第八話
『早く早く! 毎日、沢山の人やボクみたいな妖精が、リーノ姫とウルノ王子を見ようと来てるのさ!』
次の空間は、そこそこ広く、多少埃を被っているのを置いても、綺麗な部屋だ。
大広間、というのか、前方には左右に分かれた大階段の絵があり、その中央下に当たる部分が客用の通路となっている。
左右に沢山の人影、人形が配置されている。
…どうやら、最初の扉が錆付いてたことが良い方向に作用した様子で、手前の部屋もそうだが、土や虫もあまり侵入しておらず、それなりに綺麗な状態で保存されている。
『みんなも遠慮しないで! コッチに来て来て!』
ドレスや燕尾服を着た男女の人形、小柄で背中から羽が生えた妖精たち、そしてメイドや執事っぽい人形たちが、右往左往している。
どの人形も金属棒に括りつけられてるようで、床の溝に沿って動き、妖精は、細く透明なワイヤーのような糸に吊るされ、上下している。
『ほらほら! 見てよ! 魔女もやってきたよ! あの魔女ったらさ、いっつも、そこら中にあるものをカエルにしようとして、お菓子にしちゃうんだよ!』
姿が見えないナレーションが指摘したのは、天井近くにいた、黒いローブ姿の女の子、だろう。
その魔女が杖を振るえば、どこからともなく包装紙に包まれた飴やクッキーが現れる。
「すごいな…」
優雅な音楽まで流れてきて、とても十数年前だか数十年前だかに廃園となった場所とは思えない。人形たちも、滑らかに動いている。
私個人の感想ではあるが、今でもこう思えるのだから、尚更廃園した理由が分からない。
名親が言ったように、廃園となった原因が、七つほどあった『噂』のせいだとしても、勿体無い。
『あっ、鐘が鳴ってる! もうこんな時間だ!』
機械仕掛けの人形劇をしばらく眺めてたら、不意に鐘楼の、荘厳な音が飛び込んでくる。
『へっ? なんの時間だって? ウルノ王子とリーノ姫がやってくる時間だよ!』
時報か何かと思えば、すかさずナレーションが説明してくれ、正面に設置してあった巨大な両開きの扉が開く。
見た目は木製である今回の扉は、どうやら錆びてなかったようで、スムーズに奥へ向かって開いていく。
同時に、王子と姫を見に行く、という演出のためか、人形たちが一斉に客用とは別の小さな扉へと姿を消していく。
『さあ、ボクらも急がないと!』
期待に胸を弾ませている、といった体のナレーションに続き、先へ進む。




