ウィルソン子爵家の生活
私の、マルガリータ・ウィルソン子爵家の領地は狭い。
但し、南国で木々は良く茂り作物は豊富に取れ、海も魚が沢山泳いでいて食べるモノに事欠くことはなかった。
私とアスランは領地を共に回った。
アスランはその後に私と私の両親にこういったのだ。
「薬草を、育てようと思う。このウィルソン子爵の土地は気候も良いし作物を育てるには最高の場所だ。だが、食物は多く育てられているが薬草は少ない。なので、多くの薬草を育てて万一の時の為に備えようと思う」
私はアスランも転生者だということを思い出し彼の言っている意味を理解した。
ゲームでも小説でも必ず起きる災厄がある。
この世界全土で1年後に流行する『デスサイス病』と言うものだ。
私はアスランの言葉で思い出した。
色々、残念ヒロイン過ぎて忘れていて、本当に残念ヒロインだった。
「デスサイス病ね。確か、ロココの実が病気の進行を抑えていた気がするわ」
アスランは頷いた。
「そう、最後はマルガリータ、君の聖なる力だったから今の内に体力と魔力の増強だね」
もちろん世界を助けるつもりはあるんだろ? と付け加えた。
残念ヒロイン役にされたとしても、この世界の父や母や領土の人たちは助けたい。
だけど、他の地域の……特に王都の人々が私を頼るかどうかは分からない。私とアスランと同じように未来を知っている転生者が王都にはいる。
二周目でヒロイン的立場になっている公式では悪役令嬢のリアンナ・ウェルズ公爵令嬢だ。彼女が回避策を考えてもっと有効な手立てを作り上げる可能性が高い。
私はそう考えながらも今は自分がやれることをやろうと思った。
彼女の回避策がこの小さな領土まで届かない可能性もあるのだ。
「私は今のお父さまやお母さまを助けたいし、領民の誰もがデスサイス病で死んでほしくない。ロココの実の育成と魔力の増強をがんばるわ」
アスランは笑むと頷いた。
「よし、ロココの実は俺に任せてもらいたい」
私はアスランの笑みに兄の笑みを重ねた。顔は違うんだけど兄に似ている。
「アスラン王子、宜しくお願いします」
そう言った私にアスランはフッと笑った。
「もうアスランでいいよ。廃嫡されたからね」
私は「えええ、でも」と思ったものの一つ息を吐き出した。
「わかりました、アスラン、宜しくお願いします」
「ああ、がんばろうと思う」
私はこの日から魔力を増やすために魔法理論の勉強と精神統一や運動など実技も行った。
1年後のデスサイス病の時に犠牲者を出さないために、であった。
アスランはすっかり農業の人となり麦わら帽子とシャツとズボンで毎日ウィルソン子爵家の館にある広々とした庭に様々な薬草を植えて、薬草の森へと作り替えた。
病気の進行を遅らせる薬に使うロココの実を中心に他にも多くの薬草を作り薬の研究を始めたのだ。
また、父の勧めもあって薬草の森の管理が無い時は父から領土を治めるノウハウを勉強している。
そして、10カ月後。
運命の時が訪れた。
ウィルソン子爵家の領地で最初のデスサイス病の人間が現れたのである。




