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俺の人生。支離滅裂。でも、楽しい。  作者: ケイ


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34

「奪ってみたいな」


「ノアくんを。マリアさんから」


そんな言葉が響いた瞬間。


空気が、止まる。

冗談みたいな声。


でも。


その目は、冗談じゃない。


「……」


言葉が出ない。


出ない、けど。


逃げるのは違う。


そう思った。


「アリスさん」


やっとのことで、声を出す。


「はい?」


変わらない笑顔。


でも、その奥。


じっと、見てくる。


試すみたいに。


「それ」


喉が渇く。


でも、言う。


「無理です」


ぴくり。


ほんの一瞬だけ。


アリスさんの表情が、止まる。


「どうして?」


すぐに、元に戻る。


やわらかい声。


でも、さっきより一歩踏み込んでくる。


「わたしの方が」


「優しくできるかもしれないよ?」


「守れるかもしれないよ?」


一歩、近づく。


逃げ場がなくなる。


「それでも?」


問われる。


試される。


でも。


「それでも、です」


今度は、迷わない。


「俺は」


拳を、ぎゅっと握る。


「マリアさんのとこにいます」


静かに。


でも、はっきり。


言い切る。


「そっか」


アリスさんは、少しだけ目を細めた。


怒ってる?


悲しんでる?


わからない。


「理由、聞いてもいい?」


「はい」


「なんで?」


息を吸う。


正直に、言う。


「好きだからです」


即答。


「助けてもらったから、とか」


「優しいから、とか」


「色々ありますけど」


一瞬、言葉を選ぶ。


でも。


やめる。


飾るのは、違う。


「全部ひっくるめて」


「俺が決めたんで」


顔を上げる。


アリスさんを見る。


「俺が、そこにいたいって思ったからです」


沈黙。


風が、少しだけ揺れる。


「ふふっ」


アリスさんが、笑った。


でも。


さっきまでの軽い笑いじゃない。


「やっぱり」


ぽつり。


「ノアくん、いいね」


「え?」


「そういうとこ」


少しだけ、近づいてくる。


でも、さっきと違う。


押し込む感じじゃない。


確かめるみたいな距離。


「流されそうで」


「ちゃんと、自分で決めるんだね」


「はい」


自覚はない。


でも。


今は、そうした。


「うん」


満足したみたいに頷く。


「じゃあ」


くるりと背を向ける。


窓を閉める。


カチャ、と音。


「今日は、ほんとにここまで」


振り返る。


いつもの笑顔。


でも。


ほんの少しだけ。


寂しそうに見えた。


「でもね、ノアくん」


指を一本、立てる。


「それ」


「ずっと貫けるかな?」


「……」


答えられない。


今は、言えた。


でも。


これからも?


「ふふっ」


「楽しみにしてるね」


ドアへと向かう。


一歩。


また一歩。


そして。


「わたし」


振り返らずに、言う。


「諦め悪いから」


どきっ


「簡単には引かないよ?」


そのまま、出ていく。


扉が閉まる。


――カチャ


静寂。


一人。


残される。


「はぁ」


一気に力が抜ける。


膝が、少し震えてる。


「なんだよあれ」


怖かった。


普通に。


でも。


「無理です、か」


さっき言った言葉。


それを、思い返す。


「俺」


小さく呟く。


「ちゃんと言えたな」


ちょっとだけ。


ほんの少しだけ。


胸の奥が、熱くなる。


でも。


同時に。


「諦めない、か」


アリスさんの言葉。


それが。


妙に、頭に残っていた。

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