表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
めこねこの日々のあれこれ  作者: めこねこ


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

11/17

―第0️⃣1️⃣1️⃣話― 【つわり奮闘記】深夜2時まで鍋を振り、千疋屋で7000円のスイカを買った結果。

わが家には二人の子どもがいます。


高校1年生の長男と、中学2年生の長女。


今でも息子に軽くハグをして、それを受け入れてもらえるくらいには、

良好な親子関係を築けている自負があります。


子どもたちの顔を見るたび、ふと思い出すのは、

妻と駆け抜けたあの「共同戦線」の日々です。


今回は、長男を授かった時のお話をさせてください。


――――――


長男の命が宿ったとわかったのは、7月頃のことでした。


不妊治療を経て、ようやく授かった待望の命。

喜びと同時に、言いようのない不安が入り混じったのを覚えています。


当時、私たちは東京に住んでいました。


妻の両親はすでに他界し、私の両親は遠方。頼れる身内が近くにいない中、

私たちは文字通り二人三脚で出産に備えるしかありませんでした。


しかし、状況は過酷でした。


当時の私は、地方から「仕事ができる期待の星(自称)」として本社に呼ばれた身。

連日、朝7時半に出勤し、帰宅は夜10時を過ぎるのが当たり前。


そんな中、妻を襲ったのが、想像を絶する「重いつわり」でした。


――――――


日中、一人で苦しむ妻のために、

帰宅後の私には重要なミッションが課せられました。


それは、「明日、妻が食べられるもの」を作り置きすること。


当時の妻は、しいたけとピーマン、そして牛と豚のひき肉なら

食べることが出来ると言っていました。


なので……


「しいたけなら食べられそう」と言われれば、しいたけ料理。


ピーマンが食べたい」となれば、ピーマン料理。


朝・昼・晩と三食同じ素材を食べる妻を飽きさせないよう、

私は深夜10時から鍋を振り、違うメニューを考案し続けました。


気づけば時計は深夜2時。


明朝の出勤を控え、意識が朦朧としながらも、

「妻と子のために」とフライパンを握りしめる日々。


今振り返れば、あれこそが私なりの愛情表現だったのだと思います。


――――――


つわりも終盤に差し掛かった10月か11月頃。


妻がぽつりと、こう言いました。


「……スイカが食べたい」


季節は晩秋。スイカの名産地・熊本ならまだしも、ここは東京。

そこら辺のスーパーに並んでいるはずもありません。


ですが、私は行きましたよ。新宿の千疋屋へ。


記憶を辿れば、小玉丸まる一個で7,000円ほど。

当時の私にとってはかなりの出費でしたが、妻の願いを叶えるため、

清水の舞台から飛び降りる覚悟で購入しました。


しかし……結末は残酷でした。


期待に胸を膨らませて差し出したスイカ。

一口食べた妻の感想は、 「……なんか、想像してた味と違う」


結局、その高級スイカのほとんどは、

深夜2時まで作業を終えた私の「夜食(栄養補給)」へと姿を変えました。


私の血肉となった7,000円の味……。

あの時の、なんとも言えない切なさとスイカの淡い甘みは、今でも忘れられません。


――――――


あの頃の自分に、声をかけてあげたいです。


「よく頑張ったな、お前の2時までの残業代は、

最高に高価で水っぽかったぞ!」と(笑)。


今、元気に育っている息子の姿は、あの深夜2時の鉄鍋の音と、

千疋屋のスイカから始まっているのかもしれませんね。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ