表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
7/22

第七話

『昔々、あるところに、小さな村がありました。

 村の近くには森があり、小さな家がありました。

 そこには、とても美しい娘と、母親がいました。

 二人は時折村にやってきては、綺麗な刺繍がされた布を、食べ物と交換していました。

 そうやって、二人は慎ましく暮らしていました。


 そんなある日、ドリームランドの王様が村にやってきました。

 近くの村や町の様子を見に来たというのです。

 村の人たちは王様がやってきたことに驚きましたが、盛大におもてなしをしました。

 村でとれる野菜や果物、花などを王様に見せたり食べてもらったり。


 中でも、綺麗な刺繍がされた布を王様はとても気に入り、作った人に会いたいと言いました。

 村人たちは喜んで、森にある小さな家から、母親と娘を呼んで王様と会わせます。


「ドリームランドでも見たことがない、この綺麗な刺繍だが、君たちが縫ったのかね?」

「はい、私の娘が作りました。ほら、王様にご挨拶をしなさい」


 王様の問いかけに、母親が答えました。


「こんにちは、王様。その布の刺繍は私が縫いました」

「ほう! 娘よ、名は何と言う?」


 リーノ、と答えた美しい娘を前に、なるほどそれは、と大層感心した王様。

 是非とも、その娘をドリームランドに連れて行きたいと考え、ふと、息子である王子様のことを思い出しました。


「このような身も心も優しい娘は、ドリームランドにも滅多にいない。そうだ、この娘を王子のお嫁さんにしては、どうだろう?」


 なるほど、良い考えです。

 そうと決まれば、王様は娘をドリームランドへ誘います。

 突然の話に母親も娘も驚きましたが、喜んでドリームランドへ行くことへしました。

 小さな村の、森の奥に住んでいた娘がドリームランドへ向かえば、王子様が綺麗で心優しい娘に一目ぼれをして、あれよあれよという間に結婚することになりました。


 そうして、二人は幸せに暮らしましたとさ』



 ……最後は中々に強引で、有名な童話を思い出しかけるが、大体そのような感じの話であった。


 妖精のナントカというナレーションに、最初に案内されたのは長い通路であった。


 少し薄暗い通路、その左右の壁に、先の御伽話を元にした各場面が、人形劇形式で表現されていた。

 具体的には、ドリームランドのお姫様である、リーノという娘のサクセスストーリーである。


 だが、設置されているのはただの人形ではなく、一定の周期で同じ動作を繰り返す自動人形、機械仕掛けの人形で、客を飽きさせない作りになっている。

 当然ではあるが、先に進んでいくことで、人形劇も進んでいく。


 長閑で、何故か和洋折衷の古い家屋が並んだ村と、その背景にある、山。森にぽつんと立っている、質素な家、というか小屋。

 金髪の少女と、似たような顔をした母親…の人形が、数人の村人たちと笑顔で交流している様子が表現されている。


 次は、四頭立ての白く細工までされた立派な馬車が、遠くからやってくる場面。

 そこから降りてきたのは、赤い外套を着て王冠を被った、白髪に白い髭の王様…の人形。

 その王様の下に、食べ物を始めとした様々な物品を抱えてやってくる村人たち。


 『おもてなし』の一つである、黒の糸で巨大な花の刺繍が施された布を手にした王様が、目と口を丸く開いて驚きを表現している。

 五枚の花弁の中に、同形の花が刺繍してある、と傍から見ても気合の入った一品なのだが……どうもこの刺繍、紙に模様を印刷した物ではない。わざわざ布に刺繍したのだろうか? だとすれば、無駄に凝っている。


 続いて、明後日の方向を指差す王様と、驚きの表情を貼り付けた母娘が会話している様子が、更に豪華な馬車の窓から顔をのぞかせ、笑顔で手を振る娘の姿が並ぶ。


 場面は変わり、ドリームキャッスルへ。

 当然だが、この全体が傾いたアトラクションではなく、物語にあるような、童話的で立派な城だ。

 きらびやかな城内で、王子らしい金髪の男と、ウェディングドレスだろう、白いドレスを着た娘が並んで手を繋いでいる。

 二人は笑顔で、周囲の人形たちも飛び跳ねたり、満面の笑みで手を振ってみせたり、花を投げるような動作を繰り返している。


 …めでたしめでたし、といったところか。

 全体的に、人形の動きがぎこちないのは、年月が経っているからだろう。


『それじゃあ、次はお姫様になったリーノに会いに行こう!』


 これで、アトラクションの前半が終わったのだろう、ナレーションの声を背に、前には立派な扉が待ち構えていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ