくの談




 いつの頃からだろう、水音が気に障るようになったのは──。


 たった一滴の水が落ちる音さえ聞き漏らせない。


 水道の蛇口を閉めた後、シンクへ落ちる水滴の音に嫌気が差す。

 雨の夜にベッドで耳にする雨垂れは、異様なくらい心をざわめかせる。


 水が怖いんじゃない──液体の発する音が恐ろしいのだ。


 原因がどこかにあるのかも知れない。

 記憶を遡ろうとすれば、妨げるように水音が鼓膜に響いてくる。


 ピチョン、パシャン、ポタリ、ボシャン、バシャ──。


 心の奥底に滴り落ちる水音。


 ──ビシャ。


 そして、一際気持ち悪い水音に身がすくむ。

 たっぷりと水気を含んだ足が踏み出す時にさせるような水音。


 いや、これは足音なのだろうか?


 水音にしろ足音にしろ、気持ち悪くて仕方がない。


 この不快な水音にこそ真相があり、必死でそれを思い出そうとする。

 だけど、そこから先に意識が及ばない。


 思い出そうとしても、また水音に邪魔されるばかり。


 こうして思い悩んでる間にも、あの音はゆっくり近付いてくる。


 いつでも私の後ろに佇み、ぴったりと張り付くように、どこまでも、寝ても覚めても着いてくる。


 着かず、離れず、いつまでも、どこまでも──。


 ──ビシャ。




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