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36(212).とばっちり

花仙郷、それは悠安で1,2を争うほどの遊郭だった店の名。

今では、国の警備がその周辺を封鎖し、調査を行っている。

僕達は、ギルドに戻り報酬を手に取った。


「玲々、鈴々の事は残念だったな・・・」


「・・・」

「・・・みとってくれて、ありがとアリシア。」


そこには、いつもの受付嬢の姿はない。

そして、いつもの好々爺の姿もなく、細い目は力ずよく輝く。


「ルシア殿、折り入ってご相談がございます。」


僕達は、件の部屋とは別の彼の執務室に呼ばれた。

そこには、身なりの良い文官らしい男と、見覚えしかない白狼。

そして、蚩尤の姿があった。


「ほう、ルシアではないか。」

「お主なら、任せられるな・・・

「という事だな、魔羅よ。」


「はい・・彼らは、私めの想い描く者達に。」


深々と白狼に頭を下げるギルド長。

そこには、礼儀以上の何かを感じる。

僕は、笑顔の呀慶に視線を戻し、彼に質問を投げた。


「呀慶、国からの依頼だよね?」


その言葉に、眉を顰める文官とギルド長。

彼らの冷たい視線が僕を刺す。

それを感じ、呀慶は声を掛ける。


「よい、この者達は私の友人だ。」

「なぁ、ルシアよ・・・睨むな、アリシア・・」


それは、文官たちを制したが、逆にアリシアの冷たい視線が飛ぶ。

それに対し、彼は心当たりからか彼女に頭を下げた。


「あの時は、済まぬことをしたと思っておる。」

「ルシアからも、頼んではもらえぬか・・・」

「こう、咬みつかれては、話がしずらくてかなわん。」


そこには、僕たちに見せる呀慶の愛嬌ある苦笑いがあった。

僕は、彼の意を汲み、彼女を諫める。

その効果もあり、場は何とかまとまり、本題へと進んだ。


「ルシアよ、これは国からの依頼だが、表には出ない案件だ。」

「この意味は分かるな・・・」


彼は、繰り返されるアリシアの視線に哀愁を漂わせるも、諦め彼女の視線を流し始める。

そして彼は咳払いし、僕に依頼の全容を伝え始めた。


「この度の件は、民衆には、武官の暴走として発表されるだろう。」

「しかし、帝も私も、これで解決したとは思ってはおらぬ。」


「・・・死霊術ですか?」


呀慶は、口角をあげ、優しく笑う。

そして、アリシアに聞こえる様に僕に言葉を送った。


「さすがに、聡いなルシア。」

「いい師匠を持ったというわけだ。」

「我々は、そこに西で起きた騒動が、多少なりとも関与していると考えているのだ。」


アリシアは、眉を一瞬うごかし、表情を緩める。

そして、続く言葉に反応した。


「おい呀慶、それでは、ルシアの親父が関与しているとでも言いたげだな?」


「あせるでない、可能性を言ったまでだ。」

「過去に死者蘇生など、できた試しはござらんよ。」

「まして、ここ十数年の間に立て続けでだ。」

「多少の可能性でも繋げたくもなる。」


僕は、2人の会話を聞きながら、眉を顰め唇を噛む。

脳裏には、崖で笑う赤い騎士の姿。

脚の上で握られた拳には、力が籠り爪は食い込む。

横目でアリシアは、その魔力の高鳴りに気付き僕の手を強く握る。


「ルシア、私が付いている。」

「ここには、アイツはいない・・・」


僕の手は、彼女の声に引かれる様に力が抜ける。

そして僕は、優しく向けられた彼女の笑顔に救われた。


「ありがと、アリシア。」

「もう大丈夫だよ・・・」


僕は、彼女に悲し気な笑顔を返し、呀慶に視線を返す。

そして、依頼内容を確認する。


「呀慶、依頼内容は店の制圧?」

「それとも、従業員の討伐かな・・・」


「すまない・・・今のところは、どちらとも言い難い。」

「国軍は、花街と店を封鎖し、青玉という店を包囲する。」

「この店は、元は寂れたモノだったが、ここ数年でオーナーが変わったらしい。」

「その結果、頭角をあらわし、今の花街で知らない者はいないというが・・・」

「蚩尤とやら、合っているか?」


呀慶は、後ろに控える蚩尤に声を投げる。

それに対し彼は、平伏し呀慶へ返答を返した。


「呀慶様、間違いございません。」

「我ら東の者からすると、変わった服装で、接客すると聞きます。」

「オーナーは確か・・・ダッシュウッドといったかと・・」


僕は、その名前に心のどこかで安心を覚えた。

しかし、聞き覚えある名前には違いない。

隣では、僕の肩に手を置き笑みを返すアリシア。

しかし、その肩駆けで、険しい顔で考える小猫。


「ルシア、ダッシュウッドって、ファラルド様の従者にいたよね?」


「・・あっ、レドラムさん・・・いや、違うでしょ・・」


僕は、手をポンと叩く小猫に、残念な笑みを返す。

そして、その残念な空間を訝しむアリシア。


「ファラルドとは、ラトゥール王族の男だろ?」

「その従者に問題でもあるのか?」


「・・・悪い人ではないんだけど、少しに苦手なんだよ。」


アリシアは、ため息をつく。

そして、それを諭す様にアリシアは優しく微笑む。


「ルシア、人それぞれだろ。」

「彼の態度も、お前の為かもしれないぞ?」


「・・・」


僕は、その言葉を受け入れる事に拒否反応。

背筋には何か嫌な感情を感じ、僕は身の毛を逆立てる。

そこに助け船を出すラスティ。


「ウチも無理・・・変態だもん。」


「そう・・なのか?」

「・・・」

「ルシア、無理を言って、すまなかった。」


僕は、残念な空気を真剣にとらえるアリシアの気持に申し訳なさがこみ上げる。

優しく見つめる彼女の瞳に、僕は苦笑いを返した。

そして僕は、窓の外の太陽に、ファラルド達の笑顔を想い出す。

しかし、その表情は何処か申し訳なさそうだった。


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