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料理

お春は明るく二人に言った。まだ出会って数分しか経っていないが、かなり仲良くなったみたいだ。

「さて、何を作ろうかねえ〜」

お春は腕を組み、考える。

「俺は湯漬けが食べたいな!戦の前にはいつも食べていた。」

「馬鹿言ってんじゃないよ!そんなの庶民には豪華すぎる!」

お春は呆れたように信長を見つめる。

「よし!わかった!切り干し大根にしよう!」

「切り干し大根は私も大好きです!」

秀晴は目を輝かせて言った。

「そうかい?じゃあ、それに味噌汁、麦飯にしよう!」

「庶民の食べる食事だな」

信長は鼻で笑った。無理もない。ついこの間まで戦国武将だった男だ。庶民の食事など到底食べる機会などない。

「文句を言うな!ほら、やるよ!」

お春は信長を急かす。

「まずは、何をやればいいんだ?」

「まずは麦と米を洗って。量は7対3だよ!」

信長に指示を出しながらお春は大根を切っている。

「秀晴は、出汁を取っておくれ!」

「はい!」

秀晴は料理をしたことがないと言いながらテンポよく料理を進めていく。

お春よりは切るのは遅いが、シャキシャキっと具材を切る音がこだまする。なかなかの腕前だ。

「洗い終わったぞ〜」

信長はお春に向かって叫ぶ。

「じゃあ、お湯を沸かして洗った米と麦を煮るんだよ。熱いからやけどしないように気をつけてね」

「あっちちち」

言ったそばから信長は跳ねたお湯であちちと言いながら手を引っ込める。

「馬鹿!さっき気をつけろと言ったばかりだろ?」

秀晴はそんなおっちょこちょいな信長を見て大爆笑。

「私も料理は初めてだが貴様のようなヘマはしない!」

と秀晴は得意げに言い放った。

「油断するとあんたも怪我するよ」

お春は呆れた目で秀晴を見る。

「そんなことはしません・・あっ!」

そう叫ぶと同時に、秀晴は足がもつれ、鍋などが積み重なっているところに倒れ込んだ。

ガシャンと大きな音が鳴り響く。

「わっはっは!ほれ、貴様もヘマをしたではないか!」

「うるさい!」

秀晴は顔を赤く染め、信長に食って掛かる。いい大人が子供のように喧嘩している。なんとも面白い光景だ。

「何やってるんだい!出汁が濃くなるだろう!信長も、早く米と麦を煮ておくれ!」

お春は、二人の間に割って入る。味噌汁の出汁のいい匂いがあたり一面に広がる。

「あ〜、これ以上濃くなったらだめだ!」

秀晴は匂いに気づくと慌てて味噌汁の方に向かう。

「ほんとに困った人たちだね〜」

まるで、本物の家族みたいだ。そこから、お春のテキパキとした指示に従いながらも料理が無事完成した。あたり一面、いい匂いが立ち込める。麦飯はちゃんと炊け、切り干し大根も綺麗に刻まれ、味噌汁は綺麗な赤茶色をしている。本当に美味しそうだ。

「うまそうだ〜!大成功じゃ」

信長は陽気に笑う。

「まあ、私の指導が良かったってことだね」

お春が得意げに顎をくいっと上げながら言った。

「みんなで食べましょう!」

3人はどっこいしょと居間に座る。

「いただきま〜す!」

少し遅めの朝ごはんである。3人はガツガツと食事を腹に詰め込む。

「うまい!!自分で食事を作って食べるのはなんとも不思議な気持ちじゃ!」

「でしょ?これからも自分たちで食事を作るんだからね!早いとこ料理を一人でもできるようになってもらわないと!」

それを聞いた信長は、びっくりした顔を向ける。

「ええ?お春が作ってくれるんじゃないのか?!」

「ふざけたこと言ってんじゃないよ!まさか家事を全部渡しに任せて自分はぐうたら過ごしてるんじゃないんでしょうね!」

お春は信長の言葉に火山が噴火した。

「あんたは昔は一番偉かったのかもしれないけど、今は違うんだよ!立場をわきまえろ!」

「すみません...」

やはりお春には頭が上がらない。

「そういや、信長、どうやって脱出したんだ?」

信長は誰も部屋に入れず、自害したと聞いている。あの燃え盛る中、逃げる事は至難の業だ。

「まあ、そこは流れに身を任せてってところかの」

信長は詳しくは語ろうとはしなかった。

「こんなに周りを信頼して自分をさらけ出して過ごせるのは久しぶりじゃのお」

いつ裏切られるかわからない。そんな世を生き延びてきた男だ。和気あいあいと喋っていたが、空気は静まりかえる。味噌汁の湯気さえも冷めてしまった。

「悪い!空気を重くしてしまったな!食事が冷めてしまわないうちに食べよう!」

信長ははっとし、米をかき上げる。それを見たお春は少し微笑んだ。

「まあ、あんたにどんな過去があろうと私達は受け入れるから安心しなよ!」

ここではある意味で前の自分を捨てられる場所でもある。

「信長、午後は村に遊びに行かないか」

秀晴が信長を気遣い、遊びに誘う。

「鷹狩りでもするのか?」

信長は目をキラキラさせる。

「村の子供達と遊ぶんだ。村に馴染んでもらわないと困る」

秀晴は、少し心を開いたのかはまだわからない。ただ、少し目線は柔らかくなった気がする。

「行く!さて、何をして遊ぼうかのお!」

「じゃあ、早くご飯を食べて支度しないといけぬな!私も子どもたちと遊ぶのは久しぶりじゃ!みんなどうしてるかなのう?」

信長とお春は一人で自分の世界に入り込む。いい歳して子供みたいな性格をしている。まるでこのあたり一面にひらがる青空のようだ。

「お春殿はよく子どもたちと遊びますよね」

皿が重くて困っているお春を助けながら秀晴は尋ねる。

「無邪気に遊ぶ姿が可愛くて可愛くて仕方がない!秀晴もそう思わぬか?」

お春も子どもたちに負けない無邪気な笑顔をすると誰もが突っ込みたくなるが、秀晴はふっと笑う。

「そう思います!さて、そろそろ行きますか」

「そうしよう!信長〜!!そろそろ行くよ〜!早く支度終わらせな!」

信長はバタバタと向かってきた。


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