第2話 ゴスロリの同行者
端折りましたが追々物語が始まってから
今はまだ序章。首都についてからが物語スタートです。
3か月が経った日。私はオリバーを見送っていた。村に唯一の駅。蒸気機関があるらしいこの世界では機関車が走っている。
「アキハ、3か月よくやったな。もうある程度は大丈夫だろうが油断はするなよ」
今日までオリバーは私の訓練に真剣に付き合ってくれた。
「分かってる。本当にありがとうオリバー」
礼を言っても返せない。
「いいさ。俺から一本取れるまでになったんだ。お前は案外戦闘に向いているみたいだ」
「そうかな」
「そうだ。お前、移動手段に列車は使うなよ。自分の脚で首都まで行くんだ。かなり遠いが訓練には最適だ」
私は無言で頷いた。すると汽車が汽笛を鳴らし車掌の発車しますよの声でオリバーは列車に乗り込む。
「じゃあねオリバー」
「ああ。アキハ頑張れよ。手伝えることはちゃんと手伝ってやる」
それに私は笑顔を返すと列車は発車。首都までの直行だ。列車を見送り私は頬を撫でる。サバイバルの時に頬に跡が残る傷が付いた。
「さて、それじゃ行きますかな」
首都へ向かう為の旅の準備は既に出来ている。借りている家に用意してある。後は村長にお礼を言い、世話になった村の人たちにお別れを言って回る。
挨拶を終え、村の外に続く道まで仲の良かった村人たちは見送りをしてくれた。
私は大きく手を振り彼らにありがとう。と言うと街道に出た。
信頼できる相手は軍務、これからは1人でこの異世界で目的を果たさなければならない。不安が大きかったが、小さく好奇心はあった。この世界がどういう所なのかという好奇心だ。
考えによっては楽しみで、私は意気揚々と歩を進めた。
一番近くの街は2時間程で着き、そこは食料を買うだけで済ませた。その街を出て再び街道に入ると赤い小さな鬼みたいな見た目のゴブリンに遭遇したが、敵ではない。簡単に倒し先へ向かう。
最初こそ魔物はきつかったが、オリバーは信じられない位の強さでそれから一本取れたのだ。弱小、ある程度の中級魔物は倒せる。
「やっぱ、強くなったなぁ。私」
1人でぽつりと呟いてみると日本での事を思い出す。仲のいい女友達と携帯を弄りながら談笑したり、学校で授業を受けたり。もうここで3か月経った所為か何故か昔の事に感じられた。
ま、思い出してもしょうがない。か。と思っていると草むらから以前、この世界に来た初日、女の子とその母親。親子を食い殺した魔物、ゴートが私と同じ位の女の子を咥えて出てきた。
ゴートの数は3匹。女の子は1人。
あの魔物の習性と何をしたかを覚えているので殺すのは簡単だった。
そして女の子を抱っこして街道の端に寝かせた。にしても、女の子を抱えて平然としてるなんて・・・私って本当に逞しくなったな。
いや、今はそんな事よりもこの子を起こさないと。
私は取りあえず女の子の鼻に指を突っ込んだ。
あ、違うや。
間違いに気づき頬をペチペチと叩いてみる。
「ん・・・ぅ」
女の子は微かに動く。私はここで酔っ払いに水を掛けるのを思い出した。リュックから水の入ったボトルを取り出し、ドボドボと顔に掛けてやると、女の子は咳き込みながら飛び上がるように上半身を起こす。
「・・・誰です?」
女の子は私を見ながら言って来た。不機嫌そうに。
「君の命の恩人だよ」
間違ってはいないので言ってみると彼女は頭を抱えだした。何を考え込んでいるんだろう。
「思い出した。私体力無くなった所をゴートに」
だから咥えられてたんだな。
「そうか。あなたは私を助けてくれたんですね・・・お礼をしなきゃ」
彼女は言うが荷物は無いのだろうか。
「ああ! 荷物! ・・・はさっき無くしたんだった」
「いいよお礼なんて。困っているならお互い様でしょ?」
私は当たり前の事を言った筈なのだが、彼女は何か感動して私の手を握り「良い人・・・」と頬を染めている。
「私の名前はサクラバアキハ。アキハで良いよ。あなたは?」
「はっ! 申し遅れました! 私カノン・ローレインと申します! 気軽にカノンと呼んで下さい!」
宜しく。と言いながら私はカノンを見た。栗色の長い髪の彼女の衣装はゴスロリ。顔は整っており美少女だ。
「あのアキハさん。どこへ行こうと?」
「私は首都に。目的地は別の場所なんだけどね。今旅してるの」
と言うとカノンは土下座した。
「是非! 私めを仲間に! いえ下僕に!」
「いいよ」
1人では心細かったので願っても無い事だったので即答したのだが、カノンはキョトンとしている。
「良いんですか?」
「いいよ」
「疑わないんですか? 夜中にあなたの装備を奪って逃げるかもしれませんよ?」
「カノンはそういう事するの?」
「いえしません! 絶対に!」
「だったらいいじゃん。さ、行こ?」
リュックを再び背負いカノンに言うと、カノンは「はい!」と大きく返事をし私の後を着いてくる。と言いたいのだが聞かなければならない。
「カノン、戦闘経験は?」
「ありますよ」
笑顔で答えるカノンだが・・・武器は?
「ああ、武器ですか?」
言うと可愛らしい笑顔を浮かべ、カノンは袖口から刃渡り10cm以上のブレードが姿を現す。
可愛い顔して凶悪なもの持ってんなぁ。
「さて、行きましょうかアキハさん。首都へ向かうなら鉱山都市を経由した方が良いですよ?」
「鉱山都市?」
聞き返すとカノンはポケットから地図を取り出し、この先5km程の場所にある山を指さす。
「鉱山都市フレン・ウォール。首都へ向かうにはここを通った方が道的にも近くなりますし、鉱山内は比較的魔物も居ません。どうでしょうか?」
通った方が利点があるな。と思い私は快諾。カノンを連れてフレンウォールへ向かった。
鉱山都市、その名の通りの街だった。山の麓のフレンウォールは幾つもの岩を削るであろう採掘機器があり、工場からは煙が上がっている。活気に溢れる街だ。
「それじゃ、鉱山の坑道を通り抜けられるか聞きにいかないとね」
まず最初の目的を言うとカノンは「はい」と返事を返してくれた。私は微笑み、こう尋ねた。
「どこで聞いたらいいんだろう」
結局の所、工事責任者の所へ行けば良かったのだ。カノンに手を引かれ、私は頭にタオルを巻いた作業服集団の中で威圧感を放つおじさんに話しかけた。
「通るのは構わねえ。と言いたい所だが。今この坑道内にはかなりの魔物が居る。それも中級だ」
成程。魔法無しでは辛いわけか。私は理解する。案外3か月で鍛えられたものだ。
「嬢ちゃん達もしかしてクエストの経験とかあんのかい? 情けない話だが俺達のピッケルンなんかじゃとても太刀打ちできねえ。魔物を討伐してくれたなら大金を払うぜ」
その言葉に私はカノンを見た。どうやらオッケーらしい。
「おっちゃん乗ったよ。その話。正式な鉱山工事責任者からの依頼、と考えるからね」
私の言葉に作業服の兄ちゃんたちは「おお!」と感嘆の声を上げる。にしても、本当に情けないなぁ。
兄ちゃんたちは私たちにランプとある程度の痛みを緩和できる薬草をくれた。取り敢えず礼を言い、鉱山に踏み入ると、奥から風が吹き、それに魔物の鳴き声が混ざっている。
かなり多い。このままいけば鉱山から出て来る。それは阻止した方がいい。多分。
私はランプを点け、カノンにも点けるように言うと剣を抜く。ここからは何時戦闘か分からない。気を引き締めなければ。
まったく、こんな事をしているなんて、向こうの友達は思いもしないだろうな。私が高校生活を思い出していると「行きましょう」とカノンの声が掛り奥へと足を進めた。
多分、名前としてはこうだろう。坑道内魔物討伐依頼。




