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好きになりすぎるのは、悪いことですか  作者: ネロ
日常編

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全ては、今のために

交際3年目、理央も社会人生活に慣れてきて、柊も安定し始めたころ、2人は遂に結婚した。


結婚生活では互いが互いを支えあい、互いの存在を必要としあえる日々だった。


ある冬の夜、いつものように理央の背中にそっと腕を回した。

「いつも、ありがとうな。

俺、理央と一緒にいるだけで、昔の全部が……救われた気がする。」

理央は振り返り、柊の頭を撫でた。

「私もだよ。柊くんがいるから、今日も楽しかった。」

二人はソファに並んで座り、買ってきたばかりのお菓子やデザートを並べながら、温かいココアを飲んだ。

窓の外では雪が静かに降り積もっていた。


柊はふと、遠い目をした。

「……瑶季と初めてバレー観戦したのは、中学の受験期だったな。

テレビ越しに国際試合見て、『同じ高校行けたら、一緒に観に行きたい』って話したっけ。

海月先輩のハグは、新歓で……俺が壊れそうになってたとき、一瞬で世界が変わった気がした。」


理央は黙って柊の肩に頭を預けた。

他の女子の話をされて、嫉妬の棘は一瞬だけ胸を刺したが、すぐに溶けてなくなった。

柊は続けた。

「でもさ、瑶季がいなかったら、俺は自傷で壊れたままだった。

海月先輩がいなかったら、俺は大学で誰とも繋がれずに、ずっと一人で苦しんでたと思う。

あの痛みも、嫉妬も、執着も……全部、今の俺をここに連れてきてくれたんだ。」


柊は理央の手をそっと握り、指と指を絡めた。

「瑶季の涙が教えてくれた『守られることの尊さ』。

海月先輩のハグが教えてくれた『突然の温もりの奇跡』。

……それがなかったら、俺は理央の『一緒に歩く』優しさに、本当の意味で気づけなかった。

全部、必要だった。俺を、理央のところまで運んでくれるために。」

理央の目が、ほんの少し潤んだ。

「柊くん……」

彼女は柊の胸に顔を埋め、小さく、でもはっきり言った。

「私も、感謝してる。

瑶季ちゃんも海月さんも、

柊くんをここまで連れてきてくれたんだよ。

だから今、私は柊くんと、こうして笑っていられる。」

柊は理央を抱きしめ返し、雪の降る窓の外を見つめた。


「これからは、もう執着しない。

ただ、理央を愛する。毎日、必要とされて、必要として……普通に、幸せに生きていく。」

理央は微笑んで、柊の額に自分の額をくっつけた。

「うん。私も、柊くんを必要としてるよ。ずっと、ずっと。」

その夜、二人はいつものようにベッドに入った。

柊は理央の胸に顔を埋め、理央は柊の背中を優しく撫で続けた。


外では雪が静かに降り、部屋の中は、温かいオレンジ色の灯りと、二人の穏やかな呼吸だけが満ちていた。

過去のすべてが、今この瞬間の幸せのために、確かに必要だった。

柊は、ようやく、心の底から思った。

——俺は、ここにいていい。

——俺は、必要とされている。


そして理央は、柊の髪を撫でながらそっと呟いた。

「これからも、ずっと一緒にいようね。柊くん。」

雪は朝まで降り続き、二人の新しい朝を、優しく包み込んだ。


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